元・宿屋の娘は美人冒険者の恋路を応援したい

紫野

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宿屋の娘は美男美女に付き合ってほしい

20 帰還、そして旅へ

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 ギルドのドアを開けて受付に向かうと、今日の受付嬢はターニャさんだった。

「あら?テオフィルスチームの皆さん、早かったですね」
「お疲れ様。依頼達成の報告を頼むよ」
「かしこまりました」

 慣れた様子で声をかけたテオさんが依頼達成の手続きをするのを待つ。


 ついでに言っておくならば、ターニャさんは受付嬢でありながら冒険者でもある。チュートリアルで選べるメンバーの一人なのに、教えてもらった後は仲間にできずに、町にいる冒険者の一人がランダムに仲間になるという謎仕様。
 金髪清楚系美人の彼女を仲間に欲しくて選んだのに、全く別の人が仲間になって崩れ落ちたプレイヤーは多かったらしい。どんまい。
 ゲームだとこの町のギルドで会うことができるけれど、いくら話しかけても仲間にはならないらしい。
 チュートリアルの残りの1人、妖艶な美女のロザリアさんも扱いにくい罠師トラッパーで、ついでにジィールさんの奥さんだし、製作者は男性プレイヤーに恨みでもあったんでしょうか?


「終わったよ。このまま領主館に行こうか」

 町に戻ってきたのは朝だったため、ドーマさんと約束して夕前の鐘の後に領主館に伺うことになっていた。



「よぉ、遅かったな!」
「ギルド長、どうしてここに?」

 領主館で案内された部屋にいたのは、ドーマさんと領主であるベスター卿、その秘書か使用人らしき人、そしてなぜかギルド長の4人だった。

「ドーマ殿から要請があってな。マリアの認定冒険者の手続きの立会人として来た」
「ええ!?」


 認定冒険者の称号は、上級と同じように国から与えられるものだ。上級冒険者が『国のお墨付き』だとすると、認定冒険者は『国が認めた』冒険者になる。
 違いは、一般的に上級の方が実力が高いとされ、地位が保証されていることくらいで、認定冒険者も世間的な信用度合いが高いことに違いは無い。
 普通は初めての依頼を終えたくらいで認定冒険者の称号なんてもらえないはずだけど、それが許されるドーマさんって一体……。

 と、思っていたら、その答えは領主様の口からあっさりと出てきた。


「私の弟と姪がお世話になった。地竜の討伐に助太刀してくださったこと、厚く礼を言う」
「ええ!?」

 なんと、ドーマさんはただの貴族ではなく領主様の血縁だったらしい。

「改めて自己紹介をしようか。私はドーマ・ベイリー。ベスター家の分家に当たるベイリー家当主だ」
「私はレティツィア・ベイリーだ。魔術士として白鳩団に所属している。今回は本当に助かった。今後何かあれば声をかけて欲しい。親子で助けてもらったのだ。私もいつでも力になろう」

「納得したか?んじゃ、手続きを始めようか」

 ギルド長が言って、数枚の書類を机の上に出す。
 結局その後、説明を受けたりサインをしたりして、私はあっさりと認定冒険者の銅製のプレートを受け取ることになったのだった。



 それから少し日数をかけて、いくつかの仕事をこなしつつ旅の準備をした。

 そして、領都を出る日。

「マリアちゃんがいなくなると寂しくなるね」
「ミィちゃん……お土産いっぱい持って帰ってくるからね!」
「お土産なんて要らないから、無事に帰ってきなさいね」
「母さん……分かった。安全第一だね!」
「楽しんでこい」
「もちろんだよ、父さん!」

 私は主に宿の面々と、ラスターさんとテオさんは馴染みの冒険者やギルド職員と、リリーも仲良くなった町の人と別れの挨拶をしていた。

「ロザリアはもうすぐ子供が生まれるんだって?」
「へぇ、ジィールもとうとう父親パパか。赤ん坊の世話をする所なんて、見てみたいもんだ」
「うるさい。さっさと旅にでも何でも出てこい」
「はいはい、落ち着いて。ラスターも、そのうち帰ってくるのにジィールをからかわない!」


「本当に、お世話になりました。この町はとても良い町ね」
「こちらこそ、リリーちゃんが来てくれて楽しかったわぁ。またこの町に来たらうちの店にも寄ってちょうだい」
「ええ、もちろんよ!」


 あちこちで会話に花が咲き、あっという間に乗り合いの魔道車バスの時間になった。


「いってきます!」

 旅に出るとはいえ、私たちのパーティーホームはこの町、ベスター領の領都だ。いつかは帰ってくるという意味を込めて、心を込めた「いってきます」を。





※終わりっぽいかもしれませんがまだまだ続きます!
ここまでがあまりにもほのぼのした展開になってしまったので、この先マリアにはもう少しバタバタしてもらう予定です(笑)
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