こうして悪役令嬢はバッドエンドを回避した。

真冬のラズビ

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こうして悪役令嬢はバッドエンド回避した。

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「寄生させやすくしてあげますわよ、
わたくし、なんて優しいのでしょう。」

お父様の愛人の娘でしかないこの少女は、我が家に寄生していると考えていましたの。自分だって親の庇護下でしか生きられないのに可笑しいですわよね。だからわたくしは、よくこの言葉を投げていましたの。

オホホホホ、そんな風に高らかに笑いながら、
美少女な義妹の頭の上に泥水かけていた時、
ふと全てわかりましたの。わたくしの立場もこれからの未来も全て理解し見てしまったのよ。

そして手に取っていたバケツかなんかを落として、意識を失いましたわ。

12歳の時の出来事でしたの。


要約するとテンプレート通りに転生したわたくしは、突然地球人だった頃の記憶を思い出しましたの。

そしてわたくしはこの世界のヒロインである、義妹のことを原作通りに虐めてしまっていたのよ!
とりあえずは記憶を思い出したのが、学園に入学する3年前、つまりゲーム終了の6年前であることに感謝したわ。

この世界は、
『ゴールデンウィート:白百合の君のために世界を回す』という名の粘っこい乙女ゲームの世界ですの。

なぜわかったかって、わたくしの名前とリリーの名前とこの世界は名前がゴールデンウィートだからですのよ。
ゴールデンウィート、ゴールドウィート、金麦。飲みたいですわね。
冗談はさておき設定の説明をしますわ。

主人公であるリリー(デフォルトネーム)は、妾腹の娘であるために、家族から酷い扱いを受ける、中でも義姉からの虐めては目に余るものがあるという設定でしたの。義姉がわたくしローズですわ。中々色気のある美人ですのよ。

これが後々に困ったことを招きますのよ。もちろん美人であることがではなく、虐めていたことがですわ。

リリーは学園に入学することで、その心の美しさから様々な貴公子たちから愛されますの。そして最終的に誰か1人を選び結婚し、その後実家や義姉からの扱いがリリーの婚約者に露呈、リリーを悲しませないように秘密裏にザマァする話ですわ。

ザマァでは、ただ『君の家族は反省しているようだ、とってもね。』だとか『ローズは結婚したみたいだよ。』とか『結婚祝いに相続権を君に渡すみたいだ。』とか。
ただその一言でしか語られないが、確実に何かありましたわよね。と思ったものですわ。

ところでザマァってわかりやすい言葉ですわね。

因みに攻略対象は5人いますのよ。
身分は様々ですけれども、みんな顔と頭がよくて、けれども性格は違くて、最初は誰を選ぶのかとても迷った記憶がありますわ。
もちろん最後は最推しができましたわ!

リリーが誰と恋愛しても、悪役令嬢はわたくしですの。そしてどのルートに入っても、どのエンディング迎えてもわたくしや家族の身が危ないのよ。どうすれば家族と己を守れるのか考えた結果は、義妹のリリーを最大限甘やかすことでしたわ。

そしてこれは、義妹を甘やかしてバッドエンドを回避しようともがき続けた、わたくしの物語ですのよ。

転生したのに語尾がデスマス調で気持ち悪いって?
可笑しいですわね、わたくし正真正銘のお嬢様に生まれ変わりましたのよ。お嬢様ライフを最大限楽しむに決まっていますわ。



「リリー?、おはよう!
今日も今日とてお目目が可愛らしいわ。」

ニッコリ笑顔で義妹に挨拶することから、1日は始まる。
義妹のリリーは、たぶん世界で1番の美少女だ。
少なくともわたくしは、リリーよりもかわいい生き物を見たことがない。
特にそのお目目が可愛い。くりりんとして垂れ目がちで、睫毛がびっちりと生えていてお人形さんのようだわ。

「おはようございます。ローズお義姉様。」
伏目がちに挨拶するリリーはどこか怯えているようで、加護欲をそそる。
だけれども、それをしてしまってはわたくしが悪役に見えてしまう。

「あらリリー、あなたの素敵な笑顔が見たいですわ。」
そういうとリリーは遠慮がちにニコリとした。

「さすが妾腹の娘、マナーなってないわね。」「ローズ様の顔に泥を塗ってるのよ。」
使用人たちがコソコソ話すのが聞こえた。

「そんなことないわよ。
リリーはまるで物語のお姫様やヒロインのようにかわいいのよ。これだけでいいわ。
みんなも優しくして!」

そういうと、使用人たちがバツ悪そうな顔しながら散っていった。

「ローズお義姉様、ありがとうございます。」
瞳を潤ませながら感謝の言葉を述べるリリーを見て、わたくしは満足していましたの。

こんな可愛らしい生き物があんなことを企むだなんて思っていなかったわ。
まさか結果的に身分すら失うことをしてしまうなんて。



それは卒業パーティーの3日前でしたわ。
そしてこれがあの恐ろしい断罪に繋がりましたの。

その前に学校でのわたくしたちのことを話ましょうかを

学校が始まって1年もした頃、
自然とリリーはヒロインで、わたくしは悪役令嬢と呼ばれるようになりましたわ。

リリーは気に入ってないようでしわ。ただわたくしはピッタリな名前だと気に入りましたわ。
わたくしたちは、どんな名前を周りにつけられようとも可能な限り2人で行動していましたの。まるで双子のようでしたの。愛らしいリリーといることができて幸せでしたわ。

けれども、しばらくしてリリーがぼんやりとすることが増えましたの。
わたくしピンと来ましたのよ。これは恋なんだってことがわかりましたのよ。

相手が誰だかは、聞いても聞いても教えてくれませんでしたのよ。けれども、その視線から誰が相手なのかわかりましたのよ。

だからわたくしはリリーの恋を応援するために、奮起いたしましたわ。
しばらくするとリリーは交際し始めたみたいで、わたくしは安心してわたくしも恋をしてそして別れて、また新しく恋して婚約しましたの。

実はこの婚約者、前世での最推しでしたの。無理だとずっと思っていたわ、けれども婚約できて幸せでしたわ。これ以上にないくらい幸せでしたの。

わたくしが婚約するまでの期間、リリーの黒い噂を何度も聞きましたの。
どうやら複数の男を誑し込んでいると、だから一応リリーに何度か注意しましたわ。

「噂は噂であるし、信じていないけれども、あなたのためにも気をつけて。」
と。
この頃はもうリリーは一緒に行動していなったわ。何故だか避けられるようになってしまっていたのよ。
焦ったわ。バッドエンド迎えてしまうのではないのかって、焦ったわ。

リリーの黒い噂はお父様やお母様の耳にも入ってしまい、大変なことになりましたわ。けれども、わたくしお父様やお母様の怒りが義妹に向かないようになかなか頑張りましたわ。

ところでわたくしの婚約者は攻略対象の1人でしたけれども、リリーに確認してもリリーの恋人ではないと言われましたし、密偵に調べさせてもそんな過去は出ませんでしたわ。
この時、安心しましたのよ。人の恋人を間違えて寝取ってしまっては大変なことになりますからね。

過去の恋人については、攻略対象ではなかったですし、婚約者も見て見ぬ振りをしているからとりあえず触れないわ。



断罪に繋がるその事件は、婚約者とその囲いと一緒に歩いていた昼下がりに発生しましたのよ。

「ローズお義姉様!」
遠くからわたくしのことを呼ぶリリーの声に嬉しくなりましたの。
実はその時しばらくリリーと会話できなかったから、心から嬉しく思ったの。会話できなかったのは、リリーの黒い噂で注意したのが原因だったのかしら。

わたくしの喜びの中には、卒業間近に笑顔のリリーを見て、安堵感も含まれていたのかもしれないわ。

「リリー!久しぶりね。」
近くに来たリリーにそう話しかけた瞬間、肩から強く押されて、わたくしは階段から転落しましたのよ。

この時わたくしは、ただ何も分からなかったわ。
何も理解できなかった。6年間愛しんだのに結果は階段から突き落とされること?
ただそんなことが脳内くるくると回ったわ。

幸いわたくしは、大した怪我をしなかったわ。
けれども、人が多くいた場所でわたくしを突き落としたリリーは罪に問われることになってしまいましたの。



「リリー、貴様はこの優しいローズのことを階段から突き落としたな。国外追放だ。」
わたくしの婚約者である第3王子の言葉をただただ失意の中聞いていましたわ。

わたくしのバッドエンドは避けられましたわ。
けれどもリリー。わたくしのこの6年はなんでしたの?無駄でしたの?

「いつ追放してくださりますか?」
そういうリリーは初めてみるような美しい笑顔でしたわ。ただ物凄く怖くもありましたの。正直ゾッとしましたわ。

「そ、そうやってお前は男を誑し込むんだろ!今すぐ追放してやる!捕らえろ!」
王子や他の攻略対象たちの声を聞いてぼんやり、やはり黒い噂を真実でしたの。と思いましたわ。

リリーが連れ去られる時、やはりリリーが可愛かったしリリーを引き止めようと手を伸ばしましたの。
けれどもできなかった。伸ばしたわたくしの手をリリーが弾きましたの。

「私の自由を奪わないでローズ。」
その強い言葉にわたくしは衝撃を受けましたわ。

リリーにとって追放は自由を得るための術だったのね。
つまりわたくしの、この6年は全て無駄でしたのよ!



あれから1年、わたくしは今日結婚しましたの。

追放されてからリリーがどうなったのか、わたくしに知る由はなかったわ。密偵もお父様も婚約者も知っているようですけれども。

「死亡届は出てない。」

わたくしにとっては、お父様のその言葉が全てでしたわ。
知りたいとは思いましたわ、けれども怖くてそれ以上は聞けませんでしたの。

ただリリーが自滅することで、わたくしはバッドエンドを免れたことだけが事実ですわ。

「ローズ、優しいね。またあの娘のことを思い出しているのかい?焼けてしまうね。」
婚約者から夫になった愛しい人は、そういうとわたくしに口づけを落とした。

この口付けをきっかけにわたくしは、
前世も昔つまりリリーも全て忘れることにしましたの。

リリーはあの時に「私の自由を奪わないでローズ。」と言ったのよ。わたくしだって、前世やゲーム縛られて生きる必要はないのよ。

わたくしだって愛する人と自由に生きてもいいのよ。
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