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憧れという君はこっちを見ない
賭け5
しおりを挟む「あ、あのまずこれをありがとう。助かりました。」
リリアナが俺の言葉を聞いた後、少し間が空いた後に、覚悟を決めたようにまずは前に渡したファイルを返してきた。
微かに震えていた。
「どう思った?」
約2ヶ月前の出来事も、それ関連についてまとめたこの資料についても。
「ど、どう?ってビックリ~みたいな」
後半リリアナの声が小さくなっていく。
何か言おうと口を開こうとしたらリリアナが少し大きい声で話し始めた。勇気を振り絞ったのだろう。
「あ、あのさ!これで夢について書かれてたよね?それで聞きたいんだけどアレンくんはどんな夢を見るの?あれ以来」
リリアナは声までも震えていた。
淫らな夢を見るとかそういうことが書かれていたことについてだろう。
何で答えようか。
涙目で震えてるのを見ると何だかこの話をしているのが申し訳なくなる。けれども、話したい、話さないといけない。
とは言え、何て言えばいいのか思いつかない。突然だったのもあるが、それにしても俺は想像以上に準備不足みたいだ。
賭けだとか何だとか言って準備してたつもりだったのに。それと賭けはどうやら成功だ。失敗したと思っていたが、成功だ。こうやってリリアナと会話が出来ているから。
「リリアナさんは?」
リリアナの質問には答えられずに質問を返した。言い訳すれば、答え方次第で答えようと思ったんだ。
大半がリリアナと楽しそうに会話する夢で、本当に時々恥ずかしい話だが、性行為してるとはとてもではないが言えない。何て言えばいいのかもわからない。前半部分は照れるし、後半は恥ずかしい。
俺の質問返しにリリアナは困っていた。
今にも泣きそうになっていた。目が潤んでいた。
「あ、アレンくんのから聞きたい。ごめんね、ダメ?言えそうにない?」
そう泣きそうになりながら、遂に一滴涙が溢れながら首を傾げるリリアナに向かって徐に手を伸ばして抱きしめた。
ヒュッと息を飲む音がした。
自分でもなぜそうしたのかわからなかった。ただリリアナに対して申し訳なくて放って置けなくて抱きしめた。
本当はただリリアナのことを抱きしめたかったんだろう。ただただ触れたかった。
「何度も何度もリリアナさんのことを夢に見た。リリアナさんと話す夢を見た。」
性行為どうこうにはもちろん触れない。
「そ、そうなの」
リリアナはそれだけ言うとポロポロと泣き始めた。
何かしてしまったのかと驚いて、体が強張る。
「アレンくん、ごめんなさい。私は、私はダメだ。そんな綺麗な夢見れなかった。」
リリアナは自分に言い聞かせるように言って、後ろに体を引いて、俺から離れた。顔を抑えながら、堪えきれないという風に泣いていた。
その姿は弱々しくて、いつもの胡散臭い姿と打って変わって、儚く美しかった。
泣かせたことを謝る為に、リリアナ顔を覗き込んだらその瞳には絶望感が漂っていた。
俺はこの子のきっと酷いことをした。
何もなかったかのように振る舞っていたのに、己の欲求を満たす為にこの子の心を掻き乱してしまったんだ。
「リリアナさん、突然2ヶ月前の話をしてごめんなさい。抱きしめてごめんなさい。」
片方の膝をつき、片方の足を立て、泣いているリリアナの空いている手を両手で包み込んだ。この気持ちが伝わって欲しい。
この時まで俺はまだ良く見られたくて、そして自己中心的だから受け入れて欲しくてカッコつけてた。
「アレンくんは、ア、アレンくんは謝らな、いで。」
そう言って、さらに泣き出したリリアナにハンカチを差し出した。
差し出したハンカチをリリアナは、じーっと見つめていた。涙は止まっていたが、その表情を見ると胸が締め付けられた。悲しくて悲しくて仕方ない。そんな顔をしていた。
なぜ?
放って置けない、だけれども抱きしめることも出来ない。もどかしい時間が淡々と過ぎていった。
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