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「リクト、久しぶり!」
久々に憧れの人に会って、思わず声をかけた。
「久しぶり、セリ」
そこで記憶は途絶えている。
⭐︎
「……ッッツ!」
割れるような頭の痛みで目覚めた。
頭を抑えて、そっと目を開くと知らない場所に居た。
赤い高い天井と壁紙、すごく広い部屋だ。そして床までも真っ赤な部屋だ。
「なにここ……。」
さっきまで私は何をしていたんだっけ……。
「そうだ、リクトに挨拶してたんだ……。」
リクトは、私が推してる人だ。
どうかなりたいなんて思ってはいない。
だって私は、もう恋愛なんてしてはいけないのだから。今日は、お別れの挨拶をする予定だった。
いつもポケットに入れている頭痛薬を取り出して、そのまま飲み込んだ。
そして奇妙な部屋にいるのに、信じられなくて一旦眠ってしまった。
⭐︎
「…!…り……セリ!…。お…起きろ!」
肩を揺すぶられた。
「…ん?、リクト?」
焦ったような表情のリクトがいた。
薬が効いたからか、頭の痛みは引いていた。
「起きたらこの部屋に居たんだ。」
「……夢じゃなかったの。」
「とりあえず出口を探したけど、どこにも扉がなくて。」
つまり、一緒に出る方法を探して欲しいってことね。
部屋をざっと見渡すと心なしかさっきよりも天井は低く、左右の壁も近くなってるような気がした。
「私、さっき一度起きたんだけど
さっきよりもこの部屋小さくなってる気がする。」
そう呟くとリクトは神妙そうな表情で頷いた。
「ベッド、置いてあるね。四隅を軽く見たらベッド見よう。」
「俺もベッドはあまり見てない。そうしよう。」
埃1つ見落とさないように、気合を入れて部屋の四隅を見た。
壁に手を当てた。トントントントンと叩いていった。
壁は金属製のようだった。
床は陶器製のタイルで、古い風呂場の床みたいだ。
壁は1箇所のみ、軽くトントントントンと叩くと響くような箇所があった。
目を凝らすと他の壁との境も見えた。
そしてやはり壁が徐々に迫っている感じがした。
パニックになりそうだ。まだ部屋は大きいから大丈夫だが、このペースで部屋が縮まったら16時間後には圧死してしまいそうだ。
「思ったんだけど、ここの壁も天井も徐々に迫って来ているよな。」
「そうね、落ち着いていきましょう。
パニックになったら策も練れなくなるわ。」
「そうだな。ところで今探してる箇所、何かあるのか?」
「他の壁との少し違うの。叩くと反響するし色も違う。」
ただ何だろうか、絶対に手で開けられないような気がする。
壁に手を当てるとチクチクチクチクと機械が規則的に何かを刻む音がした。
「開けられそうか。」
「直感的に無理な気がするのよね。叩いても、左右に動かそうにもビクともしない。鍵がかかってるのかしら。」
ふーっとため息をつく。
「少し退いてくれるか。」
そう言われて、こくりと頷きながら下がった。
すると助走をつけたリクトが壁に体当たりをした。
2回、3回と体当たりをして、その度にバーンと音がした。
しかし、ビクともしなかった。
「無理だ。」「ありがとう、リクト。ベッドを探しましょう。」
巷で圧死や行方不明の次元は聞いていた。
肉片になった人間が落ちていると言ったものだ。
嫌な予感がするが恐らくそれに巻き込まれた。
「最近、ニュースでよくおかしなものがあったじゃない?それに巻き込まれたかなって思うの。」
「……ん、あれか。」
具合が悪くなる気がしたため直接的な変な死体という単語は出さなかった。
アレンが何か悩んでるような表情をした。
「セリ、とりあえずベッドを探そう。
俺、その事件というか事故というかわからないが、それに関連する別の記事も読んだことがあるんだ。」
それだけ言うとベッドを見下ろした。
シーツだけが敷いてある簡易的なものだ。
よく見るとシーツの一部が軽く膨れていた。
シーツに手をかけ思いっきり捲ると白い封筒がマットレスとシーツの間に隠されるように置いてあった。少しだけ重かった。
「セリ、これを見よう。何かヒントがあるかもしれない。」
ビリビリビリと封筒を破って、中身を取り出した。
正方形の袋で、真ん中が丸く膨れていた。
「これは、何かしら……。」
「コンドームだ。他に何か入ってないか見よう。」
リクトは早口でそういうと一気に他のものも取り出した。
時計のようなもので、15:49:30と書いてあり、見てるうちに15:49:29と数字が下がっていった。
「リクト、これはカウントダウンするタイマーみたいね。」
「そうだな。」
そして薄い液晶版も入っていた。
真ん中を押して起動しようとすると音声が流れ始めた。
「オメデトウゴザイマス!
アナタタチハ、選バレマシタ。
24ジカンイナイニ、セックスシロ。
デナケレバ、死ノミ!」
その音声だけ流れると全く動かなくなった。
チラリとリクトを見ると頭を抑えていた。
そして私は、リクトを見て申し訳ないか覚悟を決めた。
推してる人、そして男性と性行為をする最後の機会だ。
「セックスしましょう。」
そう伝えて、リクトの目を覗き込んだ。
驚き目を見開いているリクトと目を合わせながら、唇を合わせた。
肩に手を置かれて、パッと離された。
⭐︎
色々なことを考えた。
初めて会った時に素敵な人だと思ったこと。
人間関係が上手くいかず落ち込んでいる時に慰めてもらったこと。
色んな時にそばにいてくれたことを思い出していた。
憧れていたが、思いを伝えられなかったこと。
そして多忙で恋愛どころではない辺境の地に私がこれから5年間働きに行くことを考えた。
もちろん行為が激しくなるにつれて何も考えられなくなったが。
⭐︎
「……っ」
頭が痛い。気が付いたら私とリクトは床に座っていた。
なぜ。なぜか記憶が曖昧だ。
何度かとんでもない夢を見ていたような気がする。
リクトを見ても屈折したような悲しみは抱かなくなっていた。
何と言うか受け入れたとでも言おう。
「リクト。私、来週から辺境の地で働くことになったの。
伝えられてなかったけど、今までありがとう。」
私は辺境の地で働くことを誰にも伝えることができないでいた。
辺境の地は、多忙で恋愛などできる暇もないと言う。
「……そうか、早いな。」
「またね!」
そんな会話をしていると不思議と頭痛も治った。
もう迷いは無くなった。
ただ前を向こう。
そう思って、回れ右をしたら
「セリ」
と声をかけられ、リクトを仰ぎ見た。
「俺も半年後に辺境の地に行くことが決まってるんだ。期間限定だが。」
認知が歪んでるだけかもしれないが、私には告白のように聞こえてしまった。
「その時は改めてよろしくね。」
私はきっと笑顔だっただらう。
久々に憧れの人に会って、思わず声をかけた。
「久しぶり、セリ」
そこで記憶は途絶えている。
⭐︎
「……ッッツ!」
割れるような頭の痛みで目覚めた。
頭を抑えて、そっと目を開くと知らない場所に居た。
赤い高い天井と壁紙、すごく広い部屋だ。そして床までも真っ赤な部屋だ。
「なにここ……。」
さっきまで私は何をしていたんだっけ……。
「そうだ、リクトに挨拶してたんだ……。」
リクトは、私が推してる人だ。
どうかなりたいなんて思ってはいない。
だって私は、もう恋愛なんてしてはいけないのだから。今日は、お別れの挨拶をする予定だった。
いつもポケットに入れている頭痛薬を取り出して、そのまま飲み込んだ。
そして奇妙な部屋にいるのに、信じられなくて一旦眠ってしまった。
⭐︎
「…!…り……セリ!…。お…起きろ!」
肩を揺すぶられた。
「…ん?、リクト?」
焦ったような表情のリクトがいた。
薬が効いたからか、頭の痛みは引いていた。
「起きたらこの部屋に居たんだ。」
「……夢じゃなかったの。」
「とりあえず出口を探したけど、どこにも扉がなくて。」
つまり、一緒に出る方法を探して欲しいってことね。
部屋をざっと見渡すと心なしかさっきよりも天井は低く、左右の壁も近くなってるような気がした。
「私、さっき一度起きたんだけど
さっきよりもこの部屋小さくなってる気がする。」
そう呟くとリクトは神妙そうな表情で頷いた。
「ベッド、置いてあるね。四隅を軽く見たらベッド見よう。」
「俺もベッドはあまり見てない。そうしよう。」
埃1つ見落とさないように、気合を入れて部屋の四隅を見た。
壁に手を当てた。トントントントンと叩いていった。
壁は金属製のようだった。
床は陶器製のタイルで、古い風呂場の床みたいだ。
壁は1箇所のみ、軽くトントントントンと叩くと響くような箇所があった。
目を凝らすと他の壁との境も見えた。
そしてやはり壁が徐々に迫っている感じがした。
パニックになりそうだ。まだ部屋は大きいから大丈夫だが、このペースで部屋が縮まったら16時間後には圧死してしまいそうだ。
「思ったんだけど、ここの壁も天井も徐々に迫って来ているよな。」
「そうね、落ち着いていきましょう。
パニックになったら策も練れなくなるわ。」
「そうだな。ところで今探してる箇所、何かあるのか?」
「他の壁との少し違うの。叩くと反響するし色も違う。」
ただ何だろうか、絶対に手で開けられないような気がする。
壁に手を当てるとチクチクチクチクと機械が規則的に何かを刻む音がした。
「開けられそうか。」
「直感的に無理な気がするのよね。叩いても、左右に動かそうにもビクともしない。鍵がかかってるのかしら。」
ふーっとため息をつく。
「少し退いてくれるか。」
そう言われて、こくりと頷きながら下がった。
すると助走をつけたリクトが壁に体当たりをした。
2回、3回と体当たりをして、その度にバーンと音がした。
しかし、ビクともしなかった。
「無理だ。」「ありがとう、リクト。ベッドを探しましょう。」
巷で圧死や行方不明の次元は聞いていた。
肉片になった人間が落ちていると言ったものだ。
嫌な予感がするが恐らくそれに巻き込まれた。
「最近、ニュースでよくおかしなものがあったじゃない?それに巻き込まれたかなって思うの。」
「……ん、あれか。」
具合が悪くなる気がしたため直接的な変な死体という単語は出さなかった。
アレンが何か悩んでるような表情をした。
「セリ、とりあえずベッドを探そう。
俺、その事件というか事故というかわからないが、それに関連する別の記事も読んだことがあるんだ。」
それだけ言うとベッドを見下ろした。
シーツだけが敷いてある簡易的なものだ。
よく見るとシーツの一部が軽く膨れていた。
シーツに手をかけ思いっきり捲ると白い封筒がマットレスとシーツの間に隠されるように置いてあった。少しだけ重かった。
「セリ、これを見よう。何かヒントがあるかもしれない。」
ビリビリビリと封筒を破って、中身を取り出した。
正方形の袋で、真ん中が丸く膨れていた。
「これは、何かしら……。」
「コンドームだ。他に何か入ってないか見よう。」
リクトは早口でそういうと一気に他のものも取り出した。
時計のようなもので、15:49:30と書いてあり、見てるうちに15:49:29と数字が下がっていった。
「リクト、これはカウントダウンするタイマーみたいね。」
「そうだな。」
そして薄い液晶版も入っていた。
真ん中を押して起動しようとすると音声が流れ始めた。
「オメデトウゴザイマス!
アナタタチハ、選バレマシタ。
24ジカンイナイニ、セックスシロ。
デナケレバ、死ノミ!」
その音声だけ流れると全く動かなくなった。
チラリとリクトを見ると頭を抑えていた。
そして私は、リクトを見て申し訳ないか覚悟を決めた。
推してる人、そして男性と性行為をする最後の機会だ。
「セックスしましょう。」
そう伝えて、リクトの目を覗き込んだ。
驚き目を見開いているリクトと目を合わせながら、唇を合わせた。
肩に手を置かれて、パッと離された。
⭐︎
色々なことを考えた。
初めて会った時に素敵な人だと思ったこと。
人間関係が上手くいかず落ち込んでいる時に慰めてもらったこと。
色んな時にそばにいてくれたことを思い出していた。
憧れていたが、思いを伝えられなかったこと。
そして多忙で恋愛どころではない辺境の地に私がこれから5年間働きに行くことを考えた。
もちろん行為が激しくなるにつれて何も考えられなくなったが。
⭐︎
「……っ」
頭が痛い。気が付いたら私とリクトは床に座っていた。
なぜ。なぜか記憶が曖昧だ。
何度かとんでもない夢を見ていたような気がする。
リクトを見ても屈折したような悲しみは抱かなくなっていた。
何と言うか受け入れたとでも言おう。
「リクト。私、来週から辺境の地で働くことになったの。
伝えられてなかったけど、今までありがとう。」
私は辺境の地で働くことを誰にも伝えることができないでいた。
辺境の地は、多忙で恋愛などできる暇もないと言う。
「……そうか、早いな。」
「またね!」
そんな会話をしていると不思議と頭痛も治った。
もう迷いは無くなった。
ただ前を向こう。
そう思って、回れ右をしたら
「セリ」
と声をかけられ、リクトを仰ぎ見た。
「俺も半年後に辺境の地に行くことが決まってるんだ。期間限定だが。」
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私はきっと笑顔だっただらう。
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