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6話 目覚め
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目を覚ますと、僕はダンジョンの穴から上を見あげていた。先は暗くて、どこまで続いているかも分からないほど距離がある。
「夢であってくれたらよかったのに」
あれから、どれだけ時間が経ったのか分からない。僕は、体を起こして辺りを見渡して、異変に気づく。
「あれ? 体が痛くない」
全身に響いていたはずの、骨折の痛みが全て引いているのだ。寧ろ、体の奥底に、しばらく感じていなかった力を感じる。
「そういえば……」
気絶する前、確か魔物の肉を食らっていた。その結果、傷が治り、力まで湧いてきた。
僕は、もう一度、魔物の死体を見つめる。数が多いのか、まだクリスタルに吸収しきれていない魔物の死体は沢山あった。
「もう一回、口にしてみるか……? いやでも……」
思い出すのは、全身に駆け巡るような痛み。あの一瞬、あまりの痛さに気を失ったんだ。
僕は、体のどこにも異常が無いか確かめる。線の細さはあまり変わらないが、肉にハリが出たような気がする。それに、いつもよりも体が軽い。
基本的に、人は魔物の肉を食べても何も変化しないと言われている。子供が魔物の肉を食べると、多少の成長が見られるという結果はあったが、それも微々たるものだ。ならば、何故自分は魔物の肉を食べて、それも一口食べただけで力が湧いてきたのか。考えられるのは、最下層の魔物だからか、それとも、全てを弟に奪われた自分の肉体が、スポンジのように力を吸収したからか、あるいはその両方か。
とはいえ、魔物の肉が、一応食料にはなりそうだということで、少し希望を得た。体を駆け巡った痛みは気になるが、それより、力が湧いてきたことが気になる。
「どちらにしろ、今地上に戻れたところで、また同じような生活になるだけだ。なら、一か八か、魔物の肉を食らって強くなれるか試してみよう」
そう決めた僕は、近くに落ちていた魔物の肉片を拾い上げ、思い切り頬張る。瞬間、激痛が駆け巡る。しかし、気絶するほどではなかった。何とか肉を飲み込み、様子を見ていると、変化はすぐ現れた。体がゴリゴリという音を立てながら蠢き始める。
「痛い……」
あまりの痛さに再び気を失いかけるが、なんとか堪える。そうして30分ほど立ったところで、己の体を見渡す。そして、驚く。
「す、すごい。あれほど鍛えても変わらなかったのに!!」
線の細さはまだ残るものの、確かに筋肉がついた体つきになった。脂肪が少なすぎてそこまで隆起はしていないものの、限界まで引き絞った体、と言われればそう見えるかもしれない。それに、力も先程より湧いてくる感覚があった。
「あ、あはは! これはいいぞ!」
調子に乗った僕は激痛と格闘しながらも何度も何度も魔物の肉を食べ、その都度変わる体に喜び、また食べてを繰り返した。
疲れを感じず、寝る間を惜しんで肉を食らっていたところ、ついに、体の変化が止まった。
「色々と変わったな……」
分かる範囲で言えることは、まず、身長が今までよりもずっと高くなり、全身が隆起した筋肉質な体になったこと。そして、声が低くなったこと。何より体感できるのは、力だろうか。最下層の魔物の死体を片手で握りつぶせる程には力がついた。
「服もピチピチだな……」
今にも破けそうな服は、大人の体に、子供の服が引っかかっている、という表現が正しかった。ダンジョンなら、宝箱から服なども出そうなので、それを期待するのもありかもしれない。
「でも、そうなると、ここから離れなきゃいけないよな……」
力はついたものの、正直、自分がここの魔物と戦って、どれほど事が上手く運べるか想像が付かない。とりあえず、次落ちてきた魔物が倒れる前に、攻撃してみるか。
そう考えた矢先のことであった。穴に続く道の一つから、巨大なワニのような魔物が飛び出してきた。
「夢であってくれたらよかったのに」
あれから、どれだけ時間が経ったのか分からない。僕は、体を起こして辺りを見渡して、異変に気づく。
「あれ? 体が痛くない」
全身に響いていたはずの、骨折の痛みが全て引いているのだ。寧ろ、体の奥底に、しばらく感じていなかった力を感じる。
「そういえば……」
気絶する前、確か魔物の肉を食らっていた。その結果、傷が治り、力まで湧いてきた。
僕は、もう一度、魔物の死体を見つめる。数が多いのか、まだクリスタルに吸収しきれていない魔物の死体は沢山あった。
「もう一回、口にしてみるか……? いやでも……」
思い出すのは、全身に駆け巡るような痛み。あの一瞬、あまりの痛さに気を失ったんだ。
僕は、体のどこにも異常が無いか確かめる。線の細さはあまり変わらないが、肉にハリが出たような気がする。それに、いつもよりも体が軽い。
基本的に、人は魔物の肉を食べても何も変化しないと言われている。子供が魔物の肉を食べると、多少の成長が見られるという結果はあったが、それも微々たるものだ。ならば、何故自分は魔物の肉を食べて、それも一口食べただけで力が湧いてきたのか。考えられるのは、最下層の魔物だからか、それとも、全てを弟に奪われた自分の肉体が、スポンジのように力を吸収したからか、あるいはその両方か。
とはいえ、魔物の肉が、一応食料にはなりそうだということで、少し希望を得た。体を駆け巡った痛みは気になるが、それより、力が湧いてきたことが気になる。
「どちらにしろ、今地上に戻れたところで、また同じような生活になるだけだ。なら、一か八か、魔物の肉を食らって強くなれるか試してみよう」
そう決めた僕は、近くに落ちていた魔物の肉片を拾い上げ、思い切り頬張る。瞬間、激痛が駆け巡る。しかし、気絶するほどではなかった。何とか肉を飲み込み、様子を見ていると、変化はすぐ現れた。体がゴリゴリという音を立てながら蠢き始める。
「痛い……」
あまりの痛さに再び気を失いかけるが、なんとか堪える。そうして30分ほど立ったところで、己の体を見渡す。そして、驚く。
「す、すごい。あれほど鍛えても変わらなかったのに!!」
線の細さはまだ残るものの、確かに筋肉がついた体つきになった。脂肪が少なすぎてそこまで隆起はしていないものの、限界まで引き絞った体、と言われればそう見えるかもしれない。それに、力も先程より湧いてくる感覚があった。
「あ、あはは! これはいいぞ!」
調子に乗った僕は激痛と格闘しながらも何度も何度も魔物の肉を食べ、その都度変わる体に喜び、また食べてを繰り返した。
疲れを感じず、寝る間を惜しんで肉を食らっていたところ、ついに、体の変化が止まった。
「色々と変わったな……」
分かる範囲で言えることは、まず、身長が今までよりもずっと高くなり、全身が隆起した筋肉質な体になったこと。そして、声が低くなったこと。何より体感できるのは、力だろうか。最下層の魔物の死体を片手で握りつぶせる程には力がついた。
「服もピチピチだな……」
今にも破けそうな服は、大人の体に、子供の服が引っかかっている、という表現が正しかった。ダンジョンなら、宝箱から服なども出そうなので、それを期待するのもありかもしれない。
「でも、そうなると、ここから離れなきゃいけないよな……」
力はついたものの、正直、自分がここの魔物と戦って、どれほど事が上手く運べるか想像が付かない。とりあえず、次落ちてきた魔物が倒れる前に、攻撃してみるか。
そう考えた矢先のことであった。穴に続く道の一つから、巨大なワニのような魔物が飛び出してきた。
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