悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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闇夜に響く声

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 違和感はあった。
 
 言い訳にしかならないけど、あったのだ。急に心を入れ替えたときも私は疑った。
 そもそも、手紙を出すなんて明日でも良いし、急用でもそれは使用人に頼めば良いことなのだ。実の娘を、近いとはいえ一人で夜の街に出すなんてことしないだろう。

 浮かれていたのだ。変わってくれて、私を認めてくれたと。馬鹿だなあ私。こんなに簡単に騙されて。
 だから、私は目の前の違和感に気付かなかった。

 違うか。それは建前だ。

 
    ほんとは、信じたかった。


 本当に、変わってくれたのかと。信じたかった。あのとき、両親が私を抱きしめてくれて本当に嬉しかった。それが嘘でも。
 
 でも、私を殺したいくらい良く思っていなかったなんて、知らなかった。

 結局、私はこの世界でも愛されないのか。
 この男たちと形だけの交尾をし、そして死ぬ。
 何てつまらない人生だろうか。私は悲劇のヒロインとして人生の幕を下ろすのか。
 涙がボロボロと流れる。もう止められない。止める術がない、涙も拭えない。

「う、うぅ、ふ、」

 私は嗚咽を漏らすだけだ。

 死にたくない、嫌だ。せっかく、せっかく、



 エリーとエヴェレット二人に逢えたのに……!!!



 そう思っても、現状は変わらない。男の手が私の胸に触れる。
 男の顔が近づいてきて、私の首筋を舐める。舌の生温かくヌメッた感触が伝わる。
 男がズボンのベルトを引き抜く。

 ああ、これから本当にしてしまうのだ。
 私の目から光が消える。
 抵抗しなくなった私を見て、男たちは気を良くしたのか、嘲笑う声と期待の声が聞こえてくる。
 
 私の下着に手をかけて、下ろされそうになったとき、声が響いた。


    「何をしている!!!」


 聞いたことある声だ。男たちは一斉にその方向へ顔を向ける。私は目線だけをノロノロと向ける。


 そこには騎士の格好をしたエヴェレットが居た。


「…エ、ヴェ、レット、さま、」

 私は小さく呟く。すると、エヴェレットはこちらに気づいて大きく目を開く。

「お前……!!!」

 暗闇の中でも僅かな光を受けて光る白髪が、ブワリと逆立つ。
 
「何をしていた」

 そして、聞いたことのない地を這うような低い声で男たちを問い詰める。取り立ての日とは比べ物にならない圧だ。

「な、何でここに…」

「何をしていたと聞いているんだ」

 ヒュンと素早く腰のサーベルを引き抜き男達へ向ける。その動きは洗練されており、全く知らない私でも分かるくらいだ。

「ま、待ってくれよ騎士様。俺らは同意の上で、」

「その格好が同意の上だと?馬鹿も休み休み言え」

 サーベルを構えたままこちらに一歩を踏み出す。それと同時に、男達も一歩下がる。

 このままでは圧倒的に不利と踏んだ男たちは、私を前に出して首にナイフを立てる。グッとナイフを押され、首から血が流れるのが分かった。
 
「そう来るのなら、こちらも容赦はしない」

 エヴェレットの目には光はなく、猛禽類のような、獲物を逃さんとする鋭い目をこちらに向ける。

 それに怯んだ男たちだったが、それを打ち消すかのように3人男が雄叫びを上げてエヴェレットに突っ込んでいく。

 が、エヴェレットはサーベルを片手に持ったまま攻撃を流すと、男の首根っこを掴んでもう一人の男の方に投げる。そして、残った男の背後に回ると、ガラ空きの背中に長い足で回し蹴りを入れる。
 一瞬にして、3人の仲間がやられてしまった男たちは、目の前の光景が信じられずに絶句していた。

 
  ーこれが、将来騎士団長になる男かー

 
 圧倒的な力を持つエヴェレットを前に、男達は息を呑む。



    「さあ、言い訳を聞こうか」

 
 その姿に相応しい、低い声が闇夜に静かに響いた。

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