悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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 不意に意識が降りてくる。
 パチリと目を開けると、目の前にはまだ静かな寝息を立てているレイアがいた。
 レイアの手を握ったまま、眠りについたのは覚えているが、まだそのままだったとは。

 手を離そうとして、そしてやめる。握っていないと、何処か行っていまいそうで。
 レイアが生きている、側にいる感覚が、無性に欲しかった。

 部屋の時計を見ると、まだ早い時間だった。寝た時間も遅いし、もう少し寝ようと目を再び閉じる。
 
 少しすると、レイアが起きた。

 俺が起きると、レイアは自分が起こしてしまったと勘違いしたのだろう。小声で謝罪の言葉を口にする。
 
 俺は状況を説明する。不自由なことになってしまったが、レイアは何も言わずに表情を変化させる。
 心配しているような、寂しいような顔ではあるのに、どこか安心している。
 ここから読み取れることは少ないが、エリーや家に伝えなかったのは良い判断だったのだろう。

 それを伝えると、よく分かりますねと言われた。
 俺は人の表情や動きを観察するのが得意な方ではある。だが、レイアはそんなことしなくても分かりやすい。

 それを証明するために、レイアに顔を近づける。すると、レイアは案の定赤くなる。

 俺は自分が思う行動をとってくれるレイアが面白くて楽しんでいると、レイアは俺を睨みつけた後、自分から顔を近づける。

 その行動には驚いた。行動には。
 本人は睨み付けている気になっているが、俺にとっては小動物の威嚇にもならない。ただの上目遣いになっていることに気付いていないらしい。

 レイアの長い髪を手に取り、耳にかけてやろうと触れたとき、耳も少しの熱を持っていることに気づく。

 レイアも俺の髪を手に取り横に流す。髪に隠れていてよく見えなかったレイアと、バチリと目が合う。
 レイアは目線を外すことをしなかった。

 俺はレイアの手に自分の指を絡め、その手に口付けをする。

 驚いて声を出そうとするレイアを嗜めた後、レイアは俺を睨みつけて、しかし小声で俺を責める。

「エヴェレット様が急にこんなことするから!」

「こんな事?何のことだ?」

 しらばっくれると、レイアの顔がカッと赤くなる。これ以上赤くなるのか。熟したリンゴみたいだ。

「なっ…、わ、分かってるくせに!」

「分からんな、何のことだ?言ってみろよ、レイア・ルーナマリア・リリー」

 誰にでもわかる挑発をする。経験が足りないだけで、レイアは賢い。この挑発もわかっているにも関わらず、綺麗に乗ってくれる。しかも、俺の期待を超えて。

 レイアはいつもよりも少し崩れた口調で、顔を真っ赤にしてか細く言う。


「わ、私の手に、キッ……、きす、するから………、」


 キス。この単語を言うとき、とても声が震えていた。こんなことも慣れてないのか。
 純粋無垢なレイアは、俯いて唇を噛み、体をプルプルと震わせている。今にも蒸発してしまいそうなくらいだ。目にはじんわりと涙が浮かんでいて、光を受けてキラリと大きく光る。

 
 その姿が、あまりにも俺の色々な感情を一気に煽る。


 俺は落ち着くために、目を瞑り天を仰ぐ。今レイアの顔を見たら何をしでかすか分からない。

 レイアは俺に抗議の声を上げる。その中に、男に慣れていないという言葉があった。
 やはりか。慣れてないからこんな反応をするのだ。まぁ、最初から男性経験があるとは思っていなかったが。
 
 時計を見ると、もうそろそろ出ても問題ない時間だ。
 俺は使用人を呼び、その場を去る。

 自室に戻ったとき、俺は崩れるようにしてドアにもたれ掛かる。

「はぁ、……クッソ………」

 
 何故、何故だろうか。



  何故、俺の体はこんなに熱いんだ。

 
 
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