悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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唖然

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 朝早く、まだ日も出ていない頃から俺たちは集まる。
 今日はリリー夫妻を押さえる、決行日だ。
 騎士の服に身を包んだ同胞たちが、規則正しく並ぶ。
 
 今回の件は貴族が関わっているため、あまり大人数での行動はできない。なるべく、少人数で。
 そのため、ここにいるのは選りすぐりの人物たちだ。騎士団長に、副団長。そして各組のリーダーとその右腕と言える人物が各1人ずつ。
 
 俺達は発行された書類を持ち、馬に跨る。手綱を持って馬に揺られること数十分。見慣れた豪邸が見えてくる。

 俺たちは近くに馬を止め、リリー邸のドアを叩く。
 返事は無い。これは想定内だ。団長が声を上げる。

「リリー夫妻!いるなら出てもらおうか!」

 返事は無い。ならばこちらも強行突破だ。ドアを破壊して、無理やり中に入る。

 しかし、そこで異変に気づく。

 
    ーあまりに、静かすぎるー

 
 これだけ大きな音を出せば、使用人の1人や2人は出てくるだろう。出るなとあらかじめ言われているのか?
 いや違う、そもそもの話、人がいない。こんなことありえない。

「どうなってる…」
 
 団長が苦々しく言う。とりあえず、皆で手分けして場内を探索することになった。
 
 ここから逃げた?それでは明らかに早すぎる。それに、使用人はどうした。家に帰られたのか?あの少ない時間で、全員?
 周りを見渡しても、金目のものは残っている。わざと残していったのか、それともまだここにいるのか。

 疑いの上にまた疑いが。それがどんどん重なって重くなる。何が真実かがわからない。

 俺はウィリアムと一緒に2階に上がり、他の部屋を見る。寝室は団長が見ているが、そこには誰も居ないらしい。
 団長は顎に手を当てながら言う。

「これは、逃げられたか…?いやしかし、検問所には引っかかっていないぞ。どこにいるんだ?」

 検問所に引っかかっていなくても、いくらでも国外に出る方法はある。
 そう、法を無視すれば。

「卑劣な真似を…!」

 俺は手を握りしめる。レイアを殺そうとした挙句、自分たちはここから逃げるのか。また、法を破り。

 俺はそのまま大股で浴室に行きドアを乱暴に開く。

「ちょっとリーダー、いくら何でも乱暴すぎますよ」

「五月蝿い」

 ここまで言った時、俺とウィリアムは鼻を押さえる。

「なっ、この臭い……!!」

 ウィリアムは苦虫を噛んだような顔をする。いや、噛み潰してそのまま食った、と言った方が正しい気がする。
 とてつもない異臭を放つ奥へ、俺は構わず進む。

「ちょっと、リーダー!」

 ウィリアムは臭いでそこから動くことが億劫になっているらしい。そんなの気にしている場合ではないのだ。

 奥まで来て、閉ざされている扉を蹴破る。手は使いたくない。なぜなら、すりガラスの向こう側を見てしまったから。


「なんだ、これは………」


 すりガラスの向こう側を信じたくなかった。いや、信じられないのだ。今、この目で見ても。

 後からウィリアムと団長が来る。何があったと口元を覆いながら言う。
 2人はこの光景は俺で隠れていて見えていないらしい。

「団長、これは……」

 俺のこめかみから冷や汗が流れる。俺が体を傾けると、ウィリアムと団長は目を大きく見開く。

「うっ!」

「どうなっているんだ……」

 ウィリアムは目を背け、団長は絶句する。

 3人の目には同じ光景が映る。

 水が張られている浴槽は、赤く染め上げられている。
 
 そのなかに、かつて人だったものが二つ。

 裸で、血だらけの、赤黒くグロテスクな物体が。



 そこには、リリー夫妻の死体があった。


 
 
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