悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?

柊 来飛

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「……は……?」

「その反応、やはり貴女は知らないのですね」

「お前!!」

 エミリアは私に突きつけていたナイフを今度は私の首に持ってくる。

「エヴェレット様が、アンタにキスをしたって言うの!?」

「ええ。2回」

「何ですって!?」

 エミリアは怒りよりも驚きが勝っているらしい。ナイフが少し離れる。

「嘘よ、何でエヴェレット様がアンタなんかに、」

「後一つ、私は嘘をつきました」

「は、」


 
ー「本当は、エヴェレット様のことをお慕いしております」ー



 その言葉に時が止まる。私は自然と笑顔になる。

「貴女よりも、エヴェレット様のことが大好きだと、愛していると、胸を張って言えます」

 そうだったのだ。この気持ちは、恋なのだ。悩んでいたものがストンと胸に落ちる。

「出会って日が浅いアンタが何を言うのよ!!」

「長さなど関係ありません。その想いが大切なのです。愛する人を裏切るような真似をして、それでも愛されようだなんて、身勝手がすぎます」

「あああああ!!!」

 エミリアは持っていだナイフを投げ捨てて取り囲んでいる男たちに向かって言う。

「ただ殺すだけじゃ済まない!もういいわ、徹底的に尊厳を破壊してから殺してやる!コイツを犯すなり何なりして頂戴!!」

 ああ、またこれなのか。この人たちは前のグループよりも数は多いしガタイも大きい。逃げるのは不可能だろう。
 もういっそ、犯される前に自殺してしまおうか。
 私は冷静だった。私の目に映るのは投げ捨てられたナイフ。私とナイフは切っても切れない縁らしい。ナイフを拾うくらいは出来る。しかし、

「貴女は、気づいていないのですね」

「は?」

 その必要はないらしい。

「レイア!!!」

 待ち望んでいた声が聞こえる。

「エヴェレット…」

「お前……!!」

 エヴェレットは髪を逆立てて、着ているジャケットの下から銃を取り出す。
 
「待ってよエヴェレット様!」

「ならレイアを離せ!」

 懇願の声と威圧の声。側から見たらどちらが被害者か分からない。
 エミリアはグッと口元を結ぶ。顔には脂汗と冷や汗が伝い、メイクが剥がれてきている。

「ならエヴェレット様、交換条件です」

「何だと、」

「わたくしと結婚してくださるのなら、彼女を解放します」

「何ふざけたことを、」

「わたくしは本気です!何回もアプローチしたのに何一つ振り向いてくれない!婚約者なのに!」

「お前は婚約者じゃない」

 エヴェレットがピシャリと言い放つと、エミリアは顔を顰める。瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。

「何度も言っただろう、ノア家は許婚制度は無い。自分が心から愛する人と婚約を結ぶ。それなのに、お前は断っても断っても縁談を持ってくる。受けたのもお前の気が済むと思ったからだ」

「受けてくれたではありませんか!」

「破談になっただろう。婚約者とも言えぬ、短い間だったな。今思えば、お前を最初から拒否していて正解だった」

 エヴェレットはため息混じりに話す。エミリアは顔を真っ赤にしていくばかりだ。  

「しかし、お前の婚約者になればレイアを解放してくれるのなら、俺はそれを受け入れよう」

「あら?本当に!?では、契約成立ですわ!」

 エヴェレットは銃を下ろしてエミリアに近づく。私は無理やり顔を上げさせられる。この光景を目に焼き付けろと言われているようなものだ。
 嫌だ、見たくない。まだ彼女じゃなかったら祝福できた。でも、彼女は、彼女だけは。

 私の目から涙が溢れる。それが傷口に染みて痛い。そのせいでもっと涙が流れてくる。

「レイアちゃん、貴女がいたから、わたくしはエヴェレット様と結ばれたわ。ありがとう」

 そんな感謝嬉しく無い。エミリアは勝ち誇った顔で宣言し、エヴェレットに向き直る。頬を赤く染めて恋する乙女の顔になり、猫撫で声でエヴェレットに話しかける。

「ねぇエヴェレット様、愛しています」

「ああ。俺も愛している」

 グッとエヴェレットはエミリアを抱き寄せる。エミリアもエヴェレットに身を任せ、2人は今にでもキスをしてしまいそうなほど顔が近い。
 そこまできた時、エヴェレットは言う。

「その前に、レイアを解放してくれるか?愛しきエミリア」

「ええ!」

 パッと私は離させる。私はよろよろと立ち上がる。見窄らしい私の姿を見てエミリアは口角を上げてニヤニヤと笑う。




     「さあ、これで満足か?」
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