灰色に夕焼けを

柊 来飛

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先生と僕

取り繕い

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 高校から出された課題も早めに終わってしまい、後は入学式を待つだけになってしまった。
 僕、中学の頃はのせいで生徒はもちろん、先生もあまり僕に関わろうとしなかったからなぁ。別に悲しいとか、寂しいとかは思わなかったけど。
 
 そういえば、先生は僕のこと、知っているのだろうか。
 知らないだろうな。知っていたら、こんなに優しくしてくれるはずない。
 
 ーだったら、バレない様にしなければ。
 
      
      
     
       ー「先生に嘘をつく」ー

 
 
 僕は罪悪感がどっと押し寄せてきて、ベッドにボフリと倒れ込む。だって先生は、こんなに優しくしてくれてるのに。

 ーなのに、僕だけとても卑怯じゃないか。
 
 でも、その優しさがなくなるのが怖い。嘘をつきたくない、嘘をつかなければいけない、対立する現実と思いが僕を深く蝕んでいく。
 もしバレてしまったら?どうしようか。そしたらもう本当に、死ぬしかないのだろうか。施設に戻ることは難しいだろうし。
 マイナスな事ばかりが頭を埋め尽くしていく。頭がグラグラと重くなっていたとき、ドアをコンコンとノックされた。

「烏坂、入っても?」

「は、はい、どうぞ」

僕がそう言うと、ガチャリとドアを開けて先生が入ってきた。それに合わせて僕は倒れた体を起こしてベッドに座った形にする。

「烏坂、制服あるか?」

「え、ありますけど…」

「サイズは?」

「サイズは…えっと…待ってください、確か…」

「いや、君の体に合ってるかどうかだけ確認したい。小さいとか、大きいとか、大丈夫か?」

「それなら大丈夫です。少し大きいくらいですから」

「そうか、じゃあ制服は大丈夫か…」

 何で急にそんなこと聞くのだろう。僕が制服を持っていないと思ったのかな?

「烏坂」

「は、はい」

「ローファー買いに行くぞ」

「え、、ローファーありますよ」

「サイズの合ってないボロボロのローファーなら、な」
 

  ーそう、先生が強調する様に言った。
 
 
 僕はそれを聞いて、心臓がドクリと大きく鳴る。
 そうだ、僕のローファーはボロボロだ。全体傷だらけだし、糸もほつれている。ローファー特有の硬さはもう無く、全体がベコベコだ。磨いてもツヤは出ないし、何より僕の足に対して小さすぎるのだ。そのせいで僕は靴擦れを起こしていて、絆創膏を貼っている。

「烏坂。お前、ここに来たときあのローファーを履いて着たよな」

「…そ、そう…です」

「あれは施設からの貰い物か?」

「は、はい、少し小さいけど、大丈夫だろうって…」

「………少し、ねぇ」

「…あの、えっと、ぼ、僕も履いてみて、少し小さいけど、大丈夫だって思ったんです」

「小さすぎて靴擦れしているのに?」

「は、初め履いたときは、靴擦れしなかったから…」

 僕がオドオドと言葉を紡ぎながら言うと、先生は呆れた様な、少し強い口調で言った。

「最初から怪しいと思ってたんだよ。クソッ、施設は何してやがんだ」 

 そう言い捨てると、先生は僕の手首を掴んだ。先生の大きい手は僕の手首なんて簡単に鷲掴みにしてしまう。先生が鷹の様な目でギリっと僕を定め、掴まれた手首にもギチリと力が込められていく。

「なんかあったら言えって言ったよな」

「ご、ごめんな…」

 僕がその気迫に圧倒されていると、先生はハッと気づいた様に手首を離した。そして申し訳なさそうに目線を逸らして言った。

「違う、すまない。怖がせるつもりはなかった、謝罪が聞きたいわけでもない。ただ、君が…いや、何でもない、忘れてくれ。すまなかった」

バツが悪そうに先生は言う。

「その…すみません。次からは、ちゃんと言います」

「違う、謝らないでくれ。悪いのは俺で、君は何も悪くない。俺が怖がらせた。だから…これじゃあ堂々巡りだな、やめよう。とりあえず、服とかローファーとか、必要なものを買いに行くぞ」

「は、はい」
 
 先生が部屋出て行った後、僕はまたベッドに倒れ込んだ。先生、少し怖かったな。口調もいつもと違ったし。あれが素の先生なのだろうか。
 でも、でも…きっと、
        
         
 優しい人なんだろうな。

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