灰色に夕焼けを

柊 来飛

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先生と僕

買い物

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 先生に誘われ、近くのデパートに必要なものを買いに行くことになった。
 
 まずはローファーから。靴屋に行くと、入学シーズンということもあり沢山のローファーが並んでいる。どれも同じの様に見えるけど何が違うのだろう。
 んーと頭を悩ませる僕を端に、先生は言った。

「何でも好きなのを選んでくれ。サイズは少し大きいほうがいい」

「分かりました」

 そうは答えたものの、よく分からない中選んでいると店員さんが話しかけてきてくれて僕に合うローファーを選んでもらった。ローファーついでに日常生活で履く靴も見た。運動靴は一つあるが、それは学校用なのでもう一つ靴を買うことにした。厚底やヒールなどではなく、動きやすいスニーカーを買った。選んだローファーとスニーカーは先生が買ってくれた。何かを買ってもらうなんてとても久々だ。
 新品のローファーとスニーカーを持ってホカホカしている僕に向かって、先生は言った。

「その二つだけで満足そうな顔だな」

「えへへ、嬉しいです。ありがとうございます」

「礼をいうならまだ早い。靴しか買っていない。ほら、次服買いに行くぞ」

「はい!」
 
 次は予告通り服を買ったのだが、それが僕の目が回るほど沢山の店を回り、その度に沢山の服を買った。これも良い、あれも良いと先生が言ってどんどん試着室に持ってくる。店員さんもテンションが上がってしまってかなりの量の服を買い込んだ気がする。
 シャツはもちろん短パンに長ズボン、ミニスカートにロングスカート、ワンピースやジャケットなど、値段も気にせずホイホイとカゴの中に放り込んでいくからとてもヒヤヒヤした。僕は試着をするだけだったのにとても疲れた。でも、新しい服が増えたことはとても嬉しい。

「かなり沢山買いましたね…」

「次は化粧品か?」

「先生お化粧するんですね。とても似合うと思います」

「いや、君のを買うんだが」

「僕お化粧したことないですよ?」

「何事も最初は初めてだろう。興味ないのか?」

「無いですね。自分に何が合うとかとか分からないし、化粧品の種類とかもかなり曖昧ですし」

「イエベとかブルベとか分かるか?」

「…何かの、化粧品の名前だったりしますか?」

「…何というか…本当に興味がないんだな…君は」

「すみません…年頃なのに…」

「別に興味が出てきたら買えばいいだろう」

先生がフォローしてくれてる。
 やっぱりもう少し興味を持った方がいいのだろうか。でも僕がお化粧してもなぁ…。フワフワとそんなことを考えていると、先生が腕時計をチラリと見て言った。

「まだお昼には早いが…フードコートが混む前に食べてしまおうか」

「そうですね」

 フードコートに移動した僕たちは席を取ってから料理を選んだ。
 僕は醤油ラーメンの並盛りを選んだのだが、先生は豚骨ラーメンの大盛りと、違うお店でたこ焼き(8個入り)を頼んでい他のにも関わらず僕よりも早く完食してしまった。
 家ではもっと食べていたから本当はまだ食べれるのだろう。僕も食べ終わり、食器を片付けるとまた買い物を再開した。
 
 化粧品はまだ買わないということになったので、必要な筆記用具やノート類を買った。施設から持ってきたのは、消しゴム1つとシャーペン、赤のボールペンとノート各2つずつだけだった。

 その他には生活に必要な雑貨を買った。僕のだけじゃ無い。足りなくなってた洗濯用洗剤とか、台所用スポンジとか。
 
 車に戻る頃には、かなりの大荷物になっていたが、僕が持っているのは新品のローファーとスニーカーの袋のみで服やその他諸々は全て先生が持っていた。
 勿論、僕も持とうとしたのだがその度に、

「君が必要なものを買いに来たんだ。君が見れないと意味が無いだろう」

と言われてしまい、結局最後まで持たせてはくれなかった。

 家への帰り道。車が赤信号で止まったとき、助手席にいた僕は口を開いた。

「今日は本当にありがとうございました」

「とりあえず必要なものは買えたか?」

「はい、おかげ様で」

「なら良かった」

当たり障りのない会話だが、僕は本当に先生に感謝している。

 そして、ずっと思っていたことを口にした。


「先生、僕の前ではそのままでいてください」


そう言うと、先生は目の前から視線を外さずに口を開いた。

「…気づいてたか」

「なんとなく、ですけど」

「…本来の俺は、少し口が悪くてな。怖がらせてしまうと思ったんだが」

「僕が先生を怖がることなんてあり得ません。だって、先生は優しい人ですから」

「…よく、出会って間もない俺のことをそう言い切れるな」

「周りの人は、僕に関わろうともしなかった。でも、先生は違います。僕のことをこんなに気にかけてくれる。例えそれが、僕を預かる上での義務的な行為だとしても、とても嬉しいんです」

そう言うと、先生は「義務じゃないけどな」と一言言ってから僕に視線だけを向けて言った。

「分かった。俺も、お前の前では素の俺でいるよ」

この時少し、先生との距離が縮まった気がした。


 
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