18 / 128
学校
お疲れ様
しおりを挟む
午後の競技も盛り上がり、いよいよ最後の競技が始まる時間になった。
最後は1番盛り上がる団対抗リレー。獲得できる得点も1番高い。各クラスから選りすぐりの選手がレーンに集結する。
僕は一年生だから最初の方に走る。全体を見渡すと、伊集院君がカメラを構えている。 メガネの奥からは、獲物を逃さんとする猫のような鋭い目が覗いていた。
パァンと一際大きい発砲音と共に、競技は始まった。みんな100mずつ走ってバトンをパスする。
力強く地面を蹴るしなやかな脚、大きく前後に揺れる腕、真っ直ぐと前を見据える瞳とバトンを握る血管の浮き出た手。
緊張と興奮を帯びた声援と、バトンを受け渡す時の大きな掛け声。
その全てがスローモーションで僕の瞳に映し出される。
僕も、みんなの期待を背負っているのだ。そう実感する。
さっきまでうるさく鼓動していた心臓は、今は静かにその時を待っている。
バトンを受け取ると、僕は風を切るように走り抜ける。前の人との距離を縮めて、そして抜かす。ただ真っ直ぐに目の前だけを見る。
バトンを渡す相手は最初僕を励ましてくれた陸上部の男の子。
「はい!」
僕がバトンを差し出すと、その子は一瞬ニカッと笑ってそのままバトンを受け取り、馬のように駆け出して行く。
どんどん距離が縮まって、2年生にバトンが渡る頃には1位になっていた。
そこからは抜かされ、また抜かすという繰り返しだった。
最後のアンカーにバトンが渡る。
アンカーを務めるのは我らが団長だ。大股で素早く脚を動かし前に進んでいく。
どんどん1位の人との差を縮めていく。
最後のカーブに差し掛かった時、グンとスピードが上がり一気に前に踊り出る。
団長は高々に手を上げて飛び込むようにして、1番最初にゴールテープを切った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
閉会式、今年の体育祭優勝団が発表された。
発表担当の生徒が6位から順にマイクを通して得点と団を言っていく。
2位の団を発表した時、まだ僕の団は呼ばれていなかった。
ざわざわとする中、担当の生徒はマイクを使わず、大きな声で発表する。
「今年の優勝団は…3組です!!!!
おめでとう、ございまああす!!!」
その瞬間、僕たちの団は黄色い歓声に包まれる。パチパチと周りも拍手でお祝いしてくれている。
団長と副団長が前に出て賞状とトロフィーを貰う。
団長がマイクを受け取って、優勝した感想を述べる。
「俺、俺…今まで体育祭で優勝したことなくって、俺が団長の、高校生最後の体育祭で、最後の最後で優勝出来て、俺、本当に嬉しいです。先生、保護者の皆様、他の団の人たち、そして何より、俺について来てくれた3組の皆さん、本当に、本当に、ありがとうございましたぁ!!!」
ボロボロと泣きながらも感謝と喜びを伝える団長に、副団長は笑っていたが、その目にはうっすらと水の膜が張っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
全てが終わり、教室での帰りのSHLが終わると、頑張った生徒達にPTAからの差し入れということで、炭酸飲料が配られた。
その見覚えのある段ボールを運んできた人に、僕は思わず声を上げた。
「えっ、せんせっ…」
「烏坂、お前はこの段ボール知ってるよな」
そう、この段ボールは朝先生が空き教室に運んでいたやつだ。この段ボールだったのか。
各自段ボールの中から飲み物を取る形式だったが、せっかくだからと先生は手渡しで僕に飲み物を渡した。
「あ、ありがとうございます」
「お疲れ様、烏坂。これからある片付けも頑張れよ」
その一言で、僕の気力は一気に削がれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕方、ようやく片付けが終わった頃には、もうヘトヘトだった。
先生と一緒に片付けをしていたのだが、なんせ先生は大きいから力仕事を頼まれる。
テントの解体や使った道具の片付けやら。
それらを指定の場所に置いて来て欲しいと頼まれるのだが、先生はまだ場所を完全に把握していないので、その案内係として僕が一緒についていくことが多かった。
流石に今日は家事をできる体力は残っていない。
先生の車に乗り込むと、疲れがどっときて急に眠気が襲って来た。僕はその眠気と戦うこともせず、そのまま眠りについた。
最後は1番盛り上がる団対抗リレー。獲得できる得点も1番高い。各クラスから選りすぐりの選手がレーンに集結する。
僕は一年生だから最初の方に走る。全体を見渡すと、伊集院君がカメラを構えている。 メガネの奥からは、獲物を逃さんとする猫のような鋭い目が覗いていた。
パァンと一際大きい発砲音と共に、競技は始まった。みんな100mずつ走ってバトンをパスする。
力強く地面を蹴るしなやかな脚、大きく前後に揺れる腕、真っ直ぐと前を見据える瞳とバトンを握る血管の浮き出た手。
緊張と興奮を帯びた声援と、バトンを受け渡す時の大きな掛け声。
その全てがスローモーションで僕の瞳に映し出される。
僕も、みんなの期待を背負っているのだ。そう実感する。
さっきまでうるさく鼓動していた心臓は、今は静かにその時を待っている。
バトンを受け取ると、僕は風を切るように走り抜ける。前の人との距離を縮めて、そして抜かす。ただ真っ直ぐに目の前だけを見る。
バトンを渡す相手は最初僕を励ましてくれた陸上部の男の子。
「はい!」
僕がバトンを差し出すと、その子は一瞬ニカッと笑ってそのままバトンを受け取り、馬のように駆け出して行く。
どんどん距離が縮まって、2年生にバトンが渡る頃には1位になっていた。
そこからは抜かされ、また抜かすという繰り返しだった。
最後のアンカーにバトンが渡る。
アンカーを務めるのは我らが団長だ。大股で素早く脚を動かし前に進んでいく。
どんどん1位の人との差を縮めていく。
最後のカーブに差し掛かった時、グンとスピードが上がり一気に前に踊り出る。
団長は高々に手を上げて飛び込むようにして、1番最初にゴールテープを切った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
閉会式、今年の体育祭優勝団が発表された。
発表担当の生徒が6位から順にマイクを通して得点と団を言っていく。
2位の団を発表した時、まだ僕の団は呼ばれていなかった。
ざわざわとする中、担当の生徒はマイクを使わず、大きな声で発表する。
「今年の優勝団は…3組です!!!!
おめでとう、ございまああす!!!」
その瞬間、僕たちの団は黄色い歓声に包まれる。パチパチと周りも拍手でお祝いしてくれている。
団長と副団長が前に出て賞状とトロフィーを貰う。
団長がマイクを受け取って、優勝した感想を述べる。
「俺、俺…今まで体育祭で優勝したことなくって、俺が団長の、高校生最後の体育祭で、最後の最後で優勝出来て、俺、本当に嬉しいです。先生、保護者の皆様、他の団の人たち、そして何より、俺について来てくれた3組の皆さん、本当に、本当に、ありがとうございましたぁ!!!」
ボロボロと泣きながらも感謝と喜びを伝える団長に、副団長は笑っていたが、その目にはうっすらと水の膜が張っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
全てが終わり、教室での帰りのSHLが終わると、頑張った生徒達にPTAからの差し入れということで、炭酸飲料が配られた。
その見覚えのある段ボールを運んできた人に、僕は思わず声を上げた。
「えっ、せんせっ…」
「烏坂、お前はこの段ボール知ってるよな」
そう、この段ボールは朝先生が空き教室に運んでいたやつだ。この段ボールだったのか。
各自段ボールの中から飲み物を取る形式だったが、せっかくだからと先生は手渡しで僕に飲み物を渡した。
「あ、ありがとうございます」
「お疲れ様、烏坂。これからある片付けも頑張れよ」
その一言で、僕の気力は一気に削がれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕方、ようやく片付けが終わった頃には、もうヘトヘトだった。
先生と一緒に片付けをしていたのだが、なんせ先生は大きいから力仕事を頼まれる。
テントの解体や使った道具の片付けやら。
それらを指定の場所に置いて来て欲しいと頼まれるのだが、先生はまだ場所を完全に把握していないので、その案内係として僕が一緒についていくことが多かった。
流石に今日は家事をできる体力は残っていない。
先生の車に乗り込むと、疲れがどっときて急に眠気が襲って来た。僕はその眠気と戦うこともせず、そのまま眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
婚活に疲れたアラサーOLの私、癒やし的存在の弟分(高校生)に「もう待てない」と外堀を埋められています ~10年分の執着は、甘すぎて重すぎる~
ダルい
恋愛
「29歳? 子供産むならもっと若い子がよかったな」
中堅企業で働く早川結衣(29)は、婚活市場における年齢の壁と、デリカシーのない男たちにすり減らされる日々を送っていた。
そんな結衣の唯一の癒やしは、マンションの隣に住む幼馴染の高校生・瀬戸湊(16)。
両親が共働きの彼に代わって、幼い頃はお世話をしてあげていた……はずが、いつの間にか立場は逆転。
手料理を振る舞われ、愚痴を聞かれ、マッサージまでされる始末。「湊がお嫁さんならいいのに」なんて冗談を言っていたけれど。
「今の結衣姉が一番綺麗だよ。……早く、誰も手出しできない『おばさん』になってくれればいいのに」
可愛い弟分だと思っていた彼が、時折見せる『オス』の顔。
16歳の高校生と、もうすぐ30歳のアラサー。
13歳差の常識と理性に抗いながら、生意気な年下男子に外堀を埋められていく、甘くて重い現状維持(ラブストーリー)。
「俺が大人になるまで、誰とも結婚しないで」
癒やされたいすべての女性に贈る、最強の年下幼馴染による溺愛包囲網、開始。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
嘘コクのゆくえ
キムラましゅろう
恋愛
アニーは奨学金とバイトで稼いだお金で魔法学校に通う苦学生。
生活は困窮、他の学生みたいに愛だの恋だのに現を抜かしている暇などない生活を送っていた。
そんな中、とある教授の研究室で何らかの罰としてアニー=メイスンに告白して来いと教授が学生に命じているのを偶然耳にしてしまう。
アニーとは自分のこと、そして告白するように言われていた学生は密かに思いを寄せる同級生のロンド=ハミルトンで……
次の日、さっそくその命令に従ってアニーに嘘の告白、嘘コクをしてきたロンドにアニーは……
完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。
誤字脱字が罠のように点在するお話です。菩薩の如き広いお心でお読みいただけますと幸いです。
作者は元サヤハピエン主義を掲げております。
アンチ元サヤの方は回れ右をお勧めいたします。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる