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学校
お疲れ様
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午後の競技も盛り上がり、いよいよ最後の競技が始まる時間になった。
最後は1番盛り上がる団対抗リレー。獲得できる得点も1番高い。各クラスから選りすぐりの選手がレーンに集結する。
僕は一年生だから最初の方に走る。全体を見渡すと、伊集院君がカメラを構えている。 メガネの奥からは、獲物を逃さんとする猫のような鋭い目が覗いていた。
パァンと一際大きい発砲音と共に、競技は始まった。みんな100mずつ走ってバトンをパスする。
力強く地面を蹴るしなやかな脚、大きく前後に揺れる腕、真っ直ぐと前を見据える瞳とバトンを握る血管の浮き出た手。
緊張と興奮を帯びた声援と、バトンを受け渡す時の大きな掛け声。
その全てがスローモーションで僕の瞳に映し出される。
僕も、みんなの期待を背負っているのだ。そう実感する。
さっきまでうるさく鼓動していた心臓は、今は静かにその時を待っている。
バトンを受け取ると、僕は風を切るように走り抜ける。前の人との距離を縮めて、そして抜かす。ただ真っ直ぐに目の前だけを見る。
バトンを渡す相手は最初僕を励ましてくれた陸上部の男の子。
「はい!」
僕がバトンを差し出すと、その子は一瞬ニカッと笑ってそのままバトンを受け取り、馬のように駆け出して行く。
どんどん距離が縮まって、2年生にバトンが渡る頃には1位になっていた。
そこからは抜かされ、また抜かすという繰り返しだった。
最後のアンカーにバトンが渡る。
アンカーを務めるのは我らが団長だ。大股で素早く脚を動かし前に進んでいく。
どんどん1位の人との差を縮めていく。
最後のカーブに差し掛かった時、グンとスピードが上がり一気に前に踊り出る。
団長は高々に手を上げて飛び込むようにして、1番最初にゴールテープを切った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
閉会式、今年の体育祭優勝団が発表された。
発表担当の生徒が6位から順にマイクを通して得点と団を言っていく。
2位の団を発表した時、まだ僕の団は呼ばれていなかった。
ざわざわとする中、担当の生徒はマイクを使わず、大きな声で発表する。
「今年の優勝団は…3組です!!!!
おめでとう、ございまああす!!!」
その瞬間、僕たちの団は黄色い歓声に包まれる。パチパチと周りも拍手でお祝いしてくれている。
団長と副団長が前に出て賞状とトロフィーを貰う。
団長がマイクを受け取って、優勝した感想を述べる。
「俺、俺…今まで体育祭で優勝したことなくって、俺が団長の、高校生最後の体育祭で、最後の最後で優勝出来て、俺、本当に嬉しいです。先生、保護者の皆様、他の団の人たち、そして何より、俺について来てくれた3組の皆さん、本当に、本当に、ありがとうございましたぁ!!!」
ボロボロと泣きながらも感謝と喜びを伝える団長に、副団長は笑っていたが、その目にはうっすらと水の膜が張っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
全てが終わり、教室での帰りのSHLが終わると、頑張った生徒達にPTAからの差し入れということで、炭酸飲料が配られた。
その見覚えのある段ボールを運んできた人に、僕は思わず声を上げた。
「えっ、せんせっ…」
「烏坂、お前はこの段ボール知ってるよな」
そう、この段ボールは朝先生が空き教室に運んでいたやつだ。この段ボールだったのか。
各自段ボールの中から飲み物を取る形式だったが、せっかくだからと先生は手渡しで僕に飲み物を渡した。
「あ、ありがとうございます」
「お疲れ様、烏坂。これからある片付けも頑張れよ」
その一言で、僕の気力は一気に削がれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕方、ようやく片付けが終わった頃には、もうヘトヘトだった。
先生と一緒に片付けをしていたのだが、なんせ先生は大きいから力仕事を頼まれる。
テントの解体や使った道具の片付けやら。
それらを指定の場所に置いて来て欲しいと頼まれるのだが、先生はまだ場所を完全に把握していないので、その案内係として僕が一緒についていくことが多かった。
流石に今日は家事をできる体力は残っていない。
先生の車に乗り込むと、疲れがどっときて急に眠気が襲って来た。僕はその眠気と戦うこともせず、そのまま眠りについた。
最後は1番盛り上がる団対抗リレー。獲得できる得点も1番高い。各クラスから選りすぐりの選手がレーンに集結する。
僕は一年生だから最初の方に走る。全体を見渡すと、伊集院君がカメラを構えている。 メガネの奥からは、獲物を逃さんとする猫のような鋭い目が覗いていた。
パァンと一際大きい発砲音と共に、競技は始まった。みんな100mずつ走ってバトンをパスする。
力強く地面を蹴るしなやかな脚、大きく前後に揺れる腕、真っ直ぐと前を見据える瞳とバトンを握る血管の浮き出た手。
緊張と興奮を帯びた声援と、バトンを受け渡す時の大きな掛け声。
その全てがスローモーションで僕の瞳に映し出される。
僕も、みんなの期待を背負っているのだ。そう実感する。
さっきまでうるさく鼓動していた心臓は、今は静かにその時を待っている。
バトンを受け取ると、僕は風を切るように走り抜ける。前の人との距離を縮めて、そして抜かす。ただ真っ直ぐに目の前だけを見る。
バトンを渡す相手は最初僕を励ましてくれた陸上部の男の子。
「はい!」
僕がバトンを差し出すと、その子は一瞬ニカッと笑ってそのままバトンを受け取り、馬のように駆け出して行く。
どんどん距離が縮まって、2年生にバトンが渡る頃には1位になっていた。
そこからは抜かされ、また抜かすという繰り返しだった。
最後のアンカーにバトンが渡る。
アンカーを務めるのは我らが団長だ。大股で素早く脚を動かし前に進んでいく。
どんどん1位の人との差を縮めていく。
最後のカーブに差し掛かった時、グンとスピードが上がり一気に前に踊り出る。
団長は高々に手を上げて飛び込むようにして、1番最初にゴールテープを切った。
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閉会式、今年の体育祭優勝団が発表された。
発表担当の生徒が6位から順にマイクを通して得点と団を言っていく。
2位の団を発表した時、まだ僕の団は呼ばれていなかった。
ざわざわとする中、担当の生徒はマイクを使わず、大きな声で発表する。
「今年の優勝団は…3組です!!!!
おめでとう、ございまああす!!!」
その瞬間、僕たちの団は黄色い歓声に包まれる。パチパチと周りも拍手でお祝いしてくれている。
団長と副団長が前に出て賞状とトロフィーを貰う。
団長がマイクを受け取って、優勝した感想を述べる。
「俺、俺…今まで体育祭で優勝したことなくって、俺が団長の、高校生最後の体育祭で、最後の最後で優勝出来て、俺、本当に嬉しいです。先生、保護者の皆様、他の団の人たち、そして何より、俺について来てくれた3組の皆さん、本当に、本当に、ありがとうございましたぁ!!!」
ボロボロと泣きながらも感謝と喜びを伝える団長に、副団長は笑っていたが、その目にはうっすらと水の膜が張っていた。
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全てが終わり、教室での帰りのSHLが終わると、頑張った生徒達にPTAからの差し入れということで、炭酸飲料が配られた。
その見覚えのある段ボールを運んできた人に、僕は思わず声を上げた。
「えっ、せんせっ…」
「烏坂、お前はこの段ボール知ってるよな」
そう、この段ボールは朝先生が空き教室に運んでいたやつだ。この段ボールだったのか。
各自段ボールの中から飲み物を取る形式だったが、せっかくだからと先生は手渡しで僕に飲み物を渡した。
「あ、ありがとうございます」
「お疲れ様、烏坂。これからある片付けも頑張れよ」
その一言で、僕の気力は一気に削がれた。
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夕方、ようやく片付けが終わった頃には、もうヘトヘトだった。
先生と一緒に片付けをしていたのだが、なんせ先生は大きいから力仕事を頼まれる。
テントの解体や使った道具の片付けやら。
それらを指定の場所に置いて来て欲しいと頼まれるのだが、先生はまだ場所を完全に把握していないので、その案内係として僕が一緒についていくことが多かった。
流石に今日は家事をできる体力は残っていない。
先生の車に乗り込むと、疲れがどっときて急に眠気が襲って来た。僕はその眠気と戦うこともせず、そのまま眠りについた。
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