26 / 132
芽生え
誕生日
しおりを挟む
夏休みが終わり、秋が来た。
木の葉が枯れ始め、道に色とりどりの絨毯を作り始める。カラカラと乾いた音を立てて葉っぱが風に乗って移動する通学路を僕は歩いていく。
先生の家に来てもう随分と慣れた。
相変わらず、あの身体の熱さの原因は分からないけど。
ローファーから上履きに履き替えて、教室のドアを開けると、いつもは時間ギリギリに来る彩葉が居た。
「あれ彩葉。今日は早いね」
「うん、夕」
そう言って彩葉はポケットから何かを取り出す。僕が首を傾げると、パンと大きな音が鳴った。
「ハッピーバースデー、夕」
「……………」
「あ、あれ、夕。サプライズ、好きじゃなかった?もしかしてバレてた?それとも、日にち間違えた?」
動かず声も上げない僕を見た彩葉は、慌ててスマホを確認している。
「ひ、日にちは合ってる」
チラリとこちらを見る彩葉。僕は彩葉に飛びついた。
「わっ、ゆ、夕」
「彩葉!彩葉!!ほんとに、本当にありがとう!!僕、凄い嬉しい!!!」
人間、本当に驚くと声一つ出ないものだと身をもって実感した。
前に彩葉に誕生日を聞かれたことがあったが、まさか覚えていてくれたなんて。
施設では僕の誕生日なんて祝われなかった。 みんな僕に興味がなかったから。関わりたくなかったから。
この光景を見て、僕が今日誕生日だと知ったクラスメイトは、
「え!?今日なの!?言ってくれれば良いのに!何ももってきてない!明日でいい?」
「夕ちゃん、誕生日おめでとう!お菓子作ってきたんだ」
次々とみんながお祝いの言葉をかけてくれて、お菓子も大量にもらってしまった。
何だか自分だけ申し訳ないな、そう思っていると1人の女の子から声をかけられる。
「夕ちゃん、あんまり嬉しくない?」
「ち、違うの!その、自分の誕生日とか、あまり気にしたことなかったし、施設じゃ祝われなかったから」
実際、彩葉に祝われるまで僕は僕の誕生日を忘れていた。
「自分の誕生日だよ!?気にしないなんてことある!?」
なんかとても驚かれた。誕生日なんて、自分が生まれた日。ただそれだけのことだろう。
そう思っていたが、みんなは違うらしい。
「夕ちゃんは16年、現在進行形でこの世界を生き続けてる。こんな広い世界で、人1人いてもいなくても変わらないって思ってる人もいるだろうけど、私は違う。夕ちゃんがいるから今の生活があるし、思い出があるんだよ」
そう言われて、急に目の前が開けた気がした。
施設にいた頃の僕は、いる意味なんてないと思っていた。さっさとこの人生を終わらしたいと。
でも今は違う。
もっとみんなと過ごしたい、話したい。いろんなことを知ってみたい。
これが、生きたいってことなのだろうか。
僕はその子に、ありがとうと感謝を伝える。その子は当たり前のことを言っただけだと笑っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日は先生に早めに帰ってこいと言われた。スーパーに寄って、夕飯も買ってこなくていいと。
大量のお菓子をスクールバッグに詰めて、帰路に着く。
ただいまと玄関を開けると、先生が立っていた。
「先生、どうしたんですか?」
「誕生日、おめでとう。烏坂」
そう言って先生は僕に白の細長い箱を手渡す。オレンジ色のリボンが付いている、可愛らしい箱だ。
「せ、先生、これ、」
「誕生日プレゼントだ」
「い、良いんですか?貰っても」
「誕生日のお前が貰わないでどうする」
「あ、開けても?」
そう聞くと、先生はクッと顎を動かし、開けろ催促する。
リボンを丁寧に解いて箱を開ける。
そこには可愛らしい時計が入っていた。
「わあああ!!!可愛い!!」
「気に入ってくれたら嬉しいんだが」
「先生がくれるものなら何でも嬉しいです!」
時計を恐る恐る箱から出して手に取る。
可愛らしい見た目だが、すっきりとしたデザインだ。
革のベルトは濃いオレンジ色で、丸い時計の文字盤は、水彩のようなじんわりとした色合いで夕焼けのような模様をしている。
数字と針の色は金色で、文字盤とのコントラストが付いていて見やすい。
これならどんなファッションにも似合いそうだ。
「つ、付けてみても?」
「勿論だ」
するりと左の手首にベルトを当てて、穴に金具をはめ込んだ後、残った端のベルトを留める。
「わぁ…」
自分でもうっとりしてしまうほどその時計は綺麗だった。
「何で僕がオレンジ色が好きって知ってたんですか?」
「お前、何か選ぶときオレンジ色を選ぶからな」
よく見ている。確かに、僕の周りの小物はオレンジ色のものでいっぱいだ。
じんわりと心が暖かくなる。
彩葉も、先生も、僕のためにどうしようかと考えてくれたのだ。
今まで耐えていた涙がポロポロと零れ落ちる。
「か、烏坂、」
ギョッとした先生に、僕は飛びついてハグをする。
体格差のせいで、先生の背中にギリギリ手が回るくらいだが、それでも力一杯抱きしめた。
「嬉しいです、先生。ありがとう、ございます」
先生は何も言わず、僕の背中に手を回して僕を抱きしめた。
夕飯は先生が作ってくれて、ケーキまで用意されていた。こんなに幸せな誕生日は初めてだった。
木の葉が枯れ始め、道に色とりどりの絨毯を作り始める。カラカラと乾いた音を立てて葉っぱが風に乗って移動する通学路を僕は歩いていく。
先生の家に来てもう随分と慣れた。
相変わらず、あの身体の熱さの原因は分からないけど。
ローファーから上履きに履き替えて、教室のドアを開けると、いつもは時間ギリギリに来る彩葉が居た。
「あれ彩葉。今日は早いね」
「うん、夕」
そう言って彩葉はポケットから何かを取り出す。僕が首を傾げると、パンと大きな音が鳴った。
「ハッピーバースデー、夕」
「……………」
「あ、あれ、夕。サプライズ、好きじゃなかった?もしかしてバレてた?それとも、日にち間違えた?」
動かず声も上げない僕を見た彩葉は、慌ててスマホを確認している。
「ひ、日にちは合ってる」
チラリとこちらを見る彩葉。僕は彩葉に飛びついた。
「わっ、ゆ、夕」
「彩葉!彩葉!!ほんとに、本当にありがとう!!僕、凄い嬉しい!!!」
人間、本当に驚くと声一つ出ないものだと身をもって実感した。
前に彩葉に誕生日を聞かれたことがあったが、まさか覚えていてくれたなんて。
施設では僕の誕生日なんて祝われなかった。 みんな僕に興味がなかったから。関わりたくなかったから。
この光景を見て、僕が今日誕生日だと知ったクラスメイトは、
「え!?今日なの!?言ってくれれば良いのに!何ももってきてない!明日でいい?」
「夕ちゃん、誕生日おめでとう!お菓子作ってきたんだ」
次々とみんながお祝いの言葉をかけてくれて、お菓子も大量にもらってしまった。
何だか自分だけ申し訳ないな、そう思っていると1人の女の子から声をかけられる。
「夕ちゃん、あんまり嬉しくない?」
「ち、違うの!その、自分の誕生日とか、あまり気にしたことなかったし、施設じゃ祝われなかったから」
実際、彩葉に祝われるまで僕は僕の誕生日を忘れていた。
「自分の誕生日だよ!?気にしないなんてことある!?」
なんかとても驚かれた。誕生日なんて、自分が生まれた日。ただそれだけのことだろう。
そう思っていたが、みんなは違うらしい。
「夕ちゃんは16年、現在進行形でこの世界を生き続けてる。こんな広い世界で、人1人いてもいなくても変わらないって思ってる人もいるだろうけど、私は違う。夕ちゃんがいるから今の生活があるし、思い出があるんだよ」
そう言われて、急に目の前が開けた気がした。
施設にいた頃の僕は、いる意味なんてないと思っていた。さっさとこの人生を終わらしたいと。
でも今は違う。
もっとみんなと過ごしたい、話したい。いろんなことを知ってみたい。
これが、生きたいってことなのだろうか。
僕はその子に、ありがとうと感謝を伝える。その子は当たり前のことを言っただけだと笑っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日は先生に早めに帰ってこいと言われた。スーパーに寄って、夕飯も買ってこなくていいと。
大量のお菓子をスクールバッグに詰めて、帰路に着く。
ただいまと玄関を開けると、先生が立っていた。
「先生、どうしたんですか?」
「誕生日、おめでとう。烏坂」
そう言って先生は僕に白の細長い箱を手渡す。オレンジ色のリボンが付いている、可愛らしい箱だ。
「せ、先生、これ、」
「誕生日プレゼントだ」
「い、良いんですか?貰っても」
「誕生日のお前が貰わないでどうする」
「あ、開けても?」
そう聞くと、先生はクッと顎を動かし、開けろ催促する。
リボンを丁寧に解いて箱を開ける。
そこには可愛らしい時計が入っていた。
「わあああ!!!可愛い!!」
「気に入ってくれたら嬉しいんだが」
「先生がくれるものなら何でも嬉しいです!」
時計を恐る恐る箱から出して手に取る。
可愛らしい見た目だが、すっきりとしたデザインだ。
革のベルトは濃いオレンジ色で、丸い時計の文字盤は、水彩のようなじんわりとした色合いで夕焼けのような模様をしている。
数字と針の色は金色で、文字盤とのコントラストが付いていて見やすい。
これならどんなファッションにも似合いそうだ。
「つ、付けてみても?」
「勿論だ」
するりと左の手首にベルトを当てて、穴に金具をはめ込んだ後、残った端のベルトを留める。
「わぁ…」
自分でもうっとりしてしまうほどその時計は綺麗だった。
「何で僕がオレンジ色が好きって知ってたんですか?」
「お前、何か選ぶときオレンジ色を選ぶからな」
よく見ている。確かに、僕の周りの小物はオレンジ色のものでいっぱいだ。
じんわりと心が暖かくなる。
彩葉も、先生も、僕のためにどうしようかと考えてくれたのだ。
今まで耐えていた涙がポロポロと零れ落ちる。
「か、烏坂、」
ギョッとした先生に、僕は飛びついてハグをする。
体格差のせいで、先生の背中にギリギリ手が回るくらいだが、それでも力一杯抱きしめた。
「嬉しいです、先生。ありがとう、ございます」
先生は何も言わず、僕の背中に手を回して僕を抱きしめた。
夕飯は先生が作ってくれて、ケーキまで用意されていた。こんなに幸せな誕生日は初めてだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる