灰色に夕焼けを

柊 来飛

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芽生え

チョコの意味

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 新年になり、冬休みも明けた。
 先生からもらったマフラーと手袋をして、学校に向かう。
 
 教室はまだ暖房をつけたばかりらしく、あまり暖かくない。
 代わりに、ストーブはもうあったまっているらしく、周りにはみんなが集まり暖をとっていた。

 朝のSHLが始まると、先生は明けましておめでとうと言って、冬休み夫婦で旅行に行ったことを話した。
 新婚らしく、惚気とも言えるその話をみんな口元を緩ませて聞いていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 2月になり、寒さも本格的になって来た頃。女子に限らず男子にとっても一大イベントと呼べる、バレンタインデーが迫っていることをみんなが気にしていた。

「夕はお菓子作る?」

「料理は毎日作ってるけど、お菓子は作ったことないな」

「夕ちゃん、毎日ご飯作ってるんでしょ?料理絶対上手だし、お菓子作りも上手にできるよ!というか、夕ちゃんが作ったお菓子食べてみたいし!」

 複数人の女子とそんな会話を交わす。
 いやでも、僕がいつも作るのと、お菓子は全くの別物だ。僕が少し不安な顔をすると、よくお菓子を作るという女の子が声を上げた。

「ねぇ、私の家でみんなで作らない?お母さんがお料理教室やってて、その部屋使わせて貰えば大丈夫だよ!」

 とても良い提案だと思った。分からないことはこの子に聞けば良いし、あわよくばその子のお母さんにも料理のコツや美味しいレシピを教えて貰いたい。

「お母さんにね、夕ちゃんのこと話したら、会いたい会いたいって聞かなくて、どうかな?勿論、夕ちゃんだけじゃなくてみんなも!」

 そこからはトントン拍子で話が決まっていった。材料は各自で用意して、それを持ち寄って色んなものを作る。
 人によって作るものも量も違うが、色んなスイーツを食べたり出来るのは嬉しい。
 僕は帰りのスーパーで、安くなっているチョコや、飾り付けに使うお菓子を沢山買い込んだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 お菓子を作る当日、僕は彩葉と一緒にその子の家を訪ねた。
 案内された教室は、とても広くてキッチン用品も沢山あった。
 僕が目をキラキラさせていると、早速その子のお母さんが便利なキッチン用品を教えてくれて、キッチン周りの裏技なんかも教えてくれた。
 必死にメモした後、いよいよお菓子作りに取り掛かった。

 僕が作るのは簡単な生チョコ。
 これなら量産出来るし、飾り付けも簡単だ。

「みんなはバレンタイン、誰にあげるの?」

 そんなことを聞くクラスメイトのお母さん。一番先に口を開いたのは今日これを提案してくれた子だ。

「私は家族全員と、学校の友達にあげる友チョコでしょ、後彼氏!」

 彼氏持ちだったのか、確かに可愛いしお菓子作りも上手となればモテるだろう。
 話を聞いていくと、お菓子作りを始めたのは今の彼氏に告白するために始めたことらしい。
 可愛らしい経緯が発覚し、次に話す人のハードルがグンと上がった気がする。
 しかし、それに怯まないのが彩葉だ。

「私はここにいるみんなと、後は凛太郎」

 最後の言葉を聞いてみんなが驚きの声を上げる。彩葉、凛太郎って言った?凛太郎って、同じクラスの伊集院 凛太郎?
 僕と同じことを思っている人も多く、そのことを聞く。すると彩葉は淡々と話し始める。

「凛太郎、私の幼馴染なの。幼稚園からずっと一緒で、毎年あげてる」

 そういうことだったのか。そんなに長い付き合いなんて、初めて知った。僕はどちらとも関係を持っているが、そんなことどっちも言わなかったし。
 でも振り返ってみれば、伊集院君は他の人にはさん付けなのに、彩葉だけ呼び捨てだった気がする。

「え~、そんなに一緒にいるのに、好きになったりしないの~?」

 1人が彩葉に聞く。
 しかし彩葉は夢も希望もない事を言う。

「友達としては好き。凄く上位に来るくらい。でも、恋愛としてだとよく分からない。良い人だとは思うけど」

 あちゃーと、みんなが頭を抱える。彩葉は首を傾げた後、僕に話を振る。

「夕は誰にあげる?」

「ぼ、僕、は…。そうだな、彩葉と同じで、ここにいるみんなと、後は先生…」

 最後は凄くか細い声になってしまったが、みんな聞き逃さなかったらしい。
 きゃーとみんなから甘い声が出る中、僕は恥ずかしくなって下を向いていた。

 同じなはずだ。みんなにチョコをあげるのと、先生にチョコをあげるのも。
 きっとそうなのに、何かが引っ掛かる。
 何かが違う気がする。でも何が?みんなのチョコは日頃感謝を伝えるためのチョコだ。先生のだって、同じだ。
 なのに、何かが違う。ほんの少し違うようで、全く違う何か。

 僕は答えに辿り着けないまま、みんなとチョコを作った。
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