34 / 132
芽生え
海
しおりを挟む
桜を充分満喫した後、今度は海に向かった。
車を走らせること数時間、徐々に海が見えてきた。
「海だ!」
「そんな珍しいか?」
「初めて見ました!!」
「それほどでも無いだろ。学校の遠足とかで見なかったのか?」
「高校の遠足は海見えなかったんですよね。小学校と中学校の遠足とかは、行ったこと無いですし」
そう言うと、先生は目を伏せてからすまんと一言言った。別に謝ることじゃ無いのに。僕は別に気にしていないし。
車を止めると、そこには広大な海が広がっていた。
「凄ーい!!」
キャッキャッとはしゃぐ僕とは反対に、先生は冷静だ。
パシャパシャと勢いで何枚も写真を撮る。ぐるぐる回りながら撮っていたので、ほぼブレているが、僕の気持ちの高揚さを表しているようでこれはこれで良い。
「凄い!本当に海だ!海水って舐めたら本当にしょっぱいんですか?」
「まぁしょっぱいが、あまりおすすめしない」
気になったが、おすすめしないならやめておこう。ザザーンと波が僕の足元スレスレまで来る。替えの靴は持ってきてないから濡れないようにしなければ。
少し離れて、今度は落ち着いて写真を撮る。
日を海が反射して、キラキラと輝く。
「これ、夕日だったらもっと綺麗なんでしょうね」
「待ってみるか?」
「良いんですか?かなり時間ありますよ」
「近くにレストランもあるし、写真撮ってたらなんだかんだで時間潰れるだろう」
先生が待つと言ってくれたおかげで、いろんな写真が撮れそうだ。
僕は待っている間、海だけでなく近くのバス停や貝殻などを撮ってみた。
これは、俗に言う「エモい」というやつでは!?
よく見る構図ではあるが、結構良い感じだ。これも先生のお陰だ。後で何かお返しをしなければ。
お腹が空いてしまった為、近くのレストランで食事をすることにした。
海が近くということもあって、店内は貝殻を使った装飾品が数多く飾られている。
海風が店内を吹き抜けるように造られており、何処に座っても涼しい風が横を通り抜けていく。
僕はせっかくなので、おすすめメニューの冷製パスタとソーダを頼んだ。
先生は大盛りの海鮮丼とラーメン、追加で炒飯を頼んでいた。
兄妹ですか?と聞かれ、親戚だと答えておいた。全然違うけど。
料理は美味しくて、僕が頼んだソーダは海を意識した色合いでとても綺麗だった。
あまりにも僕が綺麗だ美味しいだ言って写真を撮る為、お店の人がサービスでもう一杯おまけしてくれた。
そんなこんなで日も暮れてきた。
人は殆どいなくなり、風だけが吹いている。
真っ赤な夕日が空をいろんな色に変えていく。
日は赤色なのに、空は青だったり紫、ピンクにオレンジなど様々な色が混ざり合っている。
カメラのレンズを通し景色を見ていたが、その景色をこの目で見たいと思いカメラを下げる。
目の前には綺麗な夕空が2つ、広がっていた。
夕空の景色、海に反射した景色。僕は何処か迷い込んでしまったようだ。
僕は写真のことなんて忘れて、その景色を見ていた。
「写真、良いのか?」
「と、撮ります」
パシャリと一枚。一枚だけ撮った。
今はできるだけ長く、この景色を自分の目で直接見ていたかった。
「綺麗です」
「そうだな」
「………僕、夕焼けが好きなんです」
「…綺麗だから?」
「綺麗です。それもありますけど、僕の、お母さんも好きだったし、」
ー「お母さんの、瞳の色だから」ー
先生にお母さんのことを話すのは初めてだった。ほんとは、話すつもりもなかった。
でも、僕のお母さんはこんな綺麗な瞳を持っていたんだと、少し自慢したくなった。
「………じゃあお前の瞳は、母親譲りなんだな」
「え?」
「ーお前の瞳も、夕焼け色だろ」
違う。僕は違う。僕の瞳はただのオレンジ色で、お母さんのような綺麗な夕焼け色じゃ無い。
お母さんの瞳の色は、僕よりももっと綺麗で、本当に夕焼けみたいに色んな色なあって。
「お前の瞳、色んな色があるんだよ。この夕焼けみたいに」
「……ほ、、本当、に?」
「なんで嘘言う必要があんだよ」
「……嬉しい、とても、嬉しいです」
大好きなお母さんの瞳と同じと言われ、これを喜ばずにいられるだろうか。
僕は無理だ。現に今、最高潮に喜んでいる。
僕はこの喜びを胸に抱えたまま、靴と靴下を脱ぎ捨てて、夕焼け色に染まる海にバシャバシャと入っていった。
「お、おい、烏坂ー」
「気持ちー!!」
ワンピースの裾をたくし上げて奥へ奥へと入っていく。
先生が警告の言葉を僕にかける。
「あまり奥に行くな!波に攫われるぞ!」
「ここで止まりますよー!」
そう言ってより近くで夕日を見る。下を見れば夕焼け色に染まった海。その中にいる自分。なんだか童話の登場人物になった気がして笑みが止まらない。
「フフフッあはははっ!先生!先生は来ないんですか?」
「…俺は…写真撮ったら行くから待ってろ」
先生がスマホをこちらに構えたので、僕はとびきりの笑顔をする。
ピースとかもしたかったけど、そうするとワンピースの裾が濡れてしまう。
写真を撮り終わった先生は、予告通り靴と靴下を脱いで海に入ってきた。
「急に走り出すから何かと思ったぜ」
「えへへ、ごめんなさい。でも、ほら見てください。すっごく綺麗です!」
「ああ、見てる」
僕は先生にポツリポツリと独り言のように言う。
「僕の名前の夕も、お母さんが付けてくれたんです。お母さんが大好きな夕焼けからとってきたんですよ」
「…そう、だったんだな」
「お母さんにも、見せてあげたかったです」
もう、二度と逢えないお母さん。
ねぇお母さん、お母さんも、もしかしたら、今この景色を見ていますか?
僕の呟きを聞いた先生は、僕と同じで夕日をただじっと見ているだけだった。
車を走らせること数時間、徐々に海が見えてきた。
「海だ!」
「そんな珍しいか?」
「初めて見ました!!」
「それほどでも無いだろ。学校の遠足とかで見なかったのか?」
「高校の遠足は海見えなかったんですよね。小学校と中学校の遠足とかは、行ったこと無いですし」
そう言うと、先生は目を伏せてからすまんと一言言った。別に謝ることじゃ無いのに。僕は別に気にしていないし。
車を止めると、そこには広大な海が広がっていた。
「凄ーい!!」
キャッキャッとはしゃぐ僕とは反対に、先生は冷静だ。
パシャパシャと勢いで何枚も写真を撮る。ぐるぐる回りながら撮っていたので、ほぼブレているが、僕の気持ちの高揚さを表しているようでこれはこれで良い。
「凄い!本当に海だ!海水って舐めたら本当にしょっぱいんですか?」
「まぁしょっぱいが、あまりおすすめしない」
気になったが、おすすめしないならやめておこう。ザザーンと波が僕の足元スレスレまで来る。替えの靴は持ってきてないから濡れないようにしなければ。
少し離れて、今度は落ち着いて写真を撮る。
日を海が反射して、キラキラと輝く。
「これ、夕日だったらもっと綺麗なんでしょうね」
「待ってみるか?」
「良いんですか?かなり時間ありますよ」
「近くにレストランもあるし、写真撮ってたらなんだかんだで時間潰れるだろう」
先生が待つと言ってくれたおかげで、いろんな写真が撮れそうだ。
僕は待っている間、海だけでなく近くのバス停や貝殻などを撮ってみた。
これは、俗に言う「エモい」というやつでは!?
よく見る構図ではあるが、結構良い感じだ。これも先生のお陰だ。後で何かお返しをしなければ。
お腹が空いてしまった為、近くのレストランで食事をすることにした。
海が近くということもあって、店内は貝殻を使った装飾品が数多く飾られている。
海風が店内を吹き抜けるように造られており、何処に座っても涼しい風が横を通り抜けていく。
僕はせっかくなので、おすすめメニューの冷製パスタとソーダを頼んだ。
先生は大盛りの海鮮丼とラーメン、追加で炒飯を頼んでいた。
兄妹ですか?と聞かれ、親戚だと答えておいた。全然違うけど。
料理は美味しくて、僕が頼んだソーダは海を意識した色合いでとても綺麗だった。
あまりにも僕が綺麗だ美味しいだ言って写真を撮る為、お店の人がサービスでもう一杯おまけしてくれた。
そんなこんなで日も暮れてきた。
人は殆どいなくなり、風だけが吹いている。
真っ赤な夕日が空をいろんな色に変えていく。
日は赤色なのに、空は青だったり紫、ピンクにオレンジなど様々な色が混ざり合っている。
カメラのレンズを通し景色を見ていたが、その景色をこの目で見たいと思いカメラを下げる。
目の前には綺麗な夕空が2つ、広がっていた。
夕空の景色、海に反射した景色。僕は何処か迷い込んでしまったようだ。
僕は写真のことなんて忘れて、その景色を見ていた。
「写真、良いのか?」
「と、撮ります」
パシャリと一枚。一枚だけ撮った。
今はできるだけ長く、この景色を自分の目で直接見ていたかった。
「綺麗です」
「そうだな」
「………僕、夕焼けが好きなんです」
「…綺麗だから?」
「綺麗です。それもありますけど、僕の、お母さんも好きだったし、」
ー「お母さんの、瞳の色だから」ー
先生にお母さんのことを話すのは初めてだった。ほんとは、話すつもりもなかった。
でも、僕のお母さんはこんな綺麗な瞳を持っていたんだと、少し自慢したくなった。
「………じゃあお前の瞳は、母親譲りなんだな」
「え?」
「ーお前の瞳も、夕焼け色だろ」
違う。僕は違う。僕の瞳はただのオレンジ色で、お母さんのような綺麗な夕焼け色じゃ無い。
お母さんの瞳の色は、僕よりももっと綺麗で、本当に夕焼けみたいに色んな色なあって。
「お前の瞳、色んな色があるんだよ。この夕焼けみたいに」
「……ほ、、本当、に?」
「なんで嘘言う必要があんだよ」
「……嬉しい、とても、嬉しいです」
大好きなお母さんの瞳と同じと言われ、これを喜ばずにいられるだろうか。
僕は無理だ。現に今、最高潮に喜んでいる。
僕はこの喜びを胸に抱えたまま、靴と靴下を脱ぎ捨てて、夕焼け色に染まる海にバシャバシャと入っていった。
「お、おい、烏坂ー」
「気持ちー!!」
ワンピースの裾をたくし上げて奥へ奥へと入っていく。
先生が警告の言葉を僕にかける。
「あまり奥に行くな!波に攫われるぞ!」
「ここで止まりますよー!」
そう言ってより近くで夕日を見る。下を見れば夕焼け色に染まった海。その中にいる自分。なんだか童話の登場人物になった気がして笑みが止まらない。
「フフフッあはははっ!先生!先生は来ないんですか?」
「…俺は…写真撮ったら行くから待ってろ」
先生がスマホをこちらに構えたので、僕はとびきりの笑顔をする。
ピースとかもしたかったけど、そうするとワンピースの裾が濡れてしまう。
写真を撮り終わった先生は、予告通り靴と靴下を脱いで海に入ってきた。
「急に走り出すから何かと思ったぜ」
「えへへ、ごめんなさい。でも、ほら見てください。すっごく綺麗です!」
「ああ、見てる」
僕は先生にポツリポツリと独り言のように言う。
「僕の名前の夕も、お母さんが付けてくれたんです。お母さんが大好きな夕焼けからとってきたんですよ」
「…そう、だったんだな」
「お母さんにも、見せてあげたかったです」
もう、二度と逢えないお母さん。
ねぇお母さん、お母さんも、もしかしたら、今この景色を見ていますか?
僕の呟きを聞いた先生は、僕と同じで夕日をただじっと見ているだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる