灰色に夕焼けを

柊 来飛

文字の大きさ
40 / 132
自覚

色々な感情

しおりを挟む
 そこから僕たちは警察署に行き、取り調べを受けた。
 本当は1人ずつなのだが、彩葉達が泣きながら僕から離れないので、3人一緒に話をした。
 こんなことがあった後だ。怖がらせないようにと、婦警さんが話を聞いてくれた。

 彩葉達の話はこうだ。
 まず、暴漢から逃げた後、警察に連絡を入れた。
 そのときに、仕事が早く終わった先生がたまたま通りかかり、彩葉が事情を話す。
 それを聞いた先生は、場所を聞いてすぐに僕の方へ向かった。
 彩葉達は到着した警察を率いて僕の方に来た。
 とのことだった。

 僕はされたことを話すと、彩葉達は自分たちだけごめんと謝ってきた。 
 彩葉達が先生と警察に言ってくれたから僕は今こうして助かっているのだ。何も謝ることはない。

 婦警さんもそう言ってくれて、僕たちは警察署を出た。
 別室で話していた先生も出てきて、あの人達はと聞くと、過去にも暴漢や万引きなど色々やっていたそうで、今回は逮捕らしい。

 彩葉達は家族が警察署まで迎えにきてくれるらしく、僕は先生と一緒に家に帰った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 家に帰ると、玄関でまた先生に抱きしめられる。

「せ、先生」

「本当に、何でお前はこんな輩に好かれるんだ…」

「な、何ででしょう、軽い女だと思われているとか、」

「そんなことない」

 先生は僕の髪をサラリとかき分ける。露わになった首を撫でて、低い声で言う。

「首、舐められたって言ったよな」

「え?ええ、まぁ…」

「チッ」

 舌打ちすると、先生は靴を脱いで上がる。

「風呂下ろすから入っちまえ。早く洗い流したいだろ」

「ありがとうございます」

 僕もローファーを脱いで上がり、自分の部屋に行く。



 ー「そいつを殺したら、無かったことになるか?」


 先生の独り言は、僕には聞こえなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 被害者の子達の話を聞いて、その子達を送り出す。
 友達はすごく泣いていたけれど、肝心の被害にあった子は肝が据わっていて受け答えもちゃんとしていた。
 今の子は強いのね。そう思っていたが、最後に3人を抱きしめてあげると、目が潤んでいた。年相応の反応に、ああ、まだこの子は子供なんだなと気付かされた。

「先輩達、聞いてくださいよ~」

 事情聴取が終わり、後輩の子が話しかけてくる。その話を私とベテランの先輩2人が聞く。

「いや俺、さっきあの人の話聞いたじゃないですか。あの背がめっちゃ高い人」

「ええ、いたわね。その人、あの子がお世話になってる家の人なんでしょ?」

「はい、そうなんですけど、そうじゃなくて!あの人、めっちゃ怖いんですよ」

「まぁ背が高いと威圧感があって怖いわよね」

「背も関係してるんですけど、俺が質問するじゃないですか。そうすると簡潔に答えてくれるんですけど、なんか殺気が凄くて」

「殺気?」

「あの暴漢、全部あの人がやったらしいです。あの人数をですよ?何か武器使ったかと思ったけど生身だったし」

「ほう、それで?」

 ベテランの先輩も気になるようだ。タバコ吸いながら先を促す。

「それで、あの人ナイフで暴漢の首切ったじゃないですか」

「ああ、あれか。少し切れてただけだが。綺麗な切り口だったよ。迷いがないね」

 暴漢達の事情聴取を担当したのはこのベテランの先輩だ。

「そう!それなんですよ!」

「それって?」

「なんか、わざとじゃなくても切ったりとかしたらまぁ少しぐらいは狼狽えるじゃないですか。あの人、全然狼狽えないんですよ。しかも、切ったのは明確に傷つける意思があったからで、正当防衛だって言って」

 正当防衛というのは、反撃をする意思ではなく、守るためにやったことが正当防衛とされる。
 この場合、どっちの意思もあってやってることになるが。

「それで、何でやったか聞いたんです。貴方なら、傷つけなくても拳で行けたでしょって」

「拳で行けたって…」

「そしたら、そこにいた暴漢全員殺す気だったって言って!被害者の女の子がやめてって言ったから辞めただけで、頼まれたら皆殺しだったて」

「あら、」

「あら、じゃなくないですか!?それで、俺流石に嘘だと思ったんですよ。でも、目が本当に本気ガチで…。俺、怖くなっちゃって」

「貴方、柔道部じゃなかった?」

「勝てません!あれは本当に!技とかは俺繰り出せますけど、相手があの人だったら棄権します。目で殺されます」

 そんなに言うほどなのか。私がうーんと、あまり見当が入っていない様子を見たベテラン先輩が口を開いた。

「まぁ君の言うこともわかるよ。暴漢達、あの人にかなり怯えていてね。このままじゃ本当に殺されるって。日常に戻ったらいつ殺されるからわかんないから、ムショ行きでも良いって。むしろそっちの方が良いとも言っていたよ」

「そんなにですか」

「あの人、何か暴漢達に伝えたいことは?って聞いたら、殺されないだけマシだと思えと伝えてくれって言われて、本当に怖かったぁ」

 机に突っ伏してその時を振り返る後輩。

「あの人、本当にあの子のこと大事に思っているんですね。自分の娘のように思ってるんでしょうか」

「いや、娘というより…あれは違うな。娘にあんな感情は向けないだろう」

「どんな感情ですか?」

 後輩が聞く。


 
  「色んな感情だよ。本当に色々な、ね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...