灰色に夕焼けを

柊 来飛

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止められない想い

罰ゲーム

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「じゃあ気をつけろよ」

「はい」

 風邪が治った僕は先生に見送られながら家を出る。 
 学校に行くと、みんなが声をかけてくれる。

「やっぱり、夕。あの日具合悪かったじゃん」

「だよねー。夕ちゃん本当に顔面蒼白って感じだったし」

「無理にでも保健室連れていくべきだったわ…」

 結局、僕はあの日から2日休んで学校に登校した。その間先生は仕事を休んで、ずっと僕のそばに居てくれた。
 それが嬉しくて、ずっと風邪で良いのにと、とても浅はかな考えをしたものだ。

 時間が来たので友達と別れて自分の席に着く。すると、机の中に何かが入っている。
 取り出すと、小さな紙切れに何かが書いてある。
 
〈○月⬜︎日の放課後、学校裏に来て下さい〉

 日付は今日を指していた。僕はその紙を黙って見つめる。そして、折りたたんで筆箱の中にしまう。
 
 今日の授業はあまり頭に入ってこなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 指定通りに学校裏に来ると、男の子が待っていた。確か、隣のクラスの男の子だ。クラスが一緒になったことはないが、時々話す子だ。

「あ、烏坂さん」

「は、はい」

「好きです、その…付き合って、下さい…」

 やはり告白だったか。僕が告白されるなんて夢にも思わなかった。


 しかし、何故だ?


 この子とは話したことはあるが連絡先を交換したりしていない。友人…と言い切れるかも分からない。知人くらいの関係だ。

 不自然じゃないように辺りを見ると、物陰に数人の影があった。キラリとレンズが反射する。スマホをこちらに向けているようだ。

 あー、これは……。

 手紙の文字もそうだった。殴り書きみたいで、丁寧じゃなかったし。
 告白の感じも、言わされているような感じで。本心じゃない。ぶっきらぼうで、目も合わせない。
 特に仲良くもない人に、こんな事をする。


      これは、罰ゲームか。


「えっと…。ごめんなさい」

「えっ?」

「その…。たまに話すけど、よく、貴方のこと知らないから…」

 そう言うと、彼はグイッと距離を詰めてくる。

「な、何で、俺の誘いを断るの!?」

「えっ、だっ、だから……」

「俺、結構女子からも人気だし、何で!?」

 あー。これ、あれか。この子が告白するば、相手が誰だろうとOKを貰えると思っていたのだ。
 そして、付き合って少ししたら、罰ゲームだったとバラす。そんな感じか。
 しかし、今僕に断られている。シナリオが崩れたのだ。

「いいの?俺の結構人気だし、断ったら後悔するよ?」

「いや、あの…」

 どうやって断ろうと、しどろもどろしていると、男の子はため息をつく。

「はあぁ。別に良いよ。罰ゲームだったし。断られるとは思ってなかったけど。つまんねーの」

 僕はそれにカチンと来た。何で僕がこんなこと言われなきゃ駄目なのだ。

「烏坂さん、なに?他に好きな人いんの?」

「えっ…」

「どうなの?じゃなきゃ断らなくね?」

「いや、…」

 どこまで無礼なのだろうか。人のプライバシーに土足でズケズケと入り込んできて。こんな人だとは知らなかったし、思いもしなかった。サッカー部でかっこいいと女子は言っていたし。

「烏坂さん施設育ちなんでしょ?そんなの俺の方から願い下げだし。チョロそうだからって烏坂さんに決めたけど、意外と図太いんだね」

 すごい言われる。別に昔から言われていたことだし気にしないが。

「用がないならもう帰ります」

「なに?逃げんの?そうやっていつもいつもやな事実から逃げてきたんだ。さすが、施設育ち」

 その言葉が僕の胸をチクリと刺す。逃げてきた。事実だからだ。何も見えない、聞こえないフリをしてきたからだ。

「はーあ。そんなんだからモテないんだよ。烏坂さん、彼氏いたこと無いでしょ。いつもクールぶってるしね」

 ああ。いつ終わるのだろうか。今帰ると確実に尾鰭がつく。いや、いつ帰っても同じか。しかし、今帰るのは得策では無い。逃げられたと思われる。

「顔とか身体とかは良いのに。でもそれだけだね。俺の告白断るし。あー、分かった分かった。もう良いよ」

 何が分かったのだろうか。何も知らないくせに。
 彼はそう言うと、荷物を持って去っていた。
 陰に隠れていた人たちも、コソコソと帰って行った。

 散々な日だったな。
 僕は気持ちが晴れないままスーパーに寄り、ご飯を作った。
 
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