灰色に夕焼けを

柊 来飛

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止められない想い

動画

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 学校に登校すると、何だかチラチラと見られる。何だろうか。
 教室に入ると、クラスに居た子達が此方に向かってくる。男女どちらとも居て、何だか神妙な顔つきだ。

「あ、あの、烏坂さんっ。その、荷物置いたらで良いからさ、ちょっとこっち来てくれない?」

 クラスの男子にそう言われる。僕は頷いて、荷物を置いてすぐにその子の元に向かった。その子の元には、今クラスにいる子たち全員が集まっている。

「そのさ、昨日告白された?」

「えっ、なっ、…何で知って…」

「やっぱり。ねぇ、この動画知ってる?」

 告白されたこと自体は別に隠す気も無いので認めるが、本当に何故知っているのだろう。男の子はスマホを操作して、僕にスマホ画面を見せる。そこには、昨日の罰ゲームでの告白場面が映っていた。
 しかし、映っていたのは前半だけで、後の罰ゲームだと言うことは有耶無耶にされていた。

「その…昨日この動画が回ってきてさ。いや、俺は保存はしたけど回してないよ?ただ、その……結構、この学年に回ってるらしくてさ」

「うん。私の方にも来たし、ここにいる人全員に来てる」

「そう…なんだ、」

 なんでこの動画を回したのだろうか。もしも僕が告白を受けたのなら、罰ゲームの告白を真に受ける奴とか、そういうので馬鹿に出来る。
 しかし、今回は僕は振ったのだ。振られた動画を出してどうするのだ?

「それで……。俺、この動画を直接撮ってた?奴に貰ったんだけど…。ここまでしか撮ってないけど、後で烏坂さんが酷い振り方してたって聞いて……」

「………あー、そういうこと…」

 ここで僕の嘘のことを流して、僕を孤立させようとしているのか。そもそも、僕は昔から孤立してたし、あの事件の噂によく根の葉もない尾鰭がついたものだ。

「でも、でもさ!烏坂さん、アイツと仲良かった…?アイツは本気で告白したって言ってたけどさ、なんか…。これ……、適当というか…、照れてる?感じでもないし…」

「私は信じないよ。夕ちゃんがそんなことするわけないでしょ」

「そうそう。だから今日烏坂さんが来る前に集まったみんなで聞こう思ってて。どんな感じだったの?いや、ごめん。プライバシーだよね。でも、これが嘘だったら言って欲しい」

 真っ直ぐな目で見られる。
 言ったところで、信じてくれるのだろうか。僕には証拠がない。それに、言われたことも事実だ。でも…。みんななら…。

「………振った、のは事実」

 僕が口を開くと、みんなはスマホの操作一つしない。

「でね、それ、罰ゲームだったらしくって。僕、それに気づいたから振ったんだ。いや、気づいてなくても、多分振ってたけど」

「罰ゲームだったの!?マジで!?」

「ほら言ったじゃん!きっと罰ゲームだよって!!夕ちゃんと特に仲良くないでしょアイツ!」

「えっと、それでねっ。その人凄い女子から人気でしょ?だから、断られるって思ってなかったらしくって。断ったら、色々言われちゃった」

「その……、な、何て言われたか、聞いても……?」

「施設育ちのくせにとか、チョロそうだから選んだのに、図太いとか。顔と体は良いって言われたんだけどね」

 僕は自嘲的な表情で言う。すると、男子たちは慌てて、女子たちは怒りの声を上げる。

「まっ、烏坂さん!!それあんま言わない方がいい!顔はともかく、身体が良いはやばい!!」

「信じらんない!!!何アイツ!?気にしなくて良いからね!?顔と身体は良いのにとか、付き合ったら無理やりヤる予定とかだったじゃないの!?断って正解だよそれ!」

「?、え?体、駄目なの?や、やるって?」

 僕が疑問の声を上げると、みんなは目を見合わせる。そして、気まずそうに口を開く。

「えー、あー、その……。身体が良いは…す、スタイル?そう、スタイルが良いってこと!!」

「ヤるはアレだよ、えっと……。ほら、男子、パス」

「いやそれは女子同士のお前が言えよ!俺ら嫌だよ!!別にここで言っても気にしないから!!教えてあげなよ!」

「スタイルが良い…。それ、僕結構言っちゃってるんだけど、駄目…なのか」

「あ、、いや、その…。ただのスタイルが良いとかじゃなくて、その……」

 僕がまだ疑問に思っていると、さっき話していた女の子が僕に耳打ちする。

「体が良いの体は〈身体〉が良いってことで、それは性的な今でいいってこと。だから、スタイルが良いも含まれるけど、ただ単にアイツは、夕ちゃんの身体がエッチだなって思ってる」

 僕はそれを聞いてゾワリと何かが背中を駆け上がる。無理やり、とさっき言っていた。それが本当なら、僕が前体験したようなことが起こる可能性があったのか?

「それで、、、ヤるって言うのは、性的な行為のことだよ。授業で習ったような」

 そこまで聞いて僕はようやく理解した。とても触れ辛いデリケートな話だ。そりゃみんな気まずい。

「ご、ごめん…。僕、本当に何も知らなくて。ちゃ、ちゃんと授業は聞いてるよ?その…避妊しなさいとか、ちゃんとした関係を持ってから、とか。でも、そういうのは、経験がなくて…」

「待って!言わないで良いよ!うん!」

 みんなから盛大なストップが入る。僕がアワアワしていると、パンと男子が手を叩く。

「とにかく!烏坂さんはただ振っただけで、酷いこと言ったのはアイツだった。おーけ?そうだよね、烏坂さん」

「う、うん…」

「わかった!何か聞かれたらそう答えてね、俺らもそうするから。後、言われたこと気にしなくて良いよ。少なくとも、俺らはそんなこと思ってないし」

「あ、ありがとう」

 このクラスの人はみんな優しい。僕は本当に人に恵まれている。僕を本当に知ってくれる人がいる。それは、とても心強かった。
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