灰色に夕焼けを

柊 来飛

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止められない想い

翻弄

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     どうしてこうなった


 俺は目の前の状況を一旦整理した。

 まず、烏坂がこの部屋に来て話をする。そして、烏坂に押し倒されて、俺が逆に押し倒した。疎いと言う話をして、そのあと戯れてたら度が過ぎて、休憩に飲んだやつが俺の酒で…。

「せん、せ…」

 酔ってるな、これ。

 度はそんなに高く無いやつだから大丈夫だろう。
 しかし、問題はここからだ。酔ってしまったら1人にして置けない。しかし、ここに2人きりも危ない。いや、俺が何もしなければいい話だが。

「せんせ、せーんせ、」

 烏坂は俺に甘えてくる。グッと腕を掴まれ、柔らかい体が当たる。

「烏坂、」

「せんせ」

 烏坂はフフッと笑う。いつもはその笑顔に癒されるが、今は違う。顔が少し赤くなっているせいで変な気分になる。

 これまでもそうだった。いくら言っても疎い烏坂は見当違いのことばっか言うし。俺が上に乗った時もそのまま反抗せず、逆に俺なら何でも許すと言ってくる。洋服だって注意しても聞かないし。
 男として見られてないのか?俺は。同居人ではあるが、俺も男だと知ってほしい。先が思いやられる。
 
「せんせ、なんか考え事してる」

「……ああ」

「なに、考えてたの?」

「…お前のことだ」

「僕?」

 砕けた口調で話す烏坂はいつもと違って新鮮だ。

「せんせ、先生はかっこいいね」

「そうか」

 今そういうことを言うのはやめてほしい。いつもならお世辞だと思えるが、今はお世辞では無いと分かってしまう。

「かっこいい先生。モテるでしょ。きっと大学生からも告白受けてるくせに」

「モテない」

 そうは言うが、大学生から告白を受けることはしょっちゅうある。勿論、全て断っているが。

「嘘だ。僕、知ってるよ。先生がこんなにかっこいいこと」

「だからなんだ」

「僕だって、嫉妬するんだよ」

「嫉妬?」

「僕も、先生がナンパされてたら嫌な気持ちになるし、暴漢に襲われたら怒る。罰ゲームの告白だって」

 俺はナンパされたことはあるが、適当に流してしまうし、暴漢なんて俺のこと狙わない。狙われてもすぐ殴り倒して終わりだ。罰ゲームで告白も気にしないし、頭に来たらすぐ殴ってる。

 しかし、烏坂が俺に嫉妬しているということは単純に嬉しい。俺は口角が上がるのを必死に抑える。

「先生だけじゃないんだよ、怒ってるの」

「そうだな」

「分かってる?」

 烏坂は自分から俺の顔に自分の顔を近づける。俺は烏坂を嗜めながら距離を取ろうとするが、俺を掴んで離さない。

「烏坂、頼むから離れてくれ」

「なんで…?僕のこと、嫌い…?」

「そう言うわけじゃ無いんだ、だから…」

 そんな顔で言われたら断りきれない。嫌いなわけない。だからなんだ、だから、離れてほしい。傷つけたくないんだ。
 その想い虚しく、烏坂はもっと距離を詰めてくる。烏坂の体が俺の体に当たる。こいつ、ちゃんと下着付けてるよな?胸元が緩くて視線をそちらに目線を落とせない。下もギリギリだし、本当にこれは問題だ。何としても服を買わせなくては。

「せんせ、なんでこっち向いてくれないの」

「ちゃんと服を着てくれたら向く」

「?、、服着てるよ?」

「胸元を締めてくれ…」

「胸元?」

 烏坂は自分の服を上にグイッと上げるが、そうすると腹の方がギリギリになってしまう。
 しかし、まだ腹ならいいだろう。腹出しコーデ?もある訳だし。
 実際、烏坂がやっていたら俺は外出許可を出す気は無いが。

「先生のえっち」

「それで構わん」

 今は何を言われようと無になるだけだ。

「ねぇ、せんせ。先生の元カノって、どんな人?」

「は?なんでそんなこと聞くんだよ」

「知りたいから。僕よりも頭良い?よね…。僕よりも、可愛いし、スタイルも良い…」

「そんなの関係ないだろ」

 ぶっちゃけ、烏坂の方が頭は良いだろう。身長は高い方で、スタイルは良いと言われていた気がする。ミスコン?に出てたとか聞いたが、俺は興味なかったからあんまり覚えていない。
 そもそも、烏坂もスタイルはかなりいい方だろう。サッカー部のやつからも顔と身体はいいと言われている。そのことを思い出したら殺意が湧いてきた。やっぱり殺そうか。

「せんせ?顔怖い」

「今日のサッカー部の奴のこと思い出してた。やっぱ殺すから許可くれ」

「だーめ!」

 烏坂は指でバッテンマークを作る。あー可愛い。それだけで殺意が消える。訳ではないが、少しアイツに感謝をする。許してないが。

「せんせ、ハグにはストレス軽減効果があるんだって」

「そうな…」

 言い終わる前に俺の首に腕が回される。俺の横にはまだ少し湿っている濡羽色の髪がある。

「せんせ。ごめんね、僕のせいで」

「違う、お前のせいじゃない」

「僕のせいだよ。でもね、先生のせいだよ」

「?」

「僕のせいだし、先生のせいなの。だから、お互い様」

「……そうだな」

「センセ、僕ね、先生のためなら何だって出来るんだ」

「そうか」

「うん。先生になら何されてもいいよ」

 烏坂は俺に抱きついまま、力を入れる。まるで自分のものだと言うように。



      「先生。僕の先生」

 
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