灰色に夕焼けを

柊 来飛

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止められない想い

ご褒美

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 助手席で寝てしまった烏坂を横目に車を走らせる。いつもならイライラする渋滞も、烏坂が隣にいるだけでもっと続いてほしいと願うほどだ。
 車が止まった時、烏坂の方に手を伸ばす。髪を避けてやると、その手に頭を擦り寄せる。どこまでも猫のような烏坂に笑ってしまう。

「今日はすまないな」

 聞こえていない謝罪を言う。俺も、どこまでもずるい奴だな。今日は長い時間烏坂を連れ回してしまった。しかし、良いものが見れた。

 烏坂は意外と揺れに弱いらしい。地震の時もかなりビクリとするし、ジェットコースターも足がガクガクになっていた。コーヒーカップは最初は楽しんでいたものの、俺が回し始めると悲鳴を上げていた。滅多に見せないその姿が面白くて可愛くて、意地悪で何回も回してしまった。
 俺は身長制限で乗れない物も多いのに、烏坂は俺と一緒が良いと言って俺でも乗れるものを選んだ。その健気さがとても愛おしくて、烏坂は気づいていないだろうが俺はずっと口角が上がっていた。

 烏坂とのイルミネーションは楽しかった。観覧車での烏坂も可愛かったが、イルミネーションではしゃいでいるのも可愛くて、俺はイルミネーションをそっちのけで烏坂ばかり見ていた気がする。
 烏坂が手袋を取って息を吹きかけている時、無性にその手を取りたいと思った。指先と鼻先が赤くなり、それでも周りの景色に目を輝かす。それは嬉しいことなのに、少しばかり嫌な気にもなる。その瞳に俺が映らないのが、こんなにも嫌だなんて。
 俺は烏坂の手を取って自分のポッケに突っ込んだ。そうすれば、何がなんでも触れ合っているから繋がりができる。なんて俺は心が狭いのだろうか。

 最後の大きなイルミネーション前、こちらに視線を送る人が多いのは分かっていた。俺は目立つし、何より関係性がわかりにくい。それだけならまだ良いのだ。今日の烏坂は口紅をつけている。そのせいで、いつもよりも大人っぽく仕上がっていて、男の目を引くのだ。それが気に入らない。
 俺は見せつけるように烏坂を抱きしめた。俺のものだと、静かに周りに言い聞かせるように。烏坂は最初は驚いていたものの、俺の背中に手を回して抱きしめてくれた。

 最後、自分がエスコートすると言って結局迷ってしまったのも仕方がない。イルミネーションのところはできるだけ場所を確保するために、奥の方にあるし入り組んでいる。マップを見ても中々分かりにくい。俺はそれを知っていて任せたが、案の定迷った烏坂が俺に助けを求める瞳に優越感が駆け上がった。ほんと、酷い大人だ。

「夕」

 名前を呼んでも返事はない。すっかり寝ているようだ。その赤い唇から静かに寝息が漏れる。胸元には俺があげたネックレスが。

「今日は、ありがとな」

 このチケットも、何回かやって手に入れた。いつもなら、こんなのには申し込みもしない。面倒くさいだけだし、行ったところで混んでいてつまらないだろう。
 でも、烏坂がいるから、何でも楽しく思える。お前なんだ、烏坂。お前がいないと、何も楽しくない、つまらないんだ。
 
「ずっと、いていいのにな」

 離れたくないのだ。烏坂がいなくなった生活なんて、どうすればいいのか。烏坂がいない生活なんて忘れてしまった。

「でも、お前は離れてくんだろ」

 問いかけるが、返事は無い。
 俺はハンドルを握りしめる。渋滞がもう無い道なのに、無駄に遠回りをしてゆっくりと帰る。この時間が、少しでも長く続いてほしくて。

 そんな願いも儚く、家に着いてしまった。俺は烏坂に話しかける。

「烏坂、着いたぞ」

「んん…」

 少し体を揺さぶると、烏坂は眉を顰めて声を上げる。これは、俺が運んだ方が早いな。
 俺は烏坂を抱き上げると、家の中に入る。鍵を開けるのも特に難しいことでは無い。
 しかし、いくら何でも軽すぎる。いつになったら体重が増えるんだ。ちゃんと食っているはずなのだが。

 烏坂のベッドに下ろすと、烏坂は舌足らずの声で言う。

「せんせ…、こっち…」

「ん?」

 俺が顔を近づけると、烏坂は俺の髪を撫でた後、そこにキスを落とす。

「ご褒美、」

「…ありがとう」

 寝ぼけているのだろう。烏坂は直ぐにまた寝息を立てる。

「はあー……」

 俺は額に手を当てる。

「やっば………」

 俺もダメだな、キスの一つでこんなに舞い上がって。
 俺は烏坂の唇をなぞる。このままでいいのだろうか、落とした方がいいか?
 そんなことを考えるが、俺には何もわからない。

「俺だけご褒美もらっちゃ、フェアじゃねぇもんな」

 俺は烏坂の頬にそっとキスを落とした。
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