灰色に夕焼けを

柊 来飛

文字の大きさ
92 / 132
止められない想い

似たもの同士

しおりを挟む
「んん…」

 重たい瞼を何とか上げると、そこは暗い。時計を見てみると、まだ日が上る前の時間だ。
 そうだ、僕寝てしまったんだ。と言うことは、また先生に運んでもらったのか。
 僕は服を着替えてベランダに出る。冬だしまだかなり寒い。ブランケットの裾を中心に寄せ、日が上るのを待つ。
 はぁと息を吐くと、目の前に白い息が現れる。小さい頃は、何で寒いと息が白くなるのかよくわかっていなかった。ただ、理由なんてどうでもよくて、それが楽しかった。
 下は靴下を履いてはいるが、スリッパだから寒い。

 家の中から見ればいいのだが、ガラス一枚が鬱陶しかった。朝日を何も遮るものが無い状態で見たい。
 その一心で待っていると、上からバサリと厚手の服を掛けられる。

「先生?」

「何で外いるんだ。風邪ひくぞ」

「朝日を見たくて」

「……そうか」

 先生も僕の隣に来て、一緒に待つ。先生は薄着だ。

「先生、一緒に入りましょ」

 僕はブランケットと先生に掛けられた厚手の服を先生の方に掛ける。先生も僕の方にもっと寄って、肩を寄せる。
 僕の息と先生の息が混ざって溶けていく。  

「烏坂」

「はい?」

 先生は場所を移動して、僕の背後に回る。そのまま僕を後ろから抱きしめる。

「この方があったかい」

 僕はあったかいだろうが、先生はあったかいのだろうか。先生は僕の手に指を絡める。

「ん、見えてきた」

 目の前が急に明るくなる。僕は目を細めながらも、目の前を見る。
 オレンジ色の光が僕の目を刺す。空も明るくなっていく。
 十分日が出た頃、先生が言う。
 
「寒い」

「そうですね、一旦戻りましょう」

 先生と僕は家の中に入る。先生は大きくあくびをした後、僕の頬に手を当てる。

「ひゃっ!」

「冷たいだろ」

「ずるい!」

 僕も先生に手を伸ばすが、頬に当てられない。逆に先生は僕の手を絡めとる。

「お前は俺が握ってたから冷たく無い」

「そ、そっか…」

 確かにさっきまで先生の大きな手に握られていたのだ。僕の手は冷たさを帯びていない。

「さて、飲み物でも飲むか」

「はい!」

 僕と先生は一緒に台所に行って飲み物を淹れる。先生は安定のブラックコーヒーで、僕はココアだ。
 暖かいマグカップを両手に抱え、僕は言う。

「そういえば、先生にご褒美あげてません」

「いや?、昨日貰ったが。…覚えてないか」

「えっ、あっ、すっ、すみません…。あの、僕先生に何あげました?」

「………そうだな、」

 先生はそこまで言うと、マグカップを机に置く。僕のマグカップも取り上げると、先生は余った手で僕の頭を撫でる。
 すると、僕の撫でた髪の上にキスをする。

「っ!?」

 僕はびっくりしてソファに倒れ込む。

「はは、やっぱりコップ俺が持って正解だったな」

「なっ、、なっ…」

「これが、俺が昨日お前から貰ったご褒美だ」

「へっ…?」

「嬉しかったぜ、ありがとう」

 先生はコーヒーを一気に飲み干して階段を上がっていってしまう。僕のコップはいつの間にか机の上に置かれている。
 僕はソファに倒れ込んだままだ。さっきまで冷たかった体が一気に熱を帯びる。
 
 僕、昨日の僕、なに、してるんだ。寝ぼけてた、んだよな。きっと。そうじゃ無いとあんな事しない。
 僕は先生にキスをされたところを撫でる。

「せ、先生からの、きす、」

 口に出してみて後悔する。破壊力がありすぎる。僕は一気にココアを飲み干す。しかし、甘いココアは僕の喉を渇かすだけだ。

「はぁあ………」

 先生からのキス。これだけで僕は空を飛べるだろう。これだけで僕はとてつもなく舞い上がっている。

「これはただのキス、これはただの、親愛の…」

 
   僕は長い間独り言を言っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる

えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。 一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。 しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。 皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...