灰色に夕焼けを

柊 来飛

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止められない想い

物騒な感性

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 僕が目を覚ますと、そこにはまだ寝息を立てている先生がいた。僕は力強く抱きしめられており、身動きが取れない。
 そう言えば、何時ごろ家を出ていくのだろうか。そんな考えを端に、僕は先生の頬に触れる。

「冷たい…」

 心配になって先生の胸に耳を当てる。静かに聞こえてくる心音に安心する。

「先生…」

 昨日、先生が言っていたこと。施設が僕を引き取る。そんなのごめんだ。何で、何で僕があそこに戻ると思っているのか。僕はもう自由なのだ。それを皆が教えてくれた。

 あそこに帰ったら僕は死んだも同然だ。また奴隷のようにこき使われて人生を閉じるんだ。でも、此処の家の場所は割られていると言った。先生は優しいから戻らなくて良いと言ってくれた。僕も戻らないと言った。
 しかし、僕が素直に要求を聞かないと先生に迷惑がかかるのは目に見えている。それでも、

「戻りたくない…戻りたくないよ、先生…」

 僕は本音を吐く。先生のためなのに、何で僕はこんなにワガママなんだ。先生のためなら何でも出来ると言ったのに。それは嘘ではないのに。

 あの施設を壊してと言ったら、先生は全て壊してくれるのだろうか。僕に酷いことをした人を全員殺してと言ったら、全員殺してくれるのだろうか。殺して、くれるだろうな。そして全て完璧に隠蔽して、元の生活に戻るんだ。
 だがそれを口に出すことは無い。それを口にしたが最後、全てが取り返しのつかない事になる。

「ねぇ先生、僕だって、先生のこと馬鹿にする人、殺して差し上げますよ」

 ならせめて、僕だってこのくらいの事はしてやろうじゃないか。全て殺せば、解決するのだから。隠蔽も完璧にやって、時効まで持っていこう。

「先生…」

「……随分と、物騒な言葉だな」

 先生の頬を撫でると、先生がパチリと目を覚ます。

「先生、またタヌキ寝入りですか」

「そうしないと、お前の本音を聞けないからな」

 バレているらしい。先生は僕の髪を避けて、僕の頬に手を当てる。

「戻らなくて良い、あんな場所に。もし戻るつもりなら、俺はあそこを全部壊してやる」

「やっぱり、全部壊すんですね」

「全員殺して、そこで血濡れのパーティーでも開こうか」

「さっき僕のこと物騒って言いましたけど、先生の方が何倍も物騒ですね」

「今に始まったことじゃない」

 先生は開き直る。僕は先生の手を取る。

「先生の手が血濡れても、僕は手を取って先生とダンスの一つや二つ、踊って見せます」

「エスコートは任せろ」


 何だか僕も先生の物騒な感性に感化されてきた気がする。でもそれで良い。先生と一緒にいられるなら。
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