灰色に夕焼けを

柊 来飛

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止められない想い

初詣

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「大っきい…」

 今僕は有名な神社に来ている。お賽銭にお金を入れて、願い事をする。

 受験が受かりますように。
 先生がずっと幸せでありますように。

 先生と一緒にいたいと言う願いはやめた。それは、叶わないことだから。

 お参りが終わったらおみくじを引いた。

「先生!大吉です!」

「ん、俺もだ」  

 パッとおみくじを見せ合う。同じ大吉だが、書いてあることが少し違う。

 学問は安心して勉強せよと書いてある。これは受験生の僕にとってとてもありがたい。
 スッと恋愛の方に目を通してみる。
 そこには、難あるが実と書いてあった。
 また嘘を。叶うわけないじゃないか。それとも、先生ではない人と結ばれるのか。

 たかがおみくじだ。僕は深く考えないようにしておみくじを括った。

 階段を降りようとしたとき、僕は人とぶつかる。その一瞬で先生と距離を離される。

「わっ、」

 僕は急いで先生の方に戻ろうとするが、人が多くて流されるばかりだ。スマホもあるしと僕が半分諦めかけていたとき、腕を力強く引かれる。

「っ、」

「烏坂っ」

 その勢いで僕は先生の胸に飛び込む。先生が気づいてこちらまで来てくれたようだ。

「すまん、気づかなくて」

「いえ、来てくれてありがとうございます」

 僕は先生にお礼を言う。先生は僕の手を握る。

「離れないように」

「はい」

 僕と先生は手を繋いで入り口まで行く。時折人とぶつかるが、先ほどのように離れてしまう事はない。先生が指を絡めて力強く握っているからか、握っている手がとても温かい。

「せっかくだし、どこか寄っていくか」

 先生の提案に賛成し、近くの喫茶店に入る。注文のとき、店員さんに聞かれる。

「お客様は学生様ですか?」

「は、はい」

「何か学生だと確認できるものがあればご提示願いたいのですが…」

「えっと…」

 僕は財布の中に入っていた学生書を取り出す。それをみた店員さんは何やらポチポチと手元の機械を弄る。

「ありがとうございます。ただいま、受験シーズン応援キャンペーンで学生様は割引対象となっております。それでは、ごゆっくり」

 店員さんが去った後、先生は笑いながら言う。

「良かったな。沢山頼めるぞ」

「えへへ」

 僕は運が良いな、さっき大吉だったし。あのおみくじの結果にいとも簡単に翻弄されてしまう。僕は先に来た飲み物を飲みながら先生に質問する。

「先生は何を願ったんですか?」

「お前の受験が成功するように」

「他は?」

「他か…。後は、まぁこれから幸せに暮らせるようにだな」

 最も先生らしい回答だ。僕のことを願ってくれたことが嬉しくて自然と笑顔になる。

「烏坂も受験のこと願ったんだろ。他は何願ったんだ?」

「僕も、これからずっと幸せでありますようにって願いました」

 僕は笑って答える。幸せにということは伏せる。それを言ったら、何で自分の幸せを願わないんだと言われてしまいそうで。
 
 来た料理を食べていると、頼んだ記憶のないパフェが運ばれてくる。

「あの、」

「あちらのお客様からです」

 先生と一緒に店員さんが手を向けた方向を向くと、そこには鬼神さんと蝶先生がいた。

「えっ!?」

 僕たちの席は4人席だったため、2人と合席する事にした。僕の隣に先生が来て、目の前に2人が座る。

「いやー、まさかとは思ったけどねー」

「夕ちゃん、受験生だもんね。保健室もそのストレスとかで体調不良者が多くてさ。夕ちゃんも無理しないでね」

「はい!」

 鬼神さんと蝶先生は笑いながら話す。僕が貰ったパフェを食べていると、蝶先生がカメラを取り出す。

「夕ちゃん、はいチーズ」

「んっ!」

 急なことだったため、僕は不恰好なピースをして口いっぱいにパフェを頬張っている写真になってしまった。

「きゃー!可愛いー!」

 蝶先生は画面を見てにっこりとしている。先生は何だかそれが気に入らないようだ。

「やめてよ鷹翔。後でちゃんと送るよ」

「何も言ってない」

「あの、パフェありがとうございます」

「ふふっ、気にしないで。良かった喜んでもらえて。あっあと、その口紅可愛いよ!すっごい似合ってる!」

「ありがとうございます!先生から誕生日プレゼントで貰ったんです」

 僕は嬉しくて答えると、2人は驚いた顔をして笑い合う。

「ははっ!すっごい情熱的なプレゼントじゃん!」

「ふふっ、鷹翔が口紅ねぇ…。かなりロマンスだね」

 情熱的やロマンス。そんな言葉をかけられる。確かに、口紅と言ったらその言葉が似合う気がする。先生はどちらかと言えば冷めている方だから2人とも意外だったのだろう。

 僕のパフェも食べ終わり、帰り支度をする。

「今日はありがとう。俺が全部払うから先出ててくれ」

「おっ、男前だねー。じゃあ夕ちゃん、行こっか」

 鬼神さんと蝶先生と一緒に外に出ると、蝶先生から話しかけられる。

「受験頑張ってね。応援してる」

「はい!ありがとうございます」

 蝶先生に頭を撫でられる。僕はそれに身を任せていると、肩を抱かれる。

「おい」

「わぁ鷹翔。違うってば、ごめんごめん。夕ちゃん可愛いからつい撫でたくなっちゃうの」

 蝶先生は口を尖らせて言う。
 最後に別れの挨拶をすると、鬼神さんと一緒に行ってしまった。2人は自然な手つきで手を繋ぐ。

「凄いなぁ…」

 僕が感心していると、僕の手を取られる。

「ほら、これで良いだろ」

「っ!せ、先生、」

 先生もナチュラルにこういうことをしてしまうのだ。
 僕は大人達の余裕に感心を抱きながら先生と一緒に帰った。
 
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