灰色に夕焼けを

柊 来飛

文字の大きさ
96 / 132
止められない想い

写真

しおりを挟む
 有名な神社に足を運んでお参りをする。

 烏坂の受験がうまくいきますように。
 これからも、烏坂が幸せで暮らせますように。

 ここまで願って思う。この願いは今烏坂は幸せという前提ではないか?まぁ、前に幸せだと聞いたから細かいことはいいか。
 チラリと隣を見ると、烏坂は目を瞑って願い事をしている。
 
 神なんて信じてない。ならば、何を願ってもいいだろう。もしも、願えるなら、


 これからもずっと、烏坂と一緒にいられますように


 この願いを心の中で唱える。どうせ叶わないと笑われるだろうか。
 俺の願いは烏坂の幸せだ。烏坂が幸せじゃなければ意味が無い。それは本心だ。

 ただ、烏坂を手放すつもりはない。

 烏坂に幸せになって欲しい。ただし、俺と一緒に。
 そんな我儘な願いだ。

 帰ろうとしたとき、ふと隣を見ると烏坂がいない。急いで周りを見渡すと、人混みに流されている烏坂がいた。
 俺は自分の体格を生かして一気に人混みをの中を突っ切る。腕を伸ばし、烏坂を勢いよく引いて自分の腕の中に収める。

 はぐれないようにと手を繋ぐと、烏坂は薄く笑う。ふんわりと弧を描いたルージュの唇がやけに瞳に残った。

 喫茶店に入ると、すぐさま願い事を聞かれる。俺は上手い具合に願い事を切り取ってそこだけを話す。嘘では無いが、真実でも無い。烏坂も同じような願い事だった。

 料理を食べていると、頼んだ覚えのないパフェが運ばれてきた。何かと問えば、斜め後ろの席に視線を誘導させる。
 そこには御代一とレイがいた。

 せっかくなので2人と相席する。隣で大きなパフェに目を輝かせて食べる烏坂を見ていると、何やら前から生温かい目を送られる。俺が睨み返すと、2人はわざとらしく肩を竦ませた。
 レイがパシャリと写真を撮る。リスのように頬を膨らませ、口元にクリームを付けながらもきちんとピースをする姿はとても愛らしくて。
 しかし、その姿をカメラに納めているレイが気に入らない。それが通じたのか、レイは後でちゃんと送ると言う。本当だろうか。その写真と交換で何かねだられそうだが、レイはそんな奴じゃ無いからちゃんと送ってくれるだろう。

 烏坂がお礼を言うと、レイは表情筋をこれでもかと緩ませて話す。昔の感情の起伏が無いレイとは大違いだ。
 レイは妹属性だ。一方、烏坂は姉属性。互いが互いに、レイは妹が出来たみたいで、烏坂は姉ができたみたいで、新鮮で嬉しいのだろう。

 レイが烏坂の口紅を褒める。烏坂は俺からのプレゼントだと言うと、2人は驚いた顔でこちらを見る。俺はシラを切るが、それも2人にはお見通しのようでニヤニヤと口元を上げる。

「ははっ!すっごい情熱的なプレゼントじゃん!」

「ふふっ、鷹翔が口紅ねぇ…。かなりロマンスだね」

 2人が言うと、烏坂は素直に納得したような顔になる。
 烏坂は疎い。こういうことに。それを分かっていて俺はこのようなことをしているのだ。本当にずるい奴だ、俺は。

 俺は会計を済ませて外に出ると、レイが烏坂の頭を撫でている。烏坂も満更では無い様子で身を任せている。
 俺は思わず顔を顰める。不機嫌を隠さずに烏坂の肩を抱くと、レイは全てを察したように離れる。

「わぁ鷹翔。違うってば、ごめんごめん。夕ちゃん可愛いからつい撫でたくなっちゃうの」

 その気持ちはわかる。ただ、誰にでもそうだと俺が気に入らない。
 レイは最後に別れの言葉を言って御代一の方に行く。御代一は待ってましたと言わんばかりに自然な仕草でレイの手を取り指を絡める。

「凄いなぁ…」

 烏坂は声を漏らす。烏坂は結構奥手だ。いちいち理由を見つけないと行動出来ないし、甘えられない。そんなの必要ないのに。

「ほら、これで良いだろ」

 俺が手を握ると、烏坂は顔を少し赤くして俺を睨む。簡単にこういうことをするなということだろう。お前だけだよ、烏坂。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 家に帰ると、レイから一件の通知が入っていた。
 開くとそれは先ほど撮った写真が一枚。
 それを見て俺は自然と笑顔になる。
 隣で見るのも良いが、やはり正面だと表情が分かりやすい。

「先生?」

 烏坂が丁度ひょこりと顔を出す。俺はスマホを閉じて烏坂の方に向かう。
 烏坂は俺を上目遣いで見つめる。この時だけこの無駄にでかい体に感謝をする。その顔、俺だけにしてほしい。そんなこと言っても叶わないが。

 俺は烏坂のネックレスを手に取る。

「付けて、くれてるんだな。口紅も」

「先生からせっかく貰ったんです。勿論ですよ」

 烏坂はフフンと胸を張る。俺も今烏坂から貰ったピアスとネックレスをつけている。思えば、普段つけて行かない仕事場にも付けて行って四六時中身につけている気がする。生徒からも珍しいと言われたな。
 
 そんなこと考える。こんな幸せな時間がずっと続けば良いのにな。

 
 
   そんな願いは儚くも無情に壊れる。
   やはり、神はいないらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

敏腕SEの優しすぎる独占愛

春咲さゆ
恋愛
仕事も恋愛も、兎に角どん底の毎日だった。 あの日、あの雨の夜、貴方に出逢うまでは。 「終わらせてくれたら良かったのに」 人生のどん底にいた、26歳OL。 木崎 茉莉 ~kisaki matsuri~ × 「泣いたらいいよ。傍にいるから」 雨の日に現れた、30歳システムエンジニア。 藤堂 柊真 ~Todo Syuma~ 雨の夜の出会いがもたらした 最高の溺愛ストーリー。

処理中です...