灰色に夕焼けを

柊 来飛

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2人を引き裂く手

出会ってしまう

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 冬休みも終わり、今日は始業式だ。
 校長先生の話はやはり受験。みんな分かっているんだから少し放っておいてほしい。
 しかし、やはり心配なのだろう。

 始業式が終わって僕はすぐに帰る支度をする。こういう時間がある日はチャンスだ。一気に掃除を終わらせて、勉強に時間を充てることができる。

 僕が通学路を歩いていると、そこに見覚えのある顔を見る。
 
 その瞬間、僕の息が止まる。

 全身から冷や汗が出て、上手く呼吸ができなくなる。凍りついてしまった足を一生懸命動かして元来た道を戻る。
 すると、彩葉達に会う。

「どうしたの、夕」

 彩葉達は僕に駆け寄る。明らかに顔色の悪い僕を見て心配する。

「もしかしてまた風邪?」

「ち、違う、ご、ごめん、」

 僕が謝ると、みんなはとりあえずと言って学校の図書室に向かう。

「夕、大丈夫?」

「ごめん、みんな」

「謝らなくて良いよ、それで、どうしたの?」

 言って良いのだろうか。みんなには、関係ない。僕の話だ。話したら、きっと気分を害してしまう。

「話したくなかったら話さなくて良いよ」

 彩葉が言う。僕は少し呼吸を整えた後、話を切り出す。

「通学路に、いて、」

「いる?何が?」

「前の、施設の職員が、」

 そこまで言うと、皆が張り詰めた表情になる。細かくは話していないが、僕の施設でのことはみんな勘付いている。

「先生がね、言ってたの。施設から連絡があって、それで、僕をあの施設で雇ってやるって。僕は、もう、戻りたくないのに、」

 言っている中でもどんどん呼吸が乱れていく。目の前がぐらぐらしてきて吐き気がする。

「夕ちゃん、」

「ごめん、ごめんなさい、みんなは、関係ないのに」

 僕は謝る。謝ることしか出来ないから。

「ごめんなさい、ごめん、ごめんなさい、」

「烏坂!」

 男の子が僕の肩を揺する。僕がオロオロと視線を上げると、眉を下げて心配そうにしている。

「その、今から烏坂の先生に連絡とか出来ねぇのか?大学にとか、先生個人の連絡先とか」

「でも、今先生仕事中で、」

「そんなこと言ってる場合かよ、きっと先生も心配してるって」

「そうだよ夕ちゃん」

「そう、なのかな、」

「そうに決まってるだろ。今すぐに連絡しろ。なんか言われたら、俺らが連絡しろって急かしたって言えば大丈夫だって」

 僕はおずおずとスマホを開いて先生の連絡先にメールを入れる。今は友達と一緒に学校の図書室にいると補足をして。

 メールを送り終わり、僕はそっと画面を閉じる。まだ震えが止まらない。彩葉がホットココアを買ってきてくれて、僕はそれを飲む。
 数分後、ピロンと通知が来る。見てみると、先生から連絡が入っていた。

〈すぐ迎えに行くから校門付近で待っててくれ〉

「ほら、すぐ来てくれるって」

「先生の仕事、中断させちゃった、」

「だーかーらー!今はそんなんじゃないって!ほら行くぞ!」

 僕はみんなに手を引かれて外に出る。昇降口まで来たところで、伊集院君が口を開く。

「もしかしたら学校前で待ち伏せされてるかもしれない。最初に僕たちが見てくるから待ってて。烏坂さん、その人の特徴とかわかる?」

「えっと、髪は茶髪の短髪で、服はグレーのパーカー。あと、黒のズボンと運動靴…」

 僕はあの一瞬で目に焼きついた姿を言う。伊集院と数人の男子は靴に履き替えて外に出る。
 
 しばらくすると、彩葉の携帯が鳴る。電話に出ると、彩葉がスピーカーにする。

「ビンゴだよ、さっき言われた通りの特徴のやつに烏坂ってやつ知らないか聞かれた。とりあえず、シラ切って今日は始業式でもう帰ったんじゃないかって言っておいたけど、」

 一緒に行った1人の男子が苦々しく言う。

「ここで烏坂の先生が来るまで待ってようか?俺らわかるし。車ならその特徴言ってよ」

 みんな協力してくれるらしい。多分車だろうから先生の車の特徴を言う。
 昇降口で待っていること数十分。彩葉の携帯がまた鳴る。

「夕、来たって。辺りにその人も居ないから早く」

 僕は走って校門に向かうと、先生が窓から顔を覗かせる。

「烏坂っ」

「せっせんせっ、」

「怖かったよな、もう大丈夫だ。みんなもありがとう」

「いえ、夕ちゃん、気をつけてね」

「何かあったらすぐ言えよ!」

「うん、ありがとうみんな」

 僕が助手席に乗り込むと、先生は車を出発させる。ミラーには手を振っているみんなが映っていた。

 
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