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2人を引き裂く手
渡さない
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先生と合流出来たのはいいが、これからどうしようか。車は車庫に入れなければいけないし、前にはあの人がいるだろう。
「烏坂、家の裏口知ってるよな?そこから入ってくれ」
「せ、先生は?」
「俺は車を置くから前から行く。そこであいつと話してくるからその隙に入れ」
「でも、」
「お前をあいつの前に出すわけには行かない。絶対戻ってくるから」
先生は僕の頭を撫でる。僕は唇を噛み締めて先生の手を取る。
「絶対ですよ」
「約束する」
先生はそれだけ言うと、僕を下ろして前の駐車場に向かう。僕は鍵を使って家の中に入る。カーテンの隙間から少し様子が見えるため、覗いてみると先生があの人と話している。
何を話しているかわからないが、相手はかなり熱くなっている。一方、先生はずっと淡々に話すだけだ。
少しの間話したあと、その人は帰っていく。僕はすぐに玄関に向かう。
ガチャッとドアが開くと同時に僕は先生の胸に飛び込む。
「先生!」
「烏坂、」
「あの人、なんて言ってました?」
「………また来る、だとよ。大学受験するから退けと言ったら、余計に怒ってな。また近いうち会うだろうから、不便だが裏口使ってくれ」
「分かりました。先生も気をつけてくださいね」
「ああ」
今日のところは帰ったらしいから午後の買い物も大丈夫だろう。僕は最初自分の部屋で勉強をしていたが、なんとも言えない不安に襲われてリビングで勉強する。
「烏坂」
「先生」
「すまないな。怖い思いをさせて」
「違います!先生のせいじゃない、あいつが、アイツのせいで、」
僕は前のめりになって話す。あの人は僕の担当だった施設の職員だ。あの人が僕に世間とズレた認識を植えつけた張本人と言ってもいいだろう。
「アイツ、俺の大学の同期なんだよ」
「そうなんですね」
「アイツからお前の引き取りの話も来てな。ああ、仲は良くないぞ。大学で少し話したくらいだ」
先生があんな人と仲良くするわけがない。先生はあの人とは違う。ただ、僕を先生に預けようとしたことを今は感謝している。まぁ、僕を施設に置いておきたくなかっただけだけど。
「サッカー部のやつと言いアイツと言い。お前の周りの男は執着心が凄いな」
「一周回って愛されてるんでしょうか…」
それを言うと、先生は薄く笑う。しかし、その瞳には光が無い。その顔は見覚えがある。
「先生、また殺そうかと考えました?」
「ん、よく分かったな」
「分かりたくなかった…」
僕はため息をつく。先生は僕のそばにくると、僕の胸の中心に指を置く。そこは、僕の心臓の上だ。
「絶対渡さない。サッカー部のやつにも、アイツにも。誰にも」
先生はそう宣言すると、僕の頭を撫でてから行ってしまう。
「先生…?」
先生の目には見たことがない感情が渦巻いていた。
「烏坂、家の裏口知ってるよな?そこから入ってくれ」
「せ、先生は?」
「俺は車を置くから前から行く。そこであいつと話してくるからその隙に入れ」
「でも、」
「お前をあいつの前に出すわけには行かない。絶対戻ってくるから」
先生は僕の頭を撫でる。僕は唇を噛み締めて先生の手を取る。
「絶対ですよ」
「約束する」
先生はそれだけ言うと、僕を下ろして前の駐車場に向かう。僕は鍵を使って家の中に入る。カーテンの隙間から少し様子が見えるため、覗いてみると先生があの人と話している。
何を話しているかわからないが、相手はかなり熱くなっている。一方、先生はずっと淡々に話すだけだ。
少しの間話したあと、その人は帰っていく。僕はすぐに玄関に向かう。
ガチャッとドアが開くと同時に僕は先生の胸に飛び込む。
「先生!」
「烏坂、」
「あの人、なんて言ってました?」
「………また来る、だとよ。大学受験するから退けと言ったら、余計に怒ってな。また近いうち会うだろうから、不便だが裏口使ってくれ」
「分かりました。先生も気をつけてくださいね」
「ああ」
今日のところは帰ったらしいから午後の買い物も大丈夫だろう。僕は最初自分の部屋で勉強をしていたが、なんとも言えない不安に襲われてリビングで勉強する。
「烏坂」
「先生」
「すまないな。怖い思いをさせて」
「違います!先生のせいじゃない、あいつが、アイツのせいで、」
僕は前のめりになって話す。あの人は僕の担当だった施設の職員だ。あの人が僕に世間とズレた認識を植えつけた張本人と言ってもいいだろう。
「アイツ、俺の大学の同期なんだよ」
「そうなんですね」
「アイツからお前の引き取りの話も来てな。ああ、仲は良くないぞ。大学で少し話したくらいだ」
先生があんな人と仲良くするわけがない。先生はあの人とは違う。ただ、僕を先生に預けようとしたことを今は感謝している。まぁ、僕を施設に置いておきたくなかっただけだけど。
「サッカー部のやつと言いアイツと言い。お前の周りの男は執着心が凄いな」
「一周回って愛されてるんでしょうか…」
それを言うと、先生は薄く笑う。しかし、その瞳には光が無い。その顔は見覚えがある。
「先生、また殺そうかと考えました?」
「ん、よく分かったな」
「分かりたくなかった…」
僕はため息をつく。先生は僕のそばにくると、僕の胸の中心に指を置く。そこは、僕の心臓の上だ。
「絶対渡さない。サッカー部のやつにも、アイツにも。誰にも」
先生はそう宣言すると、僕の頭を撫でてから行ってしまう。
「先生…?」
先生の目には見たことがない感情が渦巻いていた。
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