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2人を引き裂く手
トラウマ
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そこから数日は安寧だった。姿を見ることもなく、僕はいつも通り過ごしていた。
勉強も順調で、学校の先生からも褒めてもらえた。
だから、気を抜いていたのだ。
僕はいつも通り夕飯の食材を買って裏口から入ろうとする。そこで、声をかけられる。
「なあ」
聞き覚えのある声。忘れたいのに忘れることの出来ない、逆らえない声。
僕はヒュッと息を呑んで急いで振り向く。
「なんだよ、ここから入ってたのか。通りで見つからないわけだ」
そこには僕の担当だった人が。目の前がぐらりと揺れる。早く中に、僕はその一心で鍵を回すが、その手を取られる。
ギチリと容赦なく力を入れられ、僕は短い悲鳴をあげる。
「いっ、」
「逃げんなよ。なぁお前、大学行くって本当か?」
「………貴方には、関係無い、」
「ありまくりだよ、何勝手に大学行くとか言ってんだ。戻ってこいよ。恩を忘れたとか言うんじゃねぇだろうな」
恩なんてない。何で僕が施設に感謝しなければいけないのだ。僕を奴隷のように扱って、僕のことを避けて、悪口を言って、酷い扱いをしたくせに。
「離してください」
「じゃあ大学行くの辞めてこっちに戻ってくるなら良いぜ」
「そんなの、」
「じゃあ無理だな。とっとと言えばいいのによ。お前が大学とか無理に決まってんだろ。ろくな学校生活送ってきてないのに」
「僕は、あの時とは違います。今は高校でみんな僕のことを分かってくれてる」
「でもそれは、みーんなお前の本当のこと知らないからだろ?」
ズキリと胸が痛む。全く知らない、と言えば嘘だ。しかし、全て知っている、と言っても嘘になる。
「その顔当たりだな。諦めろよ、お前の居場所は、あそこしかねぇんだよ」
違う。それはハッキリと言える。そんなところ、僕の場所じゃない。
僕は思い切り手を振り払う。その人はびっくりしたが、また冷たい視線を送る。
「いつの間にか、こんなんになったんだな」
「帰ってください」
「何勘違いしてんだよ。生温い生活で忘れたか?お前は、異常者の妹なんだよ!それなのに何でまともに暮らそうとしてんだよ!異常者の妹っていうのは一生付き纏う。逃れられねぇんだよ、お前は」
僕はグッと唇を噛み締める。
それでも、僕は、
「僕はただ、普通に暮らしたいだけなのに」
「その普通ができねぇんだよお前は。だからこっちで雇ってやるって言ってんだろ。早く了承しろよ」
「…少し、考えさせて、」
「うるっせぇな!変なプライド捨てて頷けばいいだけだろ!」
その人は叫ぶ。施設で暴力をされたわけではないが、その形相からはいつ手が出されてもおかしくない。
その人は僕の胸ぐらを掴む。僕は反抗するが、手は離されない。
「やめ、」
「やっぱりお前ダメだよ。何やってもダメ。所詮異常者の妹は異常者なんだよ。分かったらささっさと大学なんて諦めてこっち来いよ」
その目、その目だ。僕を見るその目。
僕に何の期待もしていなくて、ただゴミを見るような無感情の目。いや違うか。
憐れみとか、そんな感情の目。僕のことなんてどうでもいいのに、可哀想とか勝手に思う目。
そのトラウマが蘇る。僕の体から温度が無くなっていき、僕は乾いた声しか出せない。
「ぼ、くは、」
ここで認めてしまえば楽だろう。先生にも迷惑がかからない。
そう思い始めた時、僕は誰かに抱きしめられた。
「おまっ…!」
その人は信じられないという目で僕の後ろを見る。
「…少し、話し合わないとな」
低い声が耳に入っていく。
そこには仕事でいないはずの先生が立っていた。
勉強も順調で、学校の先生からも褒めてもらえた。
だから、気を抜いていたのだ。
僕はいつも通り夕飯の食材を買って裏口から入ろうとする。そこで、声をかけられる。
「なあ」
聞き覚えのある声。忘れたいのに忘れることの出来ない、逆らえない声。
僕はヒュッと息を呑んで急いで振り向く。
「なんだよ、ここから入ってたのか。通りで見つからないわけだ」
そこには僕の担当だった人が。目の前がぐらりと揺れる。早く中に、僕はその一心で鍵を回すが、その手を取られる。
ギチリと容赦なく力を入れられ、僕は短い悲鳴をあげる。
「いっ、」
「逃げんなよ。なぁお前、大学行くって本当か?」
「………貴方には、関係無い、」
「ありまくりだよ、何勝手に大学行くとか言ってんだ。戻ってこいよ。恩を忘れたとか言うんじゃねぇだろうな」
恩なんてない。何で僕が施設に感謝しなければいけないのだ。僕を奴隷のように扱って、僕のことを避けて、悪口を言って、酷い扱いをしたくせに。
「離してください」
「じゃあ大学行くの辞めてこっちに戻ってくるなら良いぜ」
「そんなの、」
「じゃあ無理だな。とっとと言えばいいのによ。お前が大学とか無理に決まってんだろ。ろくな学校生活送ってきてないのに」
「僕は、あの時とは違います。今は高校でみんな僕のことを分かってくれてる」
「でもそれは、みーんなお前の本当のこと知らないからだろ?」
ズキリと胸が痛む。全く知らない、と言えば嘘だ。しかし、全て知っている、と言っても嘘になる。
「その顔当たりだな。諦めろよ、お前の居場所は、あそこしかねぇんだよ」
違う。それはハッキリと言える。そんなところ、僕の場所じゃない。
僕は思い切り手を振り払う。その人はびっくりしたが、また冷たい視線を送る。
「いつの間にか、こんなんになったんだな」
「帰ってください」
「何勘違いしてんだよ。生温い生活で忘れたか?お前は、異常者の妹なんだよ!それなのに何でまともに暮らそうとしてんだよ!異常者の妹っていうのは一生付き纏う。逃れられねぇんだよ、お前は」
僕はグッと唇を噛み締める。
それでも、僕は、
「僕はただ、普通に暮らしたいだけなのに」
「その普通ができねぇんだよお前は。だからこっちで雇ってやるって言ってんだろ。早く了承しろよ」
「…少し、考えさせて、」
「うるっせぇな!変なプライド捨てて頷けばいいだけだろ!」
その人は叫ぶ。施設で暴力をされたわけではないが、その形相からはいつ手が出されてもおかしくない。
その人は僕の胸ぐらを掴む。僕は反抗するが、手は離されない。
「やめ、」
「やっぱりお前ダメだよ。何やってもダメ。所詮異常者の妹は異常者なんだよ。分かったらささっさと大学なんて諦めてこっち来いよ」
その目、その目だ。僕を見るその目。
僕に何の期待もしていなくて、ただゴミを見るような無感情の目。いや違うか。
憐れみとか、そんな感情の目。僕のことなんてどうでもいいのに、可哀想とか勝手に思う目。
そのトラウマが蘇る。僕の体から温度が無くなっていき、僕は乾いた声しか出せない。
「ぼ、くは、」
ここで認めてしまえば楽だろう。先生にも迷惑がかからない。
そう思い始めた時、僕は誰かに抱きしめられた。
「おまっ…!」
その人は信じられないという目で僕の後ろを見る。
「…少し、話し合わないとな」
低い声が耳に入っていく。
そこには仕事でいないはずの先生が立っていた。
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