灰色に夕焼けを

柊 来飛

文字の大きさ
105 / 128
惹かれ合う

あーん

しおりを挟む
「先生、お帰りなさい!」

 僕が出迎えると、先生は通勤用バッグを殴り捨てて僕を抱きしめる。まだ靴を脱いで玄関にも上がってないのに。

「うぐ、」

「ただいま」

「せっ、せんせ、中に入ってる資料とか駄目になりますよ。パソコンも入ってるのに」

「全部バックアップはとってあるから心配するな。ケースにも入れてあるからそう簡単に壊れない」

「ええ…」

 そう言う問題では無い気がするが、先生が大丈夫と言うなら信じよう。

「先生、今日は唐揚げです!」

「ん、揚げ物か。後片付け大変だろ」

「ふふん、だからこそ普段あまりやらない揚げ物にしたんです!今日の仕事頑張ったご褒美です!」

「嬉しいな」

「喜んでいただけて光栄です!」

 僕は先生から離れるとリビングに戻る。バッグを置いて来た先生が揃ったらご飯を食べ始める。

「ん、美味い。揚げたてだ」

「頑張りました!味見はしたんですけど、美味しくて良かったです」

 僕も一つ唐揚げを取って口に運ぶ。

「あつっ、はふ、」

「さっき俺が揚げたてだって言っただろ。というか、お前が1番知ってるはずだぞ」

「だっ、だって、先生熱いって一言も言ってないし、じゃあ大丈夫かなって、熱い、」

 僕は喉を鳴らして水を一気に飲み干す。コンといい音を立ててコップを置くと、先生も喉を鳴らしてあんなに残っていた水を一気に飲み干す。

「わぁ…、あ、あんなにあったのに、」

「そもそもの話、俺の一口で飲む量とお前じゃかなり違うからな」

 僕だったらあの水だけでお腹いっぱいになっているだろう。先生は新しい水をよそうとまた唐揚げを食べ始める。
 さっきも聞いた通り、先生の一口は大きい。

「そんなに見られると食べづらいんだが、」

「えっ!?ごっ、ごめんなさい!」

 いつの間にか凝視していたらしい。僕は視線を外して唐揚げを食べようとするが、熱くてなかなか食べれない。
 ちまちま齧って食べていると、先生が小さく吹き出す。

「な、何ですか、」

「ん、いや、…ふっ、ははは!すまん、あまりにも一口が小さいから。雀と同じ一口だろそれ、クッ、ククッ、ははは!」

 先生はもう隠す気もなく笑っている。

「あ、熱いんですよ!」

「猫舌なんだな」

 猫舌。それではまた猫だと言われそうだ。それが伝わったのか、先生は口角をいやらしく上げる。

「先生、猫って言ったら許しませんよ」

 僕は先手を打ってみる。が、

「言わないさ。ニャンって鳴いてみろよ」

「先生!」

 僕がキッと睨みつけると先生は余計に楽しそうな顔になる。

「さて、だいぶ冷めたんじゃないか?」

 先生は唐揚げ一つ取って僕の前に出す。

「え?」

「ん?食べないのか?」

「いや!、僕一人で食べれますよ!」

「知ってるが。口開けろ、ほら、」

 グッと唐揚げ近づけられる。
 僕はおずおずと口を開いて唐揚げを頬張る。

「ん、もう熱くないです」

「ほらな」

 先生はそのままの箸で食べ進める。僕は気にしないようにと黙々とご飯を食べる。

「先生ってナチュラルイケメンというか、何というか…」

「何言ってんだ?」

 こんなことを無意識にやってしまうのだ。外見だけでなく仕草もイケメンだ。僕はそれにずっとドキドキさせられてる。
 何だかそれが悔しくて、僕も唐揚げをとって先生の前に差し出す。

「先生、あーん」

 先生は少し驚いた顔をしてから、照れる訳でもなく唐揚げを大きな一口で口に入れる。

「んまい」

「えへへ」

 先生かなり唐揚げ食べてるけど胃がもたれたりしないのかな?まだそんな歳じゃないか。
 いやでも見た目すごい若く見えるけど30代だぞ?この辺りから胃がもたれ始めるものなんじゃないのかな?
 僕の疑問を端に先生は白米もおかわりしてる。

「先生食べますね」

「この身体だとな。お前は食わなすぎだ。もっと食え」

「僕は省エネなので」

「ぶっ倒れるぞ」

 そんなことあり得ないんだが。しかし先生は本気で心配してくれているのだ。

「烏坂」 

「はい?」

「ようやく、気が抜けたな」

 その言葉に僕は気付かされる。僕はここ最近は受験の大詰めでかなり気を詰めていた。それを解したくて先生はこんなことをしていたのだ。

「ありがとうございます、先生」

「礼には及ばん」

 そういうぶっきらぼうだが優しく謙虚なところも大好きだ。

「先生はやっぱりモテ男ですね」

「いきなりなんだ」

「カッコいいってことですよ」

「お前に言われるのは悪くないな」

 先生は薄く笑う。
 ほんと、こうゆうことをさらりと言ってしまうのだ。カッコいいなぁ、先生。
 

 先生がカッコいいということ、僕だけが知れたらなぁ。


 僕は叶うはずも無い、もう手遅れなことを頭の隅でゆっくりと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

「君はいらない」と捨てられた夜、天敵の冷徹社長に「なら、俺が貰う」と拾われました。――手を出さない約束でしたが、彼の理性が限界のようです

葉山 乃愛
恋愛
【婚約破棄から始まる、不器用なライオン(冷徹社長)の猛烈な求愛!】 「俺の妻になるなら覚悟しろ。……もう、指一本逃がすつもりはない」 ★あらすじ★ 「美月は完璧すぎて、可愛げがないんだよ」 28歳の誕生日。 一流ホテルのウエディングプランナーである相沢美月(あいざわ みつき)は、婚約者の裏切りにより、結婚目前ですべてを失った。 雨の降る路地裏。 ヒールも折れ、心も折れてうずくまっていた美月の前に現れたのは、かつての高校時代の天敵であり、現在は勤務先の冷徹な社長 一条蓮(いちじょう れん)だった。 「捨て猫以下だな」 そう憎まれ口を叩きながらも、彼は泥だらけの美月を躊躇なく抱き上げ、最高級ペントハウスへと連れ帰る。 そして、彼が突きつけたのは、あまりにも強引な提案だった。 「住む場所がないなら、俺の家に来い。その代わり――俺の『婚約者』役を演じろ」 利害の一致した契約関係。 条件は「お互いに干渉しないこと」、そして「決して手を出さないこと」。 ……のはずだったのに。 「髪、濡れたままだと風邪を引く」 「あんな男のために泣くな。顔が台無しだ」 同居生活で見えてきたのは、冷徹な仮面の下に隠された、不器用すぎるほどの優しさと独占欲。 美月が作った手料理を誰よりも美味しそうに食べ、元婚約者が復縁を迫ってくれば「俺の女に触れるな」と徹底的に排除する。 天敵だったはずの彼に守られ、凍っていた美月の心は次第に溶かされていく。 しかし、ある雷雨の夜。 美月が不用意に彼に触れた瞬間、一条の理性のタガが外れてしまい――。 「……手を出さない約束? 撤回だ」 「そんな無防備な顔で見つめて、何もしないでいられるほど、俺は聖人君子じゃない」 10年越しの片思いをこじらせたハイスペック社長 × 仕事熱心で恋愛に臆病なプランナー。 契約から始まった二人の関係が、本物の愛(溺愛)に変わるまで。 元婚約者への痛快な「ざまぁ」も収録した、極上の大人のシンデレラストーリー! 【登場人物】 ◆相沢 美月(28) ホテルの敏腕ウエディングプランナー。真面目でお人好しな性格が災いし、「つまらない女」と婚約破棄される。実は家事万能で、酔うと少しだけ甘えん坊になる(本人は無自覚)。 ◆一条 蓮(28) ホテルグループの社長。美貌と才覚を併せ持つが、他人に興味を示さないため「氷の貴公子」と呼ばれる。実は高校時代から美月を一途に想い続けており、彼女のこととなると冷静さを失う。

イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~

美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。 貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。 そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。 紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。 そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!? 突然始まった秘密のルームシェア。 日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。 初回公開・完結*2017.12.21(他サイト) アルファポリスでの公開日*2020.02.16 *表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。

処理中です...