灰色に夕焼けを

柊 来飛

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惹かれ合う

あーん

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「先生、お帰りなさい!」

 僕が出迎えると、先生は通勤用バッグを殴り捨てて僕を抱きしめる。まだ靴を脱いで玄関にも上がってないのに。

「うぐ、」

「ただいま」

「せっ、せんせ、中に入ってる資料とか駄目になりますよ。パソコンも入ってるのに」

「全部バックアップはとってあるから心配するな。ケースにも入れてあるからそう簡単に壊れない」

「ええ…」

 そう言う問題では無い気がするが、先生が大丈夫と言うなら信じよう。

「先生、今日は唐揚げです!」

「ん、揚げ物か。後片付け大変だろ」

「ふふん、だからこそ普段あまりやらない揚げ物にしたんです!今日の仕事頑張ったご褒美です!」

「嬉しいな」

「喜んでいただけて光栄です!」

 僕は先生から離れるとリビングに戻る。バッグを置いて来た先生が揃ったらご飯を食べ始める。

「ん、美味い。揚げたてだ」

「頑張りました!味見はしたんですけど、美味しくて良かったです」

 僕も一つ唐揚げを取って口に運ぶ。

「あつっ、はふ、」

「さっき俺が揚げたてだって言っただろ。というか、お前が1番知ってるはずだぞ」

「だっ、だって、先生熱いって一言も言ってないし、じゃあ大丈夫かなって、熱い、」

 僕は喉を鳴らして水を一気に飲み干す。コンといい音を立ててコップを置くと、先生も喉を鳴らしてあんなに残っていた水を一気に飲み干す。

「わぁ…、あ、あんなにあったのに、」

「そもそもの話、俺の一口で飲む量とお前じゃかなり違うからな」

 僕だったらあの水だけでお腹いっぱいになっているだろう。先生は新しい水をよそうとまた唐揚げを食べ始める。
 さっきも聞いた通り、先生の一口は大きい。

「そんなに見られると食べづらいんだが、」

「えっ!?ごっ、ごめんなさい!」

 いつの間にか凝視していたらしい。僕は視線を外して唐揚げを食べようとするが、熱くてなかなか食べれない。
 ちまちま齧って食べていると、先生が小さく吹き出す。

「な、何ですか、」

「ん、いや、…ふっ、ははは!すまん、あまりにも一口が小さいから。雀と同じ一口だろそれ、クッ、ククッ、ははは!」

 先生はもう隠す気もなく笑っている。

「あ、熱いんですよ!」

「猫舌なんだな」

 猫舌。それではまた猫だと言われそうだ。それが伝わったのか、先生は口角をいやらしく上げる。

「先生、猫って言ったら許しませんよ」

 僕は先手を打ってみる。が、

「言わないさ。ニャンって鳴いてみろよ」

「先生!」

 僕がキッと睨みつけると先生は余計に楽しそうな顔になる。

「さて、だいぶ冷めたんじゃないか?」

 先生は唐揚げ一つ取って僕の前に出す。

「え?」

「ん?食べないのか?」

「いや!、僕一人で食べれますよ!」

「知ってるが。口開けろ、ほら、」

 グッと唐揚げ近づけられる。
 僕はおずおずと口を開いて唐揚げを頬張る。

「ん、もう熱くないです」

「ほらな」

 先生はそのままの箸で食べ進める。僕は気にしないようにと黙々とご飯を食べる。

「先生ってナチュラルイケメンというか、何というか…」

「何言ってんだ?」

 こんなことを無意識にやってしまうのだ。外見だけでなく仕草もイケメンだ。僕はそれにずっとドキドキさせられてる。
 何だかそれが悔しくて、僕も唐揚げをとって先生の前に差し出す。

「先生、あーん」

 先生は少し驚いた顔をしてから、照れる訳でもなく唐揚げを大きな一口で口に入れる。

「んまい」

「えへへ」

 先生かなり唐揚げ食べてるけど胃がもたれたりしないのかな?まだそんな歳じゃないか。
 いやでも見た目すごい若く見えるけど30代だぞ?この辺りから胃がもたれ始めるものなんじゃないのかな?
 僕の疑問を端に先生は白米もおかわりしてる。

「先生食べますね」

「この身体だとな。お前は食わなすぎだ。もっと食え」

「僕は省エネなので」

「ぶっ倒れるぞ」

 そんなことあり得ないんだが。しかし先生は本気で心配してくれているのだ。

「烏坂」 

「はい?」

「ようやく、気が抜けたな」

 その言葉に僕は気付かされる。僕はここ最近は受験の大詰めでかなり気を詰めていた。それを解したくて先生はこんなことをしていたのだ。

「ありがとうございます、先生」

「礼には及ばん」

 そういうぶっきらぼうだが優しく謙虚なところも大好きだ。

「先生はやっぱりモテ男ですね」

「いきなりなんだ」

「カッコいいってことですよ」

「お前に言われるのは悪くないな」

 先生は薄く笑う。
 ほんと、こうゆうことをさらりと言ってしまうのだ。カッコいいなぁ、先生。
 

 先生がカッコいいということ、僕だけが知れたらなぁ。


 僕は叶うはずも無い、もう手遅れなことを頭の隅でゆっくりと思った。
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