灰色に夕焼けを

柊 来飛

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惹かれ合う

甘える

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「せんせ!確認おねが…後で!」

「おいこら、」
 
 夜、僕は大学受験願書を手に持ってリビングにいる先生を訪ねた。が、僕は踵を返す。

「ひゃああ!」

「ほら見せろ」

 グッと腰に腕を回されて手首を掴まれる。

「先生服着て!風邪引きますよ!」

 先生は今上裸だ。こんなに寒いのに。先生の髪はまだ濡れていてお風呂から出たばかりらしい。

「着る。流石に寒い」

「早く!」

「待て、少し見させろ」

 嘘だろ、こんな状況で?僕を後ろからハグした状態で?僕の心臓が痛いほど鼓動する。

「ん、まだ詳しく見てないが大丈夫そうだ。すぐ来るから少し待ってろ」

 そう言うと先生は大股で自室に戻っていく。僕は一息ついてソファに寄りかかる。

「心臓に悪いよ……」

 自分の心臓に手を当てると、まだ激しく鼓動している。身体はまだ熱を持っていて、寒いはずなのに今は暑い。

「来たぞ、見せてくれ」

「はい」

 願書を渡すと、次はじっくりと見ている。一枚の資料を見ているだけなのにこんなに様になるなんて、先生は本当にすごい。モデルの声とか掛かったこと無いのかな?いや、あるだろうな。本人が興味ないだけで。

「良いんじゃないか?明日俺が出して来ても大丈夫そうか?」

「はい!お願いします!」

 僕が元気よく返事をすると、先生は忘れないようにと通勤用バッグに入れる。

「もうそんな時期か」

「少し、不安です。勉強はちゃんとやってるし、身についてるって感覚はあるんですけど、」

「それなら大丈夫だ。いつも通りやれば良い」

 先生は僕の頭を撫でる。何だか、先生に頭を撫でてもらうのが当たり前と言うか、日課になってる気がする。

「僕だけいつも頭撫でて貰って悪いです」

「俺が撫でたいだけなんだがな」

「僕も撫でます!先生!」

 パッと両手を出すと、先生は僕の肩に顎を乗っける。

「ん、先生」

「ここでも撫でられるだろ」

 少し撫でにくいが、わしゃわしゃと撫でてあげると先生は僕の背中に腕を回す。そのまま僕は抱きしめられ、先生との距離が近くなる。

「先生、抱きしめるの好きですよね」

「安心する」

「えへへ、僕もです」

 僕も抱きしめると、もっと先生からの力が強まる。最近、抱きしめる力が強い気がする。元々は手加減してたと思うから、これが本当の力なのだろうか。

「あー…。仕事行きたくねぇ…」

 珍しく先生が愚痴を溢す。先生だって人間だ。そう思うことだってあるだろう。
 僕は先生の頭を撫でながら言う。

「明日頑張ったら、好きな夕飯作ってあげます」

「もう一声」

「えっ、なっ、何が良いですか…?」

「……また、今日みたいに甘えて良いか?」

「えっ、それだけでいいんですか?もっとこう…特別な…」

「俺にとっちゃこれがこれ以上無い特別だ」

「こんなことなら毎日やってあげるのに…」

 僕が言うと、先生は僕の方にグリグリと頭を押し付けてくる。僕はその頭を撫でる。

「烏坂だって、理由もなく甘えて良いんだぜ」

「甘えてるつもりなんですけど…」

「全部理由つけてるだろ、それ」

 先生は僕から離れて僕の瞳を見据える。

「そう、でしょうか、」

「ああ、そうだぜ。で、明日の夕飯のことなんだが」

「何が良いですか?」

「お前が作るものなら何でも良い」

「えっ」

「本当に何でも良いんだ。何でも美味しいから。いつも作ってくれてありがとう」

 先生に感謝を言われて僕は耳を赤くして下を向く。そんな風に思っていてくれたんだ。僕の料理、美味しいって、思ってくれていたんだ。

「嬉しいです、先生。ありがとうございます」

 えへへと笑って先生に抱きつくと、僕の頭を撫でてくれる。

「お前も、受験頑張れよ」

「はい!」
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