14 / 42
14 追放サイド:没落への道(その4)
しおりを挟む
「く、くそが! なんでこんなことに!」
俺様はグングニルのダンジョンをなんとか抜け出し、宿の酒場へと戻っていた。すでにかなり遅い時間だったが、飲まずにはいられなかった。
「ライトニングめ……何故、出てこない!」
契約したはずのドラゴンが召喚に応じないなど聞いたことがない。ただの下僕に過ぎないトカゲの分際で……おのれぇっ!
俺様は怒りのままに、手近な椅子を蹴り上げた。派手な音を立てて、椅子が転がる。客どもが一斉にこちらを向いたが、睨み返すとすぐに視線を逸らす。根性なしどもが。
「お、お客様! 困ります!」
「うるせえ! 貴様、帝国竜騎士団ラウダ・ゴードン様に向かって、舐めた口を聞くとどうなるか教えてやろうか!」
「ほう。どうなるか、ぜひ教えてもらいたいものだな」
やけに落ち着いた声音がした。この俺様相手に生意気な……。いいだろう。憂さ晴らしに後悔させてやる。俺様は首を巡らせ、思い切り怒鳴り返した。
「いい度胸だ! 教えてやるから、表に……え。お、おまえは!」
相手の顔を見て俺様は息をのむ。そこには銀髪隻眼の長身の男が座っていた。そいつはカウンターで琥珀色のウイスキーらしきものを静かに飲んでいる。
「その髪、その眼帯、その白いコート……あんた、まさか」
俺様は自分の指先が震えているのに気がつく。両手をきつく握りしめ、どうにかそれを抑えつけた。
俺の目の前にいる男――そいつは「隻眼の銀狼」と恐れられている北方氷雪連合の騎士団長グライン・オズワルド!
まずい。こいつは確かSS級のはず……。
「で、舐めた口を聞くと、どうなるのか教えてもらえるかな」
「あ、いや。ははは。なんでもねぇよ。なんでもねえんだよ……。邪魔したな。ははは」
俺様は慌てて酒場を抜け出し、宿泊している部屋へと駆け込んだ。外は相変わらず雪が振っていた。
ドアを閉めて、息と鼓動をどうにか整える。全く、今日はなんという日だ。ダンジョンでは散々な目に会い、竜化もできない上に、北方氷雪連合のグラインにまで絡まれるとは……。
「くそったれがあ!」
部屋の水差しを床に投げつけ、溜まりに溜まった怒りを発散する。ちくしょう。何故、こんなことになった?
ジン・カミクラ。
まさか本当にあいつを追放したからなのか? い、いやそんなはずはない。
「そんなはずはない!」
堪らず叫ぶと、突然、部屋のドアがノックなしに開かれた。
「誰だ!? 勝手に入ってくるな!」
振り返ると、そこにはダンジョンに置き去りにしてきた小隊の部下たちが立っていた。どいつもこいつもボロボロで実に汚らしい。おまけにひどい匂いだ。
「貴様ら……何、勝手に入ってきてやがる。しかも、そんな薄汚い格好で、くせぇだろうが!」
俺様が怒号を上げると、副長が一歩前に歩み出た。な、なんだよ。初めて見る反抗的な目だった。
「小隊長、いやラウダ・ゴードン。あなたを拘束させてもらう」
「はっ? な、何を言ってやがる。貴様、正気かあっ! おい、てめら、そいつこそ捕らえろ!」
俺様が命令を下達しても、誰一人として動かない。動こうとしない。それどころか、全員が敵意剥き出しの瞳を俺様に浴びせていた。
「お、おい。冗談だろ? 俺は、小隊長だぞ。い、今ならなかったことにしてやるから、とっとと自分の部屋に戻れよ」
「ひっ捕らえろお!」
副長が叫ぶと同時に、部下たちが一斉に俺様に飛びかかってきやがった。
「ひ、ひいっ!」
なんだ! なんなんだよ!
状況を理解できないまま窓を突き破り、俺様は雪の降りしきる外へと飛び出した。
「な、なんでだ! なんでこんなことに!」
全部、あいつのせいだ! ジン・カミクラ! 全て、おまえのせいだあああっ!
許さんぞ! 許さんぞ!
必ず、復讐してやるかならあっ!!
俺様はグングニルのダンジョンをなんとか抜け出し、宿の酒場へと戻っていた。すでにかなり遅い時間だったが、飲まずにはいられなかった。
「ライトニングめ……何故、出てこない!」
契約したはずのドラゴンが召喚に応じないなど聞いたことがない。ただの下僕に過ぎないトカゲの分際で……おのれぇっ!
俺様は怒りのままに、手近な椅子を蹴り上げた。派手な音を立てて、椅子が転がる。客どもが一斉にこちらを向いたが、睨み返すとすぐに視線を逸らす。根性なしどもが。
「お、お客様! 困ります!」
「うるせえ! 貴様、帝国竜騎士団ラウダ・ゴードン様に向かって、舐めた口を聞くとどうなるか教えてやろうか!」
「ほう。どうなるか、ぜひ教えてもらいたいものだな」
やけに落ち着いた声音がした。この俺様相手に生意気な……。いいだろう。憂さ晴らしに後悔させてやる。俺様は首を巡らせ、思い切り怒鳴り返した。
「いい度胸だ! 教えてやるから、表に……え。お、おまえは!」
相手の顔を見て俺様は息をのむ。そこには銀髪隻眼の長身の男が座っていた。そいつはカウンターで琥珀色のウイスキーらしきものを静かに飲んでいる。
「その髪、その眼帯、その白いコート……あんた、まさか」
俺様は自分の指先が震えているのに気がつく。両手をきつく握りしめ、どうにかそれを抑えつけた。
俺の目の前にいる男――そいつは「隻眼の銀狼」と恐れられている北方氷雪連合の騎士団長グライン・オズワルド!
まずい。こいつは確かSS級のはず……。
「で、舐めた口を聞くと、どうなるのか教えてもらえるかな」
「あ、いや。ははは。なんでもねぇよ。なんでもねえんだよ……。邪魔したな。ははは」
俺様は慌てて酒場を抜け出し、宿泊している部屋へと駆け込んだ。外は相変わらず雪が振っていた。
ドアを閉めて、息と鼓動をどうにか整える。全く、今日はなんという日だ。ダンジョンでは散々な目に会い、竜化もできない上に、北方氷雪連合のグラインにまで絡まれるとは……。
「くそったれがあ!」
部屋の水差しを床に投げつけ、溜まりに溜まった怒りを発散する。ちくしょう。何故、こんなことになった?
ジン・カミクラ。
まさか本当にあいつを追放したからなのか? い、いやそんなはずはない。
「そんなはずはない!」
堪らず叫ぶと、突然、部屋のドアがノックなしに開かれた。
「誰だ!? 勝手に入ってくるな!」
振り返ると、そこにはダンジョンに置き去りにしてきた小隊の部下たちが立っていた。どいつもこいつもボロボロで実に汚らしい。おまけにひどい匂いだ。
「貴様ら……何、勝手に入ってきてやがる。しかも、そんな薄汚い格好で、くせぇだろうが!」
俺様が怒号を上げると、副長が一歩前に歩み出た。な、なんだよ。初めて見る反抗的な目だった。
「小隊長、いやラウダ・ゴードン。あなたを拘束させてもらう」
「はっ? な、何を言ってやがる。貴様、正気かあっ! おい、てめら、そいつこそ捕らえろ!」
俺様が命令を下達しても、誰一人として動かない。動こうとしない。それどころか、全員が敵意剥き出しの瞳を俺様に浴びせていた。
「お、おい。冗談だろ? 俺は、小隊長だぞ。い、今ならなかったことにしてやるから、とっとと自分の部屋に戻れよ」
「ひっ捕らえろお!」
副長が叫ぶと同時に、部下たちが一斉に俺様に飛びかかってきやがった。
「ひ、ひいっ!」
なんだ! なんなんだよ!
状況を理解できないまま窓を突き破り、俺様は雪の降りしきる外へと飛び出した。
「な、なんでだ! なんでこんなことに!」
全部、あいつのせいだ! ジン・カミクラ! 全て、おまえのせいだあああっ!
許さんぞ! 許さんぞ!
必ず、復讐してやるかならあっ!!
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる