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1章 名もなき村
12 調合師2
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「まあ、神様から料理に関する加護や能力をもらったって、世界中に料理の知識をばらまけって言われてることだけ覚えておいてもらえれば信じてもらえなくても構わないよ」
どんなに言い切ったところで証拠を見せることができない以上信じるかどうかはその人しだいだ。
でも、邪魔をされたりしたときに神様が関係していたなんて知らなかったなんて言われるのも業腹だからこっちの言い分だけはきちんと伝えておく。
「ま、キミの言いたいことは分かったよ。でも、キミがいなくなった後に私が村の人たちに火を与えて回って何か得があるわけ? こっちだって毎日のポーションづくりで忙しいんだからね」
「得と言えば単純なことだがあんたが村の人に火を与えれば今食べたのと同じような料理、ただの野菜じゃなくて調理された料理が食べられるってのが得だな。この村から出る前に村人にはこの村で採れる食材で作れる簡単な料理を教えてから他の地域に行くつもりだからな」
村を出るのは確定だ、それが神様からの依頼でもあるし、どうせこの村で作れるもの作り切ったらやることが無くなるのは目に見えてる。
レイジやミーナの手伝いをしつつのんびり生活するのも夢があるが、神様曰く料理技術を広めるまでは俺は死ねないらしいからそういう意味でもここで一生生活するのは無理だろう。
「ふーん、そういうことなら私にも少しは得があるけれどそんな簡単にいくわけ? 私も調合師のはしくれだからわかるけど新しい何かを覚えるのってすごく大変よ」
「まあ、そこは頑張ってもらうとしか言えないが、料理ってのはそんなに難しいことばかりじゃない。斑芋は毒抜きの作業があるから失敗したら毒を食らうことになるが、肉のほうなら切り出して火にかけた鉄板やら石板やらで焼くだけだ。もちろん美味しく焼くためには技術や覚えなければならないこともあるが食べるだけなら適当に焼いてもそれなりには食える」
今回作ってきたステーキはコンロ、フライパン、蓋を使って作ったが、薄めの石を火にかけてそこに肉を置いてもそれなりには焼けるだろう。
斑芋のほうは準備や事前知識が十分でない場合は死に至るから容易ではないものの、毒の部位は熱を通せばわかりやすく変色するし粉ふきいも自体が簡単な料理なので毒抜きさえできれば失敗は少ないだろう。
「なるほどね。じゃあ私は火を提供するだけでこれからも君が持ってきてくれたような温かい食べ物が食べられる、と」
「できれば鍋や匙なんかも提供してくれれば料理の幅が広がるがな。というか、斑芋のほうは鍋がないと毒抜きができないからな」
「でもさあ、そんな簡単に食材の供給ができるわけ? この村って今でも納税物に関してはカツカツじゃない?」
「斑芋のほうはロクな畑も作ってない現状でも取り切れないほど繁殖力が強いから問題ないだろ。何だったら村長の畑を手伝ってる人間を何人か斑芋専門にすればいいだろうし。肉のほうも斑芋のバラマキだけで毎日のようにフライラットやデビルボアの死体が山になるんだから村人全員分くらいは毎日とれるだろう」
デビルボアは小ぶりなものでも百キロ近く、初日に見たものは二メートル近くあって、あれは確実に百キロ超だろう。
内臓や血や骨を抜いても単純に五十キロは超えるだろう。
この村の人口は数えたわけではないが百人は超えないだろうから一頭でも一人当たり五百グラムは超える計算。
これに緑菜なんかを加えれば一日の食事としては破格だろう。
「村長は? 勝手に労働力をあてにされてるけど文句とかはないの?」
「食いもんが増えるのに文句があるわけねえだろ。それにわしの畑で使ってる奴らも無理に使ってやってるような状態だからな。他に仕事ができるなら分散させてえのは本心だ」
村長の言い分は初めて聞いたが、正直、だろうなとは思っていた。
いくらレイジやミーナが子供とはいえ報酬をやるならもっと仕事を振るはずなのだ。
実際、他の子供たちは自分の家の畑の手伝いを朝から夕方までやってその間に畑のそばで少しの時間子供だけで遊ぶくらいだ。
なのにレイジとミーナは朝と夕方には仕事があるがそれ以外は雑用だけ、それもほとんどが他の大人たちがやってしまうので畑のごみ拾いとか大人たちが飲む用の水を井戸から汲むとかそんなやってもやらなくても変わらないような仕事しかないらしい。
「んで、どうだ? 村長もこう言ってるがあんた自身としては今回のことは引き受けてくれるのか?」
「そうね、火をつけるだけなら快諾するわ。でも鍋とか匙とかに関しては少し待ってほしいわね。これって私個人の所有物じゃなくて国から調合師に与えられたものだから簡単には譲れないわ」
「匙は最悪その辺の木でも使って作れるからいいが鍋はできれば鉄製のものが欲しいんだよな。石をくりぬいて作るってのも現実的じゃないし。鍛冶師とか知らないか?」
「鍛冶師も国が雇用してるからある程度権力を持っている人じゃないと接触できないわよ。まあ、私にも伝手があるから少し時間はかかるけれど用意はできるわ」
「じゃあ、そういう方向で頼む。村長、労働力や斑芋のほうはお願いしてもいいですかね?」
「構わん、あんちゃんと仲がいいからレイジとミーナに任せるのがいいか?」
「いえ、二人には他に頼みたいことがあるので出来るだけ二人には今くらいの仕事量でお願いしたいです」
「ミーナはそれでええんか? 畑をもちゃあ少しは配る野菜が増えるぞ」
「はい、村長。ミーナもマサトさんに教わりたいことがたくさんあるので今くらいがいいです」
とりあえずこれで話は一通りまとまったかな。
あとはかまどを作って適当な大きさの石板でも用意すれば一通りは何とかなるだろう。
できれば森の中でも食料を見つけて定期的に森に入るようになれば何らかの理由で緑菜が採れなくなっても村人が生きていけるだけの食料は手に入るようになるだろう。
どんなに言い切ったところで証拠を見せることができない以上信じるかどうかはその人しだいだ。
でも、邪魔をされたりしたときに神様が関係していたなんて知らなかったなんて言われるのも業腹だからこっちの言い分だけはきちんと伝えておく。
「ま、キミの言いたいことは分かったよ。でも、キミがいなくなった後に私が村の人たちに火を与えて回って何か得があるわけ? こっちだって毎日のポーションづくりで忙しいんだからね」
「得と言えば単純なことだがあんたが村の人に火を与えれば今食べたのと同じような料理、ただの野菜じゃなくて調理された料理が食べられるってのが得だな。この村から出る前に村人にはこの村で採れる食材で作れる簡単な料理を教えてから他の地域に行くつもりだからな」
村を出るのは確定だ、それが神様からの依頼でもあるし、どうせこの村で作れるもの作り切ったらやることが無くなるのは目に見えてる。
レイジやミーナの手伝いをしつつのんびり生活するのも夢があるが、神様曰く料理技術を広めるまでは俺は死ねないらしいからそういう意味でもここで一生生活するのは無理だろう。
「ふーん、そういうことなら私にも少しは得があるけれどそんな簡単にいくわけ? 私も調合師のはしくれだからわかるけど新しい何かを覚えるのってすごく大変よ」
「まあ、そこは頑張ってもらうとしか言えないが、料理ってのはそんなに難しいことばかりじゃない。斑芋は毒抜きの作業があるから失敗したら毒を食らうことになるが、肉のほうなら切り出して火にかけた鉄板やら石板やらで焼くだけだ。もちろん美味しく焼くためには技術や覚えなければならないこともあるが食べるだけなら適当に焼いてもそれなりには食える」
今回作ってきたステーキはコンロ、フライパン、蓋を使って作ったが、薄めの石を火にかけてそこに肉を置いてもそれなりには焼けるだろう。
斑芋のほうは準備や事前知識が十分でない場合は死に至るから容易ではないものの、毒の部位は熱を通せばわかりやすく変色するし粉ふきいも自体が簡単な料理なので毒抜きさえできれば失敗は少ないだろう。
「なるほどね。じゃあ私は火を提供するだけでこれからも君が持ってきてくれたような温かい食べ物が食べられる、と」
「できれば鍋や匙なんかも提供してくれれば料理の幅が広がるがな。というか、斑芋のほうは鍋がないと毒抜きができないからな」
「でもさあ、そんな簡単に食材の供給ができるわけ? この村って今でも納税物に関してはカツカツじゃない?」
「斑芋のほうはロクな畑も作ってない現状でも取り切れないほど繁殖力が強いから問題ないだろ。何だったら村長の畑を手伝ってる人間を何人か斑芋専門にすればいいだろうし。肉のほうも斑芋のバラマキだけで毎日のようにフライラットやデビルボアの死体が山になるんだから村人全員分くらいは毎日とれるだろう」
デビルボアは小ぶりなものでも百キロ近く、初日に見たものは二メートル近くあって、あれは確実に百キロ超だろう。
内臓や血や骨を抜いても単純に五十キロは超えるだろう。
この村の人口は数えたわけではないが百人は超えないだろうから一頭でも一人当たり五百グラムは超える計算。
これに緑菜なんかを加えれば一日の食事としては破格だろう。
「村長は? 勝手に労働力をあてにされてるけど文句とかはないの?」
「食いもんが増えるのに文句があるわけねえだろ。それにわしの畑で使ってる奴らも無理に使ってやってるような状態だからな。他に仕事ができるなら分散させてえのは本心だ」
村長の言い分は初めて聞いたが、正直、だろうなとは思っていた。
いくらレイジやミーナが子供とはいえ報酬をやるならもっと仕事を振るはずなのだ。
実際、他の子供たちは自分の家の畑の手伝いを朝から夕方までやってその間に畑のそばで少しの時間子供だけで遊ぶくらいだ。
なのにレイジとミーナは朝と夕方には仕事があるがそれ以外は雑用だけ、それもほとんどが他の大人たちがやってしまうので畑のごみ拾いとか大人たちが飲む用の水を井戸から汲むとかそんなやってもやらなくても変わらないような仕事しかないらしい。
「んで、どうだ? 村長もこう言ってるがあんた自身としては今回のことは引き受けてくれるのか?」
「そうね、火をつけるだけなら快諾するわ。でも鍋とか匙とかに関しては少し待ってほしいわね。これって私個人の所有物じゃなくて国から調合師に与えられたものだから簡単には譲れないわ」
「匙は最悪その辺の木でも使って作れるからいいが鍋はできれば鉄製のものが欲しいんだよな。石をくりぬいて作るってのも現実的じゃないし。鍛冶師とか知らないか?」
「鍛冶師も国が雇用してるからある程度権力を持っている人じゃないと接触できないわよ。まあ、私にも伝手があるから少し時間はかかるけれど用意はできるわ」
「じゃあ、そういう方向で頼む。村長、労働力や斑芋のほうはお願いしてもいいですかね?」
「構わん、あんちゃんと仲がいいからレイジとミーナに任せるのがいいか?」
「いえ、二人には他に頼みたいことがあるので出来るだけ二人には今くらいの仕事量でお願いしたいです」
「ミーナはそれでええんか? 畑をもちゃあ少しは配る野菜が増えるぞ」
「はい、村長。ミーナもマサトさんに教わりたいことがたくさんあるので今くらいがいいです」
とりあえずこれで話は一通りまとまったかな。
あとはかまどを作って適当な大きさの石板でも用意すれば一通りは何とかなるだろう。
できれば森の中でも食料を見つけて定期的に森に入るようになれば何らかの理由で緑菜が採れなくなっても村人が生きていけるだけの食料は手に入るようになるだろう。
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