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1章 名もなき村
16 角煮と約束
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とにもかくにも、二人には契約書にサインをしてもらい従業員として登録してもらった。
これで少なくとも、森や旅に出た先で誰かが死ぬようなことにはならないだろう。
「ねえ、マサト兄ちゃん。僕、おなかがすいたんだけど何も作ってないの?」
「あ、お兄ちゃん、ミーナがマサトさんと一緒に角煮とフライドポテトを作ったから一緒に食べようよ」
「角煮はナイフがなくても噛み切れるくらいには柔らかくできてるはずだけど一応ナイフも出しておくな。フライドポテトのほうは塩で味付けはしてあるけど、物足りなそうならこっちのケチャップも使ってみてくれ」
この世界の人間は基本的に素材と塩くらいしか味を知らないから、フライドポテトも塩だけでもいいのだが俺が物足りないのでケチャップも一緒に小皿に盛って出す。
角煮にはからしを付ける人もいるらしいが、俺はまだまだ子供舌なのでからしはいらない。
一度、ステーキを焼いた際に唐辛子とかを混ぜたピリ辛仕様にしてみたことがあるが、二人とも辛さで涙目になっていたから二人にも、というかこの世界の人間には過度な香辛料はまだ早いのだろう。
角煮には米が合うと思うのだが、残念ながら米は見つかっていない。
仕方がないから、朝に作ったパンと合わせて食べるか。
まあ、異界のレシピにも角煮バーガーなるものがあるらしいから決定的に合わないということもないだろう。
「……うわぁ、マサト兄ちゃん、この角煮って肉料理、肉がトロトロだよ」
「マサトさん、これ、フォークを使うよりスプーンで食べたほうがいいかも」
確かに、フォークで刺すと刺した場所からちぎれていってしまう。
箸ならある程度、力加減が効くので持ち上げることも可能だが、フォークだとそのあたりも難しいらしい。
「はい、スプーン。あとおしぼりも渡しておくな。フライドポテトは手で掴んで食べてもいい料理だから手が汚れたらそのおしぼりで拭うんだぞ」
「ありがとう、マサト兄ちゃん。このフライドポテトも外側がカリっとしてて粉ふきいもとはまた違ったおいしさがあるね」
「お兄ちゃん、このケチャップを付けると甘みと酸味が足されるからまた違った味わいになるよ」
二人は角煮とフライドポテトも気に入ったようで、先へ先へと争うように食べている。
角煮もフライドポテトもできてから少し時間がたっていたので、アツアツとはいかなかったが熱い料理にまだ慣れきっていない二人にはちょうどいい温度なのかもしれない。
「二人は角煮とステーキ、どっちのほうが好きだ?」
「僕は角煮よりもステーキのほうが噛み応えがあって好きだな。味としては角煮のほうが味付けが濃くて好きだけど」
「ミーナは角煮のトロトロ感が好きだから角煮かな」
やっぱりこの世界でも人によって食感で好き嫌いが出るんだろうな。
固い物のほうが好きな人にはステーキとかフライドポテトで、柔らかいのが好きな人には緑菜とバラ肉のスープとかあんかけとかの方がいいか。
水瓜と紫トマトの調理方法も考えて教えないといけないんだが、水瓜は食材鑑定の結果も生食推奨だから使い道があんまりないんだよな。
コメが見つかっていれば塩を使って浅漬けとか米ぬかを使ってぬか漬けとかそれ単体で副菜に使えるんだけど。
「まあ、あとは森で見つけられた食材によるかな。ということで、二人とも、明日は村長のところに行って森の中にはいる許可をもらったら森に行くぞ」
「ミーナも一緒に行っていいの?」
「マサト兄ちゃん、ミーナは危ないよ。いや、マサト兄ちゃんも危ないんだけど……」
「いやいや、さっき契約書にサインをしてもらったから怪我はしないはずだよ。ああ、自分で傷つけた場合は適用外らしいから包丁とかナイフとか使うときに気を付けるのは変わらないからな」
「うーん、でも……」
「レイジ、剣士の天職の力で俺たちを守ってくれるんだろ? この村の森でさえ守れなかったら旅に出た時に不安じゃないか? 危なかったら戻ってくればいいんだから練習だと思って一緒に行ってくれないか?」
そこまで言うと、レイジはしぶしぶだがうなずいてくれた。
まだ、戦い方を模索している最中だから守るものがいるという状況に不安があるのだろう。
だが、新たな食材を探すためにも森の中に一度は入ってみるのは決定事項だ。
「レイジ、悪いとは思うがよろしく頼むよ。あと、明日は朝のうちにお弁当を用意するから朝になったらうちで一緒に料理をしよう」
パンはまだ作り置きのものがあるし、三人で食べるのなら調味料は食堂のものを使っても問題ないからハンバーグでも作ってハンバーガーにしよう。
この前調べたらミンサーも食堂内にあったからミンチを作るのにいちいち包丁でたたかなくてもいいから多分作れるだろう。
つなぎ用の生卵はないがパン粉とマヨネーズで代用は可能だろう。
「マサトさん、朝から料理するのはいいですけどちゃんと起きてくださいね」
「そうだよ、僕たちが起こしに来るとマサト兄ちゃん、いつも寝ぼけまなこじゃん」
「うっ、努力するよ」
いや、名誉のためにも言っておくが、決して俺が朝に弱いということではなく、この村の住人の朝が早すぎるのだ。
村人は日が出る前には起きだして朝食の野菜を食べて、日が出ると同時に畑へと仕事をしに出掛けていくのだ。
目覚まし時計もなしに毎日、毎朝そんな習慣を平然とやっている人たちと一緒にしないでほしい。
とにかく、レイジとミーナ相手にそんな守れないような約束をしておく。
いや、一応自室に設置してあった目覚まし時計のアラームをセットはしておくが、二人が帰った後に軽く下ごしらえをするつもりだからどうなるのかはわからない。
これで少なくとも、森や旅に出た先で誰かが死ぬようなことにはならないだろう。
「ねえ、マサト兄ちゃん。僕、おなかがすいたんだけど何も作ってないの?」
「あ、お兄ちゃん、ミーナがマサトさんと一緒に角煮とフライドポテトを作ったから一緒に食べようよ」
「角煮はナイフがなくても噛み切れるくらいには柔らかくできてるはずだけど一応ナイフも出しておくな。フライドポテトのほうは塩で味付けはしてあるけど、物足りなそうならこっちのケチャップも使ってみてくれ」
この世界の人間は基本的に素材と塩くらいしか味を知らないから、フライドポテトも塩だけでもいいのだが俺が物足りないのでケチャップも一緒に小皿に盛って出す。
角煮にはからしを付ける人もいるらしいが、俺はまだまだ子供舌なのでからしはいらない。
一度、ステーキを焼いた際に唐辛子とかを混ぜたピリ辛仕様にしてみたことがあるが、二人とも辛さで涙目になっていたから二人にも、というかこの世界の人間には過度な香辛料はまだ早いのだろう。
角煮には米が合うと思うのだが、残念ながら米は見つかっていない。
仕方がないから、朝に作ったパンと合わせて食べるか。
まあ、異界のレシピにも角煮バーガーなるものがあるらしいから決定的に合わないということもないだろう。
「……うわぁ、マサト兄ちゃん、この角煮って肉料理、肉がトロトロだよ」
「マサトさん、これ、フォークを使うよりスプーンで食べたほうがいいかも」
確かに、フォークで刺すと刺した場所からちぎれていってしまう。
箸ならある程度、力加減が効くので持ち上げることも可能だが、フォークだとそのあたりも難しいらしい。
「はい、スプーン。あとおしぼりも渡しておくな。フライドポテトは手で掴んで食べてもいい料理だから手が汚れたらそのおしぼりで拭うんだぞ」
「ありがとう、マサト兄ちゃん。このフライドポテトも外側がカリっとしてて粉ふきいもとはまた違ったおいしさがあるね」
「お兄ちゃん、このケチャップを付けると甘みと酸味が足されるからまた違った味わいになるよ」
二人は角煮とフライドポテトも気に入ったようで、先へ先へと争うように食べている。
角煮もフライドポテトもできてから少し時間がたっていたので、アツアツとはいかなかったが熱い料理にまだ慣れきっていない二人にはちょうどいい温度なのかもしれない。
「二人は角煮とステーキ、どっちのほうが好きだ?」
「僕は角煮よりもステーキのほうが噛み応えがあって好きだな。味としては角煮のほうが味付けが濃くて好きだけど」
「ミーナは角煮のトロトロ感が好きだから角煮かな」
やっぱりこの世界でも人によって食感で好き嫌いが出るんだろうな。
固い物のほうが好きな人にはステーキとかフライドポテトで、柔らかいのが好きな人には緑菜とバラ肉のスープとかあんかけとかの方がいいか。
水瓜と紫トマトの調理方法も考えて教えないといけないんだが、水瓜は食材鑑定の結果も生食推奨だから使い道があんまりないんだよな。
コメが見つかっていれば塩を使って浅漬けとか米ぬかを使ってぬか漬けとかそれ単体で副菜に使えるんだけど。
「まあ、あとは森で見つけられた食材によるかな。ということで、二人とも、明日は村長のところに行って森の中にはいる許可をもらったら森に行くぞ」
「ミーナも一緒に行っていいの?」
「マサト兄ちゃん、ミーナは危ないよ。いや、マサト兄ちゃんも危ないんだけど……」
「いやいや、さっき契約書にサインをしてもらったから怪我はしないはずだよ。ああ、自分で傷つけた場合は適用外らしいから包丁とかナイフとか使うときに気を付けるのは変わらないからな」
「うーん、でも……」
「レイジ、剣士の天職の力で俺たちを守ってくれるんだろ? この村の森でさえ守れなかったら旅に出た時に不安じゃないか? 危なかったら戻ってくればいいんだから練習だと思って一緒に行ってくれないか?」
そこまで言うと、レイジはしぶしぶだがうなずいてくれた。
まだ、戦い方を模索している最中だから守るものがいるという状況に不安があるのだろう。
だが、新たな食材を探すためにも森の中に一度は入ってみるのは決定事項だ。
「レイジ、悪いとは思うがよろしく頼むよ。あと、明日は朝のうちにお弁当を用意するから朝になったらうちで一緒に料理をしよう」
パンはまだ作り置きのものがあるし、三人で食べるのなら調味料は食堂のものを使っても問題ないからハンバーグでも作ってハンバーガーにしよう。
この前調べたらミンサーも食堂内にあったからミンチを作るのにいちいち包丁でたたかなくてもいいから多分作れるだろう。
つなぎ用の生卵はないがパン粉とマヨネーズで代用は可能だろう。
「マサトさん、朝から料理するのはいいですけどちゃんと起きてくださいね」
「そうだよ、僕たちが起こしに来るとマサト兄ちゃん、いつも寝ぼけまなこじゃん」
「うっ、努力するよ」
いや、名誉のためにも言っておくが、決して俺が朝に弱いということではなく、この村の住人の朝が早すぎるのだ。
村人は日が出る前には起きだして朝食の野菜を食べて、日が出ると同時に畑へと仕事をしに出掛けていくのだ。
目覚まし時計もなしに毎日、毎朝そんな習慣を平然とやっている人たちと一緒にしないでほしい。
とにかく、レイジとミーナ相手にそんな守れないような約束をしておく。
いや、一応自室に設置してあった目覚まし時計のアラームをセットはしておくが、二人が帰った後に軽く下ごしらえをするつもりだからどうなるのかはわからない。
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