料理を作って異世界改革

高坂ナツキ

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1章 名もなき村

24 ドラゴンマッシュルーム

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「さて、レイジも斑芋撒きに行ったから今のうちに夜飯の準備をするかな」

「マサトさん、今日拾ってきた野菜とか果物を使うんでしょ?」

 レモンライム、白根、龍グルミ、ドラゴンマッシュルーム。
 白根が大根と似ているのなら、葉の部分の苦みはアクをとる作業を追加すれば何とかなるかもしれない。
 苦みが取れれば、白根と緑菜でコンソメスープを作ってもいいかもしれない。
 和風ハンバーグも一瞬考えたが、ひき肉を作る作業はレイジにも手伝ってもらった方がいいからまたの機会でいいだろう。

 あとは、おでん、みそ汁、大根ステーキ、煮物、イカ大根にブリ大根……。
 どれも白米が欲しくなるな。

 ドラゴンマッシュルームは傘が大きなものがあれば、ひき肉を詰めてもいいだが……こちらもひき肉を作らなきゃいけないし、そもそもドラゴンマッシュルームの傘は肉を詰められるほど大きくない。
 ドラゴンマッシュルームは適当に茹でた後に白根をおろしたのと和えてポン酢でもかけるか。

 龍グルミはくるみ割り器で割れるか確かめてデザート代わりに出すかな。

 レモンライムはレモンライム水……じゃあ、昼と同じになるし、食堂に設置してある炭酸水のサーバーから炭酸水を出してレモンライムのしぼり汁と砂糖水を加えるかな。

「うん、今日の献立は決まったから作っていこうか。ミーナは白根を洗ってくれるか?」

 ミーナが白根を洗ってくれている間に俺は道具を準備しておこう。
 ミキサー、くるみ割り器、おろし金があればいいかな、鍋と包丁は取り出しやすい場所に置いてあるからわざわざ出すほどでもないし。

「よーし、じゃあ説明していくか。白根は葉の部分も茎と根の部分も食べられるんだけど、葉の部分は一回塩で茹でないと苦いから茎と根の部分と一緒にならないように切る。茎と根の分かれ目は細くなっていくところで茎のほうが甘くて根のほうが辛くなる」

 大根だと茎と根の分かれ目は茎が青くなっているからわかりやすいんだが、白根の場合は全体が白なので目安がない。
 だから、ざっくりと細くなっていくところで分ける。
 まあ、切った部分を鑑定すれば上側が白根の茎、下側が白根の根と表記されるからあながち間違ってもいないのだろう。

「水を張った鍋を火にかけて、沸騰したら塩を一つまみ、まあ、スプーン一杯くらいでいいかな、入れて数分間茹でたら、冷水にさらして冷やしてしっかり水気を切る」

 正直、異界のレシピで調べた項目で適量、とか少々、とかをミーナに教えるのが大変だ。
 慣れてくればその表記でも何となくできるのだろうが、小さじ一杯とか大さじ一杯とか表記してほしい。

「白根の茎と緑菜は一口大に切って、これまた一口大に切った白根の葉とあわせてスープにしよう。ミーナは葉のほうの調理を今言ったようにしてくれるか?」

 俺のほうは白根の茎と緑菜を切っていく。
 緑菜のほうはざく切りにすれば一口大だが、白根のほうはいちょう切りにしておこう。

「ドラゴンマッシュルームは二人とも微妙な反応してたから俺一人で料理しようか?」

「ダメだよ、マサトさん。ちゃんと教えて」

「わかったわかった。ドラゴンマッシュルームはきちんと熱を通さないと死ぬ危険もあるからきちんと茹でること。ドラゴンマッシュルームは焼くと苦みが増すらしいから今回は茹でることにして、水を張った鍋にドラゴンマッシュルームを入れて沸騰するまで茹でていく」

 教えてとは言ったものの、食べるとまでは言っていないから分量は一人分でいいかな。
 小鍋に水を張ってドラゴンマッシュルームを適当に一人分入れたらあとは火にかけていくだけだ。

「おっ、白根の葉のほうも準備は万端だな。じゃあ、まずはこっちの鍋に水とコンソメキューブを入れて白根の茎を入れていく」

「? マサトさん、全部一緒に入れちゃダメなの?」

「白根の茎は固くて火が通りにくいから水から、緑菜や白根の葉は柔らかくて火が通りやすいから沸騰してから入れるんだ」

 いわゆる、根物は水から、葉物は湯からというやつだ。
 もちろん、この世界の植物は独自の毒を持っていたり、前の世界の常識が通用しない部分もあるから完全にこの考え方が通用するわけではないが、白根と緑菜に関していえばこれで問題ないだろう。

「レモンライムは昼のように絞り器で果汁を取り出してもいいだが、今回は量をとりたいから果肉だけ取り出してミキサーにかけていこう」

 ミーナと二人でレモンライムを切っていけばあっという間だ。

「マサトさん、皮とか種はどうするの?」

「皮はあとでデザートにでもするかな。種のほうは畑に植えてみたいから皿に取っておいてくれないか?」

 レモンライムは前の世界とは違って農薬を使ってるわけでもないので、そのままピールにしても問題ないだろう。
 あるいは、寒くなったりしたら温かいレモネードを皮ごと使って作ってみてもいいかもしれない。

 ミキサーには電源コードなんてものが存在しないにも関わらず、きちんと動作する。
 これは本当に神様の力としか思えない。
 ミーナは最初、ミキサーの出す大音量にびっくりしていたけど、細切れになってどんどんと液体になっていく様子のほうが気になるのかミキサーをずっと見つめていた。
 正直、レモン汁自体は食堂内の調味料に存在するので無理にレモンライムを使う必要もないのだが、ステータスを伸ばすためにはこの世界の食料が必要なのでレモン汁ではなくレモンライムを使う意味もあるだろう。

 そういう意味では小麦粉も十分以上に食堂に存在しているが、白根の種も必要だしスパイスや砂糖も見つけていく必要があるだろう。
 あと、できれば白米、いや玄米でもいいから米が食いたい。
 醤油はともかく味噌が洋食と合わないからみそ汁も飲めないし……あ、でも味噌パンとかあるし、野菜スティックに味噌ディップでも……いや、やはり炊きたての米とみそ汁だ。

「絞った果汁はいったん冷蔵庫に入れておいて、メインはデビルボアの肉を適当に焼いておけばいいかな」

 実は、あんまり使ったことのない焼き肉のたれを使ってみたかったので味付けはそれで。
 これもこの世界で自作してみたいが、レモンは手に入ったものの、ほかの材料はどうすればいいのか見当もつかない。
 とりあえず、醤油を作るためにも大豆と米が必要不可欠だな。

「マサトさん、お鍋ぐつぐつしてきたよ」

 ドラゴンマッシュルームのほうを先に入れたので見てみると、なんということでしょう。
 黒に近い茶色だったドラゴンマッシュルームが真っ赤になっています。
 いや、どういうことだ、これ。

『名前:ドラゴンマッシュルーム 可食部:傘 年齢:十日 食用:可 龍グルミの木に生える特殊なキノコ。傘はそのまま食べると胃の中で胞子をばらまき、胃の中をキノコだらけにするため普通の生物が生で食べると死ぬ。胞子は熱を通すと胞子の生殖能力が無くなるので食用可能になる。焼くと苦みが増すので茹でるか蒸す調理方法に向いている。他のキノコと共生しないので龍グルミの木を独占している。熱を通すと真っ赤になり、この状態では胞子は飛ばない』

 食材鑑定は状態が変化すると文言が変化することもあるから、鑑定してみればどうもこれが熱が通った合図らしい。
 いや、わかりやすいのは良いんだけれど何というか毒々しいというか、けばけばしいというか……。

「ドラゴンマッシュルームはこれで熱が通ったみたいだからざるにあげて水気を切っておこう」

「……マサトさん、それ、本当に食べるんですか?」

「……聞かないでくれ。俺も食べて大丈夫なのは分かっていても食べるかどうか迷ってるんだから」

 食材鑑定でも味の説明とか美味しいとか出てなかったから心配なんだよな。

「白根のほうは、お玉で一つ掬ってみて串が簡単に刺さったら火が十分に通ってるから緑菜と白根の葉を入れていこう」

 味付けはコンソメを入れてあるから、あとは最後に塩コショウを入れておけばいいだろう。
 あとはレモンライムのピールだけど、そろそろレイジも帰ってくる頃合いだろうし明日か夜にでも作るかな。
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