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1章 名もなき村
29 森へ、再び
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結論から言えば、登山用のリュックサックが寝室にしている部屋から発見できたので村長から籠を借りなくてもよくはなった。
正直、食堂とリュックサックの関係性が見えないが……まあ、神様からの粋な贈り物ということで思考を放棄しておこう。
そういえば、夕食に出した龍グルミのクルミパンとローストしたクルミは好評と不評がはっきりと分かれた。
レイジはクルミパンは柔らかい部分と硬い部分が思わぬところで来るのがあんまり好きではないらしく、反面ローストした方は塩味が絶妙でかなり好みのようだ。
ミーナはクルミパンはクルミの香ばしい感じが好きらしいのだが、ローストした方は口の中がパサパサして苦手らしい。
俺としては好みがはっきりと出てきたのはいい傾向だと思う。
以前は緑菜だけでも文句の一つも出なかったのに、今では食べられるだけでは満足できない。
多分こういうところから食の発展って始まるんだと思うんだ。
まあ、これを世界中に広げていかないといけないと思うと気が遠くなるのも事実なのだけど、最初の一歩を踏めたような気分になるのも事実だ。
「また、マサト兄ちゃんが考えこんじゃった」
「しょうがないよお兄ちゃん。マサトさんは考え出すと周りが見えないから」
「いやいや、ちゃんと周りは見えてるぞ。さすがに歩きながら深くは考え込まないって」
というわけで、朝も早くから村長のところに向かうためにレイジとミーナと一緒に村の中を歩いているところだ。
今日は数人の村人と一緒に森の中を探索……というか、白根やレモンライムのところまで案内して収穫しつつ使い方を教えることになっているからな。
「おう、あんちゃん。今日も眠そうな顔をしてるのう」
「この村の朝が早すぎるんですよ。あとは、今日の準備をしていて寝るのが遅かったからですかね」
なんだかんだで、リュックサックを見つけてから今日の荷物を全部入れるまでかなりの時間がかかってしまったからな。
「あんちゃんはどんな環境で育ってきたんじゃ? このくらい早いうちにも入らんじゃろうて」
「農村の出身ではないので十分以上に早いですよ」
正確には農村出身かどうかも記憶がないのでわからないが、村のみんなについていけていない時点で農家ではなかったんだろう。
「村長、森に一緒に行ってくれる人たちは準備できてるんだよね?」
「もちろんじゃ、斑芋だけ撒いていってくれりゃあそれでええからな」
村長の指さす先には籠などの収穫物を入れる入れ物を持った村人が数人待機していた。
「では、今日もレイジとミーナは一緒に連れていきますね」
「まて、レイジはともかくミーナも連れていくんか?」
「皆さんには収穫したものを現地で味見してほしいんですよ。ミーナは料理する際の俺の手伝いを是非してほしいんで」
まあ、実際にはそれもあるのだが、レイジだけ連れて行ってミーナを置いていったら確実にミーナから圧がかけられるからな。
「まあ、お前さんらが納得してるならもうええが、くれぐれも怪我せんように気を付けるんじゃぞ」
村長の温かい言葉を背に出発する。
まあ、先に斑芋の畑に行って斑芋撒きをしなければならないのだが……。
「兄ちゃんもレイジも今日はよろしくな。……ところで、ミーナは本当についてくるんか?」
「まあまあ、この前に三人で森に入った時にもレイジがきっちりと守ってくれたので大丈夫ですよ。みなさんも自分の身を守れるくらいには強いんでしょう?」
軽く鑑定した結果ではここに集まっている村人は全員、戦闘系の天職を持っている人なので獣や魔獣が出てきても自分の身を守るくらいのことはできるだろう。
「だったらいいが、森は危ないところだという認識だけは忘れないでくれよ」
「ええええ、わかっていますよ。獣や魔獣が現れた際には皆さんの指示に従って後方にすぐに下がりますのでよろしくお願いしますよ」
神様の加護で傷を負わなくても戦闘能力がないのは事実だし、加護を見せびらかすつもりもないからここは下手に出ておくのが得策だろう。
「じゃあ、二人は何のためについてくるんだ? 道案内か?」
「道案内もありますけど収穫したものを皆さんにも食べていただきたいと思っていますので、料理をするためについていくんですよ。料理するための道具もこうやって運んでいますしね」
「その大荷物はそのためか。味なんか知らなくても村長がやれと言えば俺たちはやるぜ?」
「まあ、そうだとは思いますけど森に入るのは危険だっておっしゃったばかりじゃないですか? 危険に身を晒す価値があるのか知っているのと知らないのとじゃやる気が違ってくるでしょう?」
村長の畑で働かせてもらって、村長の畑の収穫物から日々の糧を得ている彼らだからこそ、村長の一言には逆らえないだろう。
それでも、不平や不満はたまるはずだ。
それを解消するには自身が、何のために、誰のために行動しているのかを正確に知ることだろう。
手間がかかるとはいえ、村長の畑以外にも自分たちが食べられるものがあると知るのは、自身の畑を持っていない彼らにこそ必要なことだ。
正直、食堂とリュックサックの関係性が見えないが……まあ、神様からの粋な贈り物ということで思考を放棄しておこう。
そういえば、夕食に出した龍グルミのクルミパンとローストしたクルミは好評と不評がはっきりと分かれた。
レイジはクルミパンは柔らかい部分と硬い部分が思わぬところで来るのがあんまり好きではないらしく、反面ローストした方は塩味が絶妙でかなり好みのようだ。
ミーナはクルミパンはクルミの香ばしい感じが好きらしいのだが、ローストした方は口の中がパサパサして苦手らしい。
俺としては好みがはっきりと出てきたのはいい傾向だと思う。
以前は緑菜だけでも文句の一つも出なかったのに、今では食べられるだけでは満足できない。
多分こういうところから食の発展って始まるんだと思うんだ。
まあ、これを世界中に広げていかないといけないと思うと気が遠くなるのも事実なのだけど、最初の一歩を踏めたような気分になるのも事実だ。
「また、マサト兄ちゃんが考えこんじゃった」
「しょうがないよお兄ちゃん。マサトさんは考え出すと周りが見えないから」
「いやいや、ちゃんと周りは見えてるぞ。さすがに歩きながら深くは考え込まないって」
というわけで、朝も早くから村長のところに向かうためにレイジとミーナと一緒に村の中を歩いているところだ。
今日は数人の村人と一緒に森の中を探索……というか、白根やレモンライムのところまで案内して収穫しつつ使い方を教えることになっているからな。
「おう、あんちゃん。今日も眠そうな顔をしてるのう」
「この村の朝が早すぎるんですよ。あとは、今日の準備をしていて寝るのが遅かったからですかね」
なんだかんだで、リュックサックを見つけてから今日の荷物を全部入れるまでかなりの時間がかかってしまったからな。
「あんちゃんはどんな環境で育ってきたんじゃ? このくらい早いうちにも入らんじゃろうて」
「農村の出身ではないので十分以上に早いですよ」
正確には農村出身かどうかも記憶がないのでわからないが、村のみんなについていけていない時点で農家ではなかったんだろう。
「村長、森に一緒に行ってくれる人たちは準備できてるんだよね?」
「もちろんじゃ、斑芋だけ撒いていってくれりゃあそれでええからな」
村長の指さす先には籠などの収穫物を入れる入れ物を持った村人が数人待機していた。
「では、今日もレイジとミーナは一緒に連れていきますね」
「まて、レイジはともかくミーナも連れていくんか?」
「皆さんには収穫したものを現地で味見してほしいんですよ。ミーナは料理する際の俺の手伝いを是非してほしいんで」
まあ、実際にはそれもあるのだが、レイジだけ連れて行ってミーナを置いていったら確実にミーナから圧がかけられるからな。
「まあ、お前さんらが納得してるならもうええが、くれぐれも怪我せんように気を付けるんじゃぞ」
村長の温かい言葉を背に出発する。
まあ、先に斑芋の畑に行って斑芋撒きをしなければならないのだが……。
「兄ちゃんもレイジも今日はよろしくな。……ところで、ミーナは本当についてくるんか?」
「まあまあ、この前に三人で森に入った時にもレイジがきっちりと守ってくれたので大丈夫ですよ。みなさんも自分の身を守れるくらいには強いんでしょう?」
軽く鑑定した結果ではここに集まっている村人は全員、戦闘系の天職を持っている人なので獣や魔獣が出てきても自分の身を守るくらいのことはできるだろう。
「だったらいいが、森は危ないところだという認識だけは忘れないでくれよ」
「ええええ、わかっていますよ。獣や魔獣が現れた際には皆さんの指示に従って後方にすぐに下がりますのでよろしくお願いしますよ」
神様の加護で傷を負わなくても戦闘能力がないのは事実だし、加護を見せびらかすつもりもないからここは下手に出ておくのが得策だろう。
「じゃあ、二人は何のためについてくるんだ? 道案内か?」
「道案内もありますけど収穫したものを皆さんにも食べていただきたいと思っていますので、料理をするためについていくんですよ。料理するための道具もこうやって運んでいますしね」
「その大荷物はそのためか。味なんか知らなくても村長がやれと言えば俺たちはやるぜ?」
「まあ、そうだとは思いますけど森に入るのは危険だっておっしゃったばかりじゃないですか? 危険に身を晒す価値があるのか知っているのと知らないのとじゃやる気が違ってくるでしょう?」
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それでも、不平や不満はたまるはずだ。
それを解消するには自身が、何のために、誰のために行動しているのかを正確に知ることだろう。
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