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3章 王都
06 天職:記録
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「そういえば、二人はどんな天職なんだ?」
うどんも食べ終えて、ライアンさんたちも仕事に戻っていったから夕食の準備をしつつ手伝いに来てくれているエリックとルッカに質問してみた。
料理人の天職持ちはいないって聞いていたから料理人ではないのは知っているけど、何の天職かは知らないんだよな。
「私の天職は計算ですよー」
元気よく答えたのはルッカだった。
しかし、計算の天職か……村でも何人かいたけど材料の分量とか簡単に覚えるから料理においては結構、当たりの天職なんだよな。
まあ、暗記しているだけだからオリジナリティ出したり、料理人の天職持ちみたいに一つ教えたら関連料理のあたりが付くわけじゃないから料理人の天職持ちにはかなわないわけだけど。
しかし、メイド見習いには不向きというかあんまり意味のない天職だと思うが……商人とかになった方が役に立つんじゃなかろうか。
「私の天職は、記録です」
不承不承というか、あまり言いたくないように言ってきたのがエリックだ。
しかし、記録……聞いたことのない天職だな。
「悪いが、記録の天職は聞いたことがないな。どんなことができるんだ?」
「ハズレの天職ですよ。物の数を覚えておいたりするだけの天職です」
ハズレ……とはいえ、料理人の天職もハズレって言われていたしな。
物の数を覚えておく、在庫整理や書類仕事で役に立ちそうだがな。
「物の数を覚えておくって具体的に言うとどんな感じなんだ?」
「そうですね、例えば館で働いている人数は正確にわかりますし、花瓶に入れる水の量も正確にわかります」
「エリックはすごいんですよ。私はいつも花瓶に水があふれるくらい入れてしまうんですけど、エリックは間違えたことないんですから」
そういえば、この屋敷、というかこの世界には水差しみたいなものはないから花瓶とかに水を入れるときは桶と柄杓みたいなのを使うんだよな。
しかも、領主館といい、タウンハウスといい、お世辞にも明るいとは言えないから結構ものにぶつかったりするんだよな。
まあ、灯りがほとんどなくて蠟燭も夜にしか使えないくらいには貴重だから仕方ないのだが。
「ふーん、例えばエリック、今ミーナがパンの材料をそろえてくれたけど同じ分量を用意できるか?」
「たぶんできますよ」
エリックに小麦が入った袋とドライイースト、それに塩の入った袋を渡してみる。
「ええと、こんな感じですかね」
それぞれの材料を皿の上に出していくエリック。
見た感じではミーナが出した分量と変わらないように見えるが、実際はどうだ?
「じゃあ、秤を使ってみてみるか」
いやはや、驚いた。
エリックの量った分量はミーナが用意した分量と寸分たがわなかった。
「いや、これはすごい天職じゃないか? 見ただけでここまで正確に再現できるものなのか?」
「そこまですごいことですかね? 見たままを真似ただけですよ」
エリックはだけというが、料理人の天職持ちくらいしかこんな芸当はできないぞ。
もちろん俺にも不可能だ。
計算の天職持ちは分量を覚えるのは簡単にこなすが、量るのは難しいらしいから分量ごとに器を作ったくらいだぞ。
だから、村には大匙と小さじを作っておいて来たんだ。
一応計量カップもどきも作ってみたが、最大容量ならともかく木製の器では、印の線が分かりにくいからあまり使われていなかったな。
「もしかして、時間とかもわかるのか?」
「時間ですか? 基準がわからないですけどなんとなく今日は掃除に時間がかかっているなとか、早く終わったなとかはわかりますね」
そういえば、この世界には時計がないんだった。
食堂には個人の部屋に目覚まし時計があるし、調理場にはタイマーとかがあるからあんまり深く気にしてなかったけど、村では太陽が出たら働いて、日が沈む前には家に帰るような生活だったもんな。
「エリック、試しに発酵の時間や焼成の時間を覚えてみてくれないか?」
シェリルバイト領でも時間管理は料理人の天職持ちの領分だった。
パン焼きを手伝いに来ていた他の天職持ちでは、時間の管理ができなくて窯で焼いたものはムラがあるのが普通だった。
もちろん、食堂のオーブンは自動化されているので誰が使っても同じ時間に焼成が終わるのだが、この世界で機械化されたオーブンを再現するのは今の段階では不可能だしな。
「試してみてもいいですけど、それほど重要なことなんですか?」
「ああ、料理人の天職持ちが少ない現状ではパンに関してはエリックに一任するかもしれないほど重要だ」
俺たちが王都にいる間はいいとしても、いなくなった後に料理人の天職持ちを連れてこないとパンが作れなくなったら困るだろう。
一応、イーリスたちには日持ちができるような堅パンの作り方も教えてはあるけど、かなり不評だったからな。
王都でパンが作れなかったら料理が広まらない可能性もある。
爆弾米にしても炊き加減を見るには時間を覚えるのが手っ取り早いし……。
飯盒なんかができれば見た目でもわかりやすいんだけど、この世界にはポーションづくり用のでかい鍋しかないしな。
エリックがうまくいけば爆弾米の炊き方も教えよう……できなかったその時は……まあ、その時は麺類中心に教えるかな。
うどんも食べ終えて、ライアンさんたちも仕事に戻っていったから夕食の準備をしつつ手伝いに来てくれているエリックとルッカに質問してみた。
料理人の天職持ちはいないって聞いていたから料理人ではないのは知っているけど、何の天職かは知らないんだよな。
「私の天職は計算ですよー」
元気よく答えたのはルッカだった。
しかし、計算の天職か……村でも何人かいたけど材料の分量とか簡単に覚えるから料理においては結構、当たりの天職なんだよな。
まあ、暗記しているだけだからオリジナリティ出したり、料理人の天職持ちみたいに一つ教えたら関連料理のあたりが付くわけじゃないから料理人の天職持ちにはかなわないわけだけど。
しかし、メイド見習いには不向きというかあんまり意味のない天職だと思うが……商人とかになった方が役に立つんじゃなかろうか。
「私の天職は、記録です」
不承不承というか、あまり言いたくないように言ってきたのがエリックだ。
しかし、記録……聞いたことのない天職だな。
「悪いが、記録の天職は聞いたことがないな。どんなことができるんだ?」
「ハズレの天職ですよ。物の数を覚えておいたりするだけの天職です」
ハズレ……とはいえ、料理人の天職もハズレって言われていたしな。
物の数を覚えておく、在庫整理や書類仕事で役に立ちそうだがな。
「物の数を覚えておくって具体的に言うとどんな感じなんだ?」
「そうですね、例えば館で働いている人数は正確にわかりますし、花瓶に入れる水の量も正確にわかります」
「エリックはすごいんですよ。私はいつも花瓶に水があふれるくらい入れてしまうんですけど、エリックは間違えたことないんですから」
そういえば、この屋敷、というかこの世界には水差しみたいなものはないから花瓶とかに水を入れるときは桶と柄杓みたいなのを使うんだよな。
しかも、領主館といい、タウンハウスといい、お世辞にも明るいとは言えないから結構ものにぶつかったりするんだよな。
まあ、灯りがほとんどなくて蠟燭も夜にしか使えないくらいには貴重だから仕方ないのだが。
「ふーん、例えばエリック、今ミーナがパンの材料をそろえてくれたけど同じ分量を用意できるか?」
「たぶんできますよ」
エリックに小麦が入った袋とドライイースト、それに塩の入った袋を渡してみる。
「ええと、こんな感じですかね」
それぞれの材料を皿の上に出していくエリック。
見た感じではミーナが出した分量と変わらないように見えるが、実際はどうだ?
「じゃあ、秤を使ってみてみるか」
いやはや、驚いた。
エリックの量った分量はミーナが用意した分量と寸分たがわなかった。
「いや、これはすごい天職じゃないか? 見ただけでここまで正確に再現できるものなのか?」
「そこまですごいことですかね? 見たままを真似ただけですよ」
エリックはだけというが、料理人の天職持ちくらいしかこんな芸当はできないぞ。
もちろん俺にも不可能だ。
計算の天職持ちは分量を覚えるのは簡単にこなすが、量るのは難しいらしいから分量ごとに器を作ったくらいだぞ。
だから、村には大匙と小さじを作っておいて来たんだ。
一応計量カップもどきも作ってみたが、最大容量ならともかく木製の器では、印の線が分かりにくいからあまり使われていなかったな。
「もしかして、時間とかもわかるのか?」
「時間ですか? 基準がわからないですけどなんとなく今日は掃除に時間がかかっているなとか、早く終わったなとかはわかりますね」
そういえば、この世界には時計がないんだった。
食堂には個人の部屋に目覚まし時計があるし、調理場にはタイマーとかがあるからあんまり深く気にしてなかったけど、村では太陽が出たら働いて、日が沈む前には家に帰るような生活だったもんな。
「エリック、試しに発酵の時間や焼成の時間を覚えてみてくれないか?」
シェリルバイト領でも時間管理は料理人の天職持ちの領分だった。
パン焼きを手伝いに来ていた他の天職持ちでは、時間の管理ができなくて窯で焼いたものはムラがあるのが普通だった。
もちろん、食堂のオーブンは自動化されているので誰が使っても同じ時間に焼成が終わるのだが、この世界で機械化されたオーブンを再現するのは今の段階では不可能だしな。
「試してみてもいいですけど、それほど重要なことなんですか?」
「ああ、料理人の天職持ちが少ない現状ではパンに関してはエリックに一任するかもしれないほど重要だ」
俺たちが王都にいる間はいいとしても、いなくなった後に料理人の天職持ちを連れてこないとパンが作れなくなったら困るだろう。
一応、イーリスたちには日持ちができるような堅パンの作り方も教えてはあるけど、かなり不評だったからな。
王都でパンが作れなかったら料理が広まらない可能性もある。
爆弾米にしても炊き加減を見るには時間を覚えるのが手っ取り早いし……。
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