料理を作って異世界改革

高坂ナツキ

文字の大きさ
108 / 150
4章 聖王国

10 クリームシチュー

しおりを挟む
「よーし、今日はミルクが手に入ったからミルクを使った料理、クリームシチューを作るぞ!」

「スープなんですよね? じゃあ、主食はパンのほうがいいですか?」

「そうだな。クリームシチューはとろっとしてるから米でも合わないことはないけど、最初はパンのほうがいいかな。ミーナにはシチュー作りを手伝ってほしいからレイジはパンを焼いてくれるか」

「もちろんだよ、マサト兄ちゃん」

「……私はー、何か手伝うことあるー?」

「うーん、リリーの料理の腕前がわからないからなぁ。とりあえず、見学ってことでもいいぞ」

「……わかったー」

 この村には着いたばかりだから、リリーを含む村人たちのステータスは全然成長してないんだよな。
 パン作りも結構、力がいるから今は手伝ってもらってもそこまで戦力にはならないだろう。
 天職:酪農家も料理に関するステータスボーナスはなさそうだしな。

「ミーナ、シチューの材料は斑芋、ラージキャロット、サウザンドオニオン、キラーバードに薄力粉、バターにミルク、あとは味付け用の塩と胡椒くらいだ」

「ミルクはさっき手に入れたって言ってましたよね。バターは食堂にはありますけど、この村で手に入るんですか?」

「バターはミルクから作ることができるんだよ。リリーの天職は獣からミルクを搾ったり、ミルクを使った加工品を作る天職のはずだからリリーが居ればバターも作れるだろう」

 ミーナの心配もわかる。
 俺は基本的にその国で作れる料理以外は大勢の人には振舞わないからな。
 今回作るクリームシチューは用意した材料の量から、村人全員に食べてもらうのが前提だから、村で作れるかどうかを心配しているのだろう。

「じゃあ、野菜の種を多めに配って畑で育ててもらうようにした方がいいですね。お肉はキラーバードじゃなきゃダメなんですか?」

「鳥でも牛でも豚でも美味しくなるだろうけど、鳥なら聖王国でもよく獲れるから鳥肉にしようかなと。食堂にはキラーバードの肉が大量にあるからってのも理由だ」

「わかりました。じゃあ、調理に入りますね。具材の大きさはいつものスープと同じくらいですか?」

「そうそう、サウザンドオニオンはスライス、斑芋とラージキャロット、キラーバードは一口大だな」

 もう何年もミーナと一緒に料理を作っているから、最小限の会話でもなんとなく言いたいことが伝わるようになってきている。
 特にスープ関係は毎日作っているから具材の大きさも共通認識の内だ。

「クリームシチュー作りも結構いろんな手順があるんだけど、今回は結構楽なレシピで作るぞ。まずはサウザンドオニオンをバターで炒める」

 先に鶏肉に焼き目を付けたり、ホワイトクリームを事前に作って置いたりするようなやり方もあるけど、今回は全部の具材を炒めて、小麦粉を振りかけて最後にミルクを加えるレシピにしよう。

「……ふーん、これがバターなんだー」

「ミルクを一晩程度涼しいところに置いておくと、成分が分離してな。分離して表面にできるものを密閉できる容器に詰めて振ったりして衝撃を与えるとできるんだ」

 バターづくりも本格的にやろうと思えばもっといろんなやり方があるんだろうけど、その方面は酪農家の天職を持っているリリーがこれから発見していくだろう。

「……うん、なんとなくできそうな気はする」

「まあ、ミルクもクリームシチューに使っても全然余るから、余剰分はバター用に冷暗所に保管しておくな」

「具材は煮るんじゃなくて、先に炒めるんですね」

「そうそう。サウザンドオニオンに火が通ったら、肉を入れて、そっちも焼き色がついてきたら、斑芋とラージキャロットを入れる。具材を入れ終わったら小麦粉と塩胡椒を入れて粉がなくなったら水で煮る感じかな」

「普段のスープよりも少し手間がかかるんですね」

「まあ、その分いつものスープとは違った味わいのある料理になるからな」

 王国は年中常春というか、冬になってもそこまで寒くはならなかったけど、王国より北にある聖王国では冬になると雪が降らないまでも冷たい雨が結構降るからな。
 温かさが持続するクリームシチューは悪くないだろう。

「水である程度煮たら、ミルクを入れるんだが……ミルクはあまりグツグツ煮ると分離しちゃうから入れる前に火を弱くするのを忘れないようにな」

 ミルクを使った料理で失敗するとしたら、分離しちゃうことが多いからな。
 その辺はきちんと注意しておかないといけない。

「レイジ、パンのほうはどうだ?」

「マサト兄ちゃん、もうすぐ焼けるよ」

「よーし、じゃあ村人に振舞う前に味見をするか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

処理中です...