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5章 帝国
02 料理依頼
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「お話ししたいことはいろいろありますけれど、皇帝陛下もお待ちですのでそろそろ出発しましょうか」
帝国の皇女であるミレーヌがいるからか、帝国側は馬車を用意してくれていた。
「帝国には魔獣じゃない馬がいるんだ」
「……ああ、王国ではそういえばグリーンホースという魔獣に車を牽かせているのでしたね」
「そうそう、聖王国ではブラックカウに牽かせた牛車があったな」
「帝国で車を牽かせるの利用しているのはブラウンホース、王国のグリーンホースとは違って獣ですが、その分、力も弱いです」
「四人も乗って大丈夫なのか?」
「二頭立てなので大丈夫ですよ。兵士の方には周囲の警戒もあるので歩いてもらうことになりますけどね」
警戒……まあ、帝国は小国を保護、つまりは併呑して大きくなったって言ってたからな。
「マサトさん、警戒するってことは危険があるってことですか」
「マサト兄ちゃん、僕も外を歩いていこうか?」
「ああ、多分大丈夫だろ。料理を食べてない人間相手ならレイジは過剰戦力になりかねないしな」
帝国内では料理の技術は広めていないし、ウィリアムさんが単独で帝国にやってきたのなら料理の技術は伝えられていないだろう。
イーリスやロバート、ボブがいれば違ったかもしれないけど、ウィリアムさんは完全に食べる専門だったしな。
「さっきミレーヌが言ってただろ? 帝国は周囲の小国を保護することで大きくなったって」
「そうです。周囲の小国は魔王や魔獣の被害を恐れて、それまで最大規模だった帝国に庇護を求めました」
「保護されたのに帝国の兵士に襲い掛かる人がいるんですか?」
ミーナの言い分ももっともだ、普通の状況なら助けてもらったなら感謝するのが当たり前。
「国の上層部が居なくなった結果、庇護されたのなら国民は感謝しかないだろうけどな。……だけど、王族や貴族が残ってたなら話は別だろうな」
「そうです。有力者の娘を差し出した小国の中には、自国を守れるほどの力があれば取って代われると考えている国も少なくはないのです」
「帝国の一部になったのに上に逆らうってこと?」
「レイジの言いたいこともわかるよ。王国では……というよりもシェリルバイト家は王族に忠誠を誓って行動していたからね」
ジョシュアさんやランドールさんはいち早く料理の技術を取り入れることになって、王国でも屈指の戦闘力と豊富な食糧資源を手に入れていた。
だけど、シェリルバイト家の人が王家に反旗を翻すことはなかった。
「王国の貴族……それも国を興した時点で騎士として王族に付き従っていた二十家は特に忠誠心が強いですからね」
「帝国に保護を求めた小国の王族はそうじゃない。自分たちの保身のために強国を頼っただけで、王としてのプライドは健在ってことだろうね」
「守ってもらったのに裏切るなんて信じられませんね」
ミーナの言うことは分かるんだけど、やっぱりきちんとしていたシェリルバイト領の出身だから人の悪意とかがよくわからないんだろうな。
「あの村長とかジョシュアさんたちを見ていればその感想もわかるけど、多分、王国にもそういう考えの人はいたと思うぞ」
王宮で俺を襲ってきたあのよくわからない貴族とかな。
「そういうわけで、帝室が囲ってるということをアピールするためにもわたくしが貴方たちの迎えに来たというわけです」
「まあ、こっちとしても馬車を出してもらって、助かってるからね」
聖王国は結局徒歩でまわったけど結構時間食ったからな。
聖王国は平原だったから徒歩でもそれほど辛くはなかったけど、帝国は見ただけでも山が多いのがわかる。
王国ほどには森はなさそうだけど、村や町をまわりながら行動するとなるとかなり回り道することになるだろうな。
「そういえば皇帝陛下に会うってことは向かう先は帝都なんだろ? どのくらいかかるんだ?」
「馬車を使って三日ほどですね。……それで、お願いなのですが……道中、兵士たちにマサト様の料理を振舞ってはいただけませんか?」
料理か……確かに兵士に振舞うっていうのは料理の技術を広めるためには楽な手段ではあるんだよな。
「それは無理ですよ」
俺が断ろうと思った矢先にミーナが断ってしまった。
「それはどういう?」
「ああ、手持ちの食料が少ないんですよ。兵士の方はざっと見た感じでも三十人以上はいるでしょう?」
「偵察に出ているものも合わせれば五十人です」
「こっちは三人で旅してきましたからね。手持ちの食料も三人が十分に食べられる量はあるんですけど、流石に五十人分を三日は無理ってことですよ」
「では、大丈夫ですね。馬車はこれ以外にもう二台あって、そちらには食料を冷やしながら運んでいるんですよ」
なるほど、兵士に囲まれた馬車がまだあったことに位は気づいていたけど、あれには食料が積んであったのか。
てっきり重傷者とかが出た場合の看護用の馬車かと思ってたよ。
「では、兵士に中から何人かと、ミレーヌが手伝ってくれれば兵士に料理を振舞うことは可能だよ」
帝国の皇女であるミレーヌがいるからか、帝国側は馬車を用意してくれていた。
「帝国には魔獣じゃない馬がいるんだ」
「……ああ、王国ではそういえばグリーンホースという魔獣に車を牽かせているのでしたね」
「そうそう、聖王国ではブラックカウに牽かせた牛車があったな」
「帝国で車を牽かせるの利用しているのはブラウンホース、王国のグリーンホースとは違って獣ですが、その分、力も弱いです」
「四人も乗って大丈夫なのか?」
「二頭立てなので大丈夫ですよ。兵士の方には周囲の警戒もあるので歩いてもらうことになりますけどね」
警戒……まあ、帝国は小国を保護、つまりは併呑して大きくなったって言ってたからな。
「マサトさん、警戒するってことは危険があるってことですか」
「マサト兄ちゃん、僕も外を歩いていこうか?」
「ああ、多分大丈夫だろ。料理を食べてない人間相手ならレイジは過剰戦力になりかねないしな」
帝国内では料理の技術は広めていないし、ウィリアムさんが単独で帝国にやってきたのなら料理の技術は伝えられていないだろう。
イーリスやロバート、ボブがいれば違ったかもしれないけど、ウィリアムさんは完全に食べる専門だったしな。
「さっきミレーヌが言ってただろ? 帝国は周囲の小国を保護することで大きくなったって」
「そうです。周囲の小国は魔王や魔獣の被害を恐れて、それまで最大規模だった帝国に庇護を求めました」
「保護されたのに帝国の兵士に襲い掛かる人がいるんですか?」
ミーナの言い分ももっともだ、普通の状況なら助けてもらったなら感謝するのが当たり前。
「国の上層部が居なくなった結果、庇護されたのなら国民は感謝しかないだろうけどな。……だけど、王族や貴族が残ってたなら話は別だろうな」
「そうです。有力者の娘を差し出した小国の中には、自国を守れるほどの力があれば取って代われると考えている国も少なくはないのです」
「帝国の一部になったのに上に逆らうってこと?」
「レイジの言いたいこともわかるよ。王国では……というよりもシェリルバイト家は王族に忠誠を誓って行動していたからね」
ジョシュアさんやランドールさんはいち早く料理の技術を取り入れることになって、王国でも屈指の戦闘力と豊富な食糧資源を手に入れていた。
だけど、シェリルバイト家の人が王家に反旗を翻すことはなかった。
「王国の貴族……それも国を興した時点で騎士として王族に付き従っていた二十家は特に忠誠心が強いですからね」
「帝国に保護を求めた小国の王族はそうじゃない。自分たちの保身のために強国を頼っただけで、王としてのプライドは健在ってことだろうね」
「守ってもらったのに裏切るなんて信じられませんね」
ミーナの言うことは分かるんだけど、やっぱりきちんとしていたシェリルバイト領の出身だから人の悪意とかがよくわからないんだろうな。
「あの村長とかジョシュアさんたちを見ていればその感想もわかるけど、多分、王国にもそういう考えの人はいたと思うぞ」
王宮で俺を襲ってきたあのよくわからない貴族とかな。
「そういうわけで、帝室が囲ってるということをアピールするためにもわたくしが貴方たちの迎えに来たというわけです」
「まあ、こっちとしても馬車を出してもらって、助かってるからね」
聖王国は結局徒歩でまわったけど結構時間食ったからな。
聖王国は平原だったから徒歩でもそれほど辛くはなかったけど、帝国は見ただけでも山が多いのがわかる。
王国ほどには森はなさそうだけど、村や町をまわりながら行動するとなるとかなり回り道することになるだろうな。
「そういえば皇帝陛下に会うってことは向かう先は帝都なんだろ? どのくらいかかるんだ?」
「馬車を使って三日ほどですね。……それで、お願いなのですが……道中、兵士たちにマサト様の料理を振舞ってはいただけませんか?」
料理か……確かに兵士に振舞うっていうのは料理の技術を広めるためには楽な手段ではあるんだよな。
「それは無理ですよ」
俺が断ろうと思った矢先にミーナが断ってしまった。
「それはどういう?」
「ああ、手持ちの食料が少ないんですよ。兵士の方はざっと見た感じでも三十人以上はいるでしょう?」
「偵察に出ているものも合わせれば五十人です」
「こっちは三人で旅してきましたからね。手持ちの食料も三人が十分に食べられる量はあるんですけど、流石に五十人分を三日は無理ってことですよ」
「では、大丈夫ですね。馬車はこれ以外にもう二台あって、そちらには食料を冷やしながら運んでいるんですよ」
なるほど、兵士に囲まれた馬車がまだあったことに位は気づいていたけど、あれには食料が積んであったのか。
てっきり重傷者とかが出た場合の看護用の馬車かと思ってたよ。
「では、兵士に中から何人かと、ミレーヌが手伝ってくれれば兵士に料理を振舞うことは可能だよ」
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