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5章 帝国
19 成功
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「……うん……味としてはちゃんと味噌と醤油になってるな」
「……ということは…………」
「ああ、原型としては完成と言っていいと思うよ」
「ヤ……ヤッター!!!」
帝国についてから早二年ほど……要約と言っていいほどに時間のかかった醤油と味噌づくりが一応完成した。
「といっても、食堂内の調味料と比べるとやっぱり完成度は低いからこれからも精進が必要だけどな」
「それはわかっていますよ、先生」
まともに麹菌が作れるようになって最初の味噌づくりだったが、ミレーヌの天職がレベルアップしていたこともあったので食べられる程度のクオリティはある。
結局、帝国には王国産の爆弾米や黒麦は気候に合わなかったのか根付くことはなく、帝国産の米と麦を育てることになったのだが、これが麹菌との相性が良かったらしい。
一応、日本酒の仕込みについてもレクチャーしてあるのだが、米が全く足りてない状態なので後回しになっている。
帝国の獣や魔獣は結構臭みがあるものもあるので、料理酒代わりになる日本酒は需要が高そうなんだよな。
「調味料もいいけど、リヒトさんが酒はまだかーって叫んでたよ?」
ああ、帝国にはブドウがあったからワインだけは先んじて作ってたんだが、リヒト含む上層部に結構な人気だったんだよな。
やっぱり責任がのしかかるような役職についている人間はなんだかんだでストレスが溜まってたのか、酒の高揚感が楽しいって……。
とはいえ、レイジにそれを言うのはどうなんだ?
「在庫にあるのは熟成用だって話してあるのに、なんでそんなに我慢が効かないんだか」
「王妃様からはブドウはタルトに使うようにって言われていますから、多分けん制しあってるんじゃないですか?」
「皇帝陛下と王妃殿下がすみません」
ミレーヌが謝ってくるけど、正直悪いのは皇帝夫婦であってミレーヌではないんだよな。
それに、プレッシャーをかけられているのは実際に酒造りをしているミレーヌと、デザートづくりをしている帝国の料理人たちだからな。
レイジは外に出て帝国軍と一緒に狩りにでているが、俺とミーナは食堂からほぼ出ず、帝都の人間に料理を教えたり、新しい食材で料理を作ったりしていたから、実際あんまり人に会ってないんだよな。
まあ、リヒトは食堂に簡単に来るからしょっちゅう会ってるっちゃ会ってるけど、王妃や皇子たちは他の帝室の人間が来る口実になるからあんまり食堂には来ないんだよな。
「まあ、食材に関してのそういうやり取りは本人たちにしてもらうしかないだろうな」
食料の備蓄や食材を何に使うかは国に住んでいる人たちが考えることで、この国に根付くわけでもない俺たちが口を出す問題じゃない。
まあ、食堂で出す分の食材は食堂裏の畑で育ててるから俺たちは結構好き勝手に食材を使えるっていうのも大きいけどな。
「王妃殿下には悪いですけど、わたくしとしてはなるべくワインにしたいところですけどね」
「ミレーヌも酒で意識をなくしたい年ごろになったか?」
「どんな年頃ですの? そうではなく、デザートは他の果物でもいいですけれど、ワインはブドウじゃなきゃ出来ないじゃないですか……それにワインビネガーも」
「まあ、一応、他の果物でも作れないってことはないんだぞ……糖分が低いとアルコール度数が低くなったり失敗しやすくなるってだけで」
リンゴから作るシードルとかは前の世界でもそこそこ有名だったしな。
とはいえ、この世界の果物でも同じように作れるかどうかの保証はないわけで。
「わかっていますけど、成功率が三割程度なのですよね」
「まあ手探りで長い時間かけてやってくしかないな」
発酵食品はどれもこれも作るのに時間がかかるから、試行錯誤の回数が少なくなるんだよな。
食材が豊富にあった前の世界ならともかく、この世界だと元からあった食材以外は育ててる最中だったりするし、肉にしても家畜化が進んでるわけじゃないから季節によって量が増減するんだよな。
「ご歓談中申し訳ありません、皇帝陛下から大事なお話があるとのことで一緒に来ていただけませんか?」
調味料の作成に成功した余韻に浸っていたわけだが、食堂の入り口から現れた第一皇子に呼びかけられた。
「リヒトが?」
「はい、マサト様たちに関して重要なお話があるとのことです」
正直、この話し方でかなりシリアスな話なのだと理解ができる。
だって、この第一皇子、いつも話してくる時はリヒト程とは言わなくても、結構砕けた調子で話しかけてくるからな。
「ふむ、じゃあついていこうかな」
「レイジ君とミーナ君も一緒に……ああ、ミレーヌも一緒についてきてくれるかい?」
「わたくしもですか?」
「ああ、ミレーヌも知ってい置いたほうがいいことだからね」
そんなわけで、食堂内にいた四人全員で第一皇子の案内についていくことになった。
「……ということは…………」
「ああ、原型としては完成と言っていいと思うよ」
「ヤ……ヤッター!!!」
帝国についてから早二年ほど……要約と言っていいほどに時間のかかった醤油と味噌づくりが一応完成した。
「といっても、食堂内の調味料と比べるとやっぱり完成度は低いからこれからも精進が必要だけどな」
「それはわかっていますよ、先生」
まともに麹菌が作れるようになって最初の味噌づくりだったが、ミレーヌの天職がレベルアップしていたこともあったので食べられる程度のクオリティはある。
結局、帝国には王国産の爆弾米や黒麦は気候に合わなかったのか根付くことはなく、帝国産の米と麦を育てることになったのだが、これが麹菌との相性が良かったらしい。
一応、日本酒の仕込みについてもレクチャーしてあるのだが、米が全く足りてない状態なので後回しになっている。
帝国の獣や魔獣は結構臭みがあるものもあるので、料理酒代わりになる日本酒は需要が高そうなんだよな。
「調味料もいいけど、リヒトさんが酒はまだかーって叫んでたよ?」
ああ、帝国にはブドウがあったからワインだけは先んじて作ってたんだが、リヒト含む上層部に結構な人気だったんだよな。
やっぱり責任がのしかかるような役職についている人間はなんだかんだでストレスが溜まってたのか、酒の高揚感が楽しいって……。
とはいえ、レイジにそれを言うのはどうなんだ?
「在庫にあるのは熟成用だって話してあるのに、なんでそんなに我慢が効かないんだか」
「王妃様からはブドウはタルトに使うようにって言われていますから、多分けん制しあってるんじゃないですか?」
「皇帝陛下と王妃殿下がすみません」
ミレーヌが謝ってくるけど、正直悪いのは皇帝夫婦であってミレーヌではないんだよな。
それに、プレッシャーをかけられているのは実際に酒造りをしているミレーヌと、デザートづくりをしている帝国の料理人たちだからな。
レイジは外に出て帝国軍と一緒に狩りにでているが、俺とミーナは食堂からほぼ出ず、帝都の人間に料理を教えたり、新しい食材で料理を作ったりしていたから、実際あんまり人に会ってないんだよな。
まあ、リヒトは食堂に簡単に来るからしょっちゅう会ってるっちゃ会ってるけど、王妃や皇子たちは他の帝室の人間が来る口実になるからあんまり食堂には来ないんだよな。
「まあ、食材に関してのそういうやり取りは本人たちにしてもらうしかないだろうな」
食料の備蓄や食材を何に使うかは国に住んでいる人たちが考えることで、この国に根付くわけでもない俺たちが口を出す問題じゃない。
まあ、食堂で出す分の食材は食堂裏の畑で育ててるから俺たちは結構好き勝手に食材を使えるっていうのも大きいけどな。
「王妃殿下には悪いですけど、わたくしとしてはなるべくワインにしたいところですけどね」
「ミレーヌも酒で意識をなくしたい年ごろになったか?」
「どんな年頃ですの? そうではなく、デザートは他の果物でもいいですけれど、ワインはブドウじゃなきゃ出来ないじゃないですか……それにワインビネガーも」
「まあ、一応、他の果物でも作れないってことはないんだぞ……糖分が低いとアルコール度数が低くなったり失敗しやすくなるってだけで」
リンゴから作るシードルとかは前の世界でもそこそこ有名だったしな。
とはいえ、この世界の果物でも同じように作れるかどうかの保証はないわけで。
「わかっていますけど、成功率が三割程度なのですよね」
「まあ手探りで長い時間かけてやってくしかないな」
発酵食品はどれもこれも作るのに時間がかかるから、試行錯誤の回数が少なくなるんだよな。
食材が豊富にあった前の世界ならともかく、この世界だと元からあった食材以外は育ててる最中だったりするし、肉にしても家畜化が進んでるわけじゃないから季節によって量が増減するんだよな。
「ご歓談中申し訳ありません、皇帝陛下から大事なお話があるとのことで一緒に来ていただけませんか?」
調味料の作成に成功した余韻に浸っていたわけだが、食堂の入り口から現れた第一皇子に呼びかけられた。
「リヒトが?」
「はい、マサト様たちに関して重要なお話があるとのことです」
正直、この話し方でかなりシリアスな話なのだと理解ができる。
だって、この第一皇子、いつも話してくる時はリヒト程とは言わなくても、結構砕けた調子で話しかけてくるからな。
「ふむ、じゃあついていこうかな」
「レイジ君とミーナ君も一緒に……ああ、ミレーヌも一緒についてきてくれるかい?」
「わたくしもですか?」
「ああ、ミレーヌも知ってい置いたほうがいいことだからね」
そんなわけで、食堂内にいた四人全員で第一皇子の案内についていくことになった。
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