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11 気持ちの通じ合う日
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「つい感情的になって、勝手に連れて行っちまったけど大丈夫か?」
元勇者と魔女が連れて行かれた後、一人残ったウィルがあたしに話しかけてきた。
「あの二人のこと? だって、連行するように王様に言われているんでしょ?」
「いやでも、サラの仲間だったんだろ? 未練とか……」
「ないわよ! 大体、自分たちでいらないって捨てておきながら、困ったら迎えに来ただなんて言う人に未練なんかあるわけないでしょ!」
ウィルの言うこともわからなくはないけど、あんな奴に未練があるだなんて屈辱以外の何物でもないわよ。
確かに元勇者はそこそこのイケメンで旅先でも多くの女性が寄ってきていたけれど、あたしにとっては鼻水垂らしながら泣きついてきていた子供の印象が抜けない。
成長した姿が見られたならともかく、困ったからってあたしに泣きつきに来る様子は、子供時代そのままで、なんのトキメキも抱かなかったのよね。
「……そうか、それは良かった。サラが元勇者について行ってしまったらと、気が気でなかったんだ」
「……貴重な薬草師だから?」
ずるい聞き方をしてしまった。魔国との戦争が始まってから、薬草師は希少になっていて、どの領でも喉から手が出るほどに欲しい人材となっている。
領主であるウィルからしたら、ようやく辺境に根付いてくれた薬草師を簡単に手放すわけにはいかないだろう。
「ち、違う! ……いや、その側面もないとは言い切れないが、俺がサラと離れたくなかったんだ!」
「あたしと?」
「ああ。……サラ、これは俺の本心だ。元勇者が現れたから、言うわけじゃない。俺はサラの傍にずっと居られたら良いと思っていたんだ」
「それって……」
ウィルの言葉に、あたしの胸はどんどん高まっていく。それって、どういうこと?
あたしが薬草師だから領にずっと居て欲しいってこと? それとも、あたし自身がウィルの傍に居て欲しいってこと?
……でも、そんな言葉は、簡単に口から出てはくれない。
「サラ、俺と結婚してほしい。サラがパトリックを……俺の弟を救ってくれた時から、どんどんサラのことが好きになっていっているんだ」
「……でも、あたしは貴族にはなれないわ」
ウィルの言葉はうれしい。でも、ウィルはあたしとは違って、貴族であり、領主でもある。
結婚という言葉に胸が高鳴る気持ちと、それでもウィルとは立場が違うと警鐘を鳴らす冷静な気持ちが同居する。
貴族の世界なんて、お話の中でしか知らないあたしだけど、それでも簡単な気持ちで飛び込んでいい世界じゃないってことはわかってる。
「そうか、サラが心配しているのは貴族のことか。だったら、安心してほしい。元々この領の領主はパトリックが継ぐものだ。俺が領主になっているのは、パトリックが怪我をしたことが原因だ」
「?」
「片腕を失った人間は領主にはふさわしくない、ましてや死の間際ならなおさらって意見で、俺が領主をやっていたが、そのパトリックはサラが治してくれた。だから、俺が領主を続ける意味はないんだ。だから、サラが望むなら俺はただの騎士に戻る」
「で、でも、それじゃ貴族じゃなくなっちゃうよ?」
貴族のことをろくに知らない、あたしでも知っている。もともとが貴族でも騎士になってしまえば、平民と同じ。
「領主になりたいなんて思ったことは一度もないから、これでいいんだよ。サラだって、俺の言葉使いや態度は領主らしくないって思うだろ?」
ウィルの言葉にうなずいていいものか悩む。確かにウィルの言動は領主らしくない……というか、貴族らしくないとは思っていたけれど、それを素直に指摘していいのかな?
「あたしのせいで貴族を辞めるの?」
「違う。サラの存在はそれだけ、俺の中で貴重だってことだ。地位や名誉を捨ててでも、手に入れる価値がある」
「あたしが薬草師だから?」
「サラがサラだからだ。薬草師であることもサラの一部だから否定はしないが、サラが例え薬草を作ることができなくなっても、一緒に居たいと思っている」
あたしの中にウィルの気持ちを受け入れられるだけの余裕がなくて、何度も薬草師だから? と聞いてしまうけれど、それでもウィルはあたしがあたしだから、好きだと言ってくれている。
それに対して、あたしはどう答えるべき? ……ううん、あたしはどう答えたいんだろう?
「……あたしは」
「うん、サラの素直な気持ちを聞かせて欲しい。サラは俺と一緒に居たい?」
「あたしは……うん、あたしもウィルと一緒に居たい」
初めて、あたしを大事に思ってくれた人。初めて、あたしを気遣ってくれた人。
こんなに一緒にいて、ドキドキするのは後にも先にもウィルだけだって感じている。
「……本当? 本当に本当?」
今度はウィルの方が疑問を重ねてくる番ね。ウィルの問いかけに対して、あたしはコクリと頷く。
すると、喜びの声を上げたウィルは、あたしを抱えてクルクルと回り始める。
こうして、あたしとウィルはお互いの気持ちを通じ合わせて、一緒にいることになった。
勇者パーティーから追放された、あたしだったけれど、今から考えれば、それでよかったのかもしれない。
だって、こんなに素敵なウィルと一緒にいることができることになったのだから。
元勇者と魔女が連れて行かれた後、一人残ったウィルがあたしに話しかけてきた。
「あの二人のこと? だって、連行するように王様に言われているんでしょ?」
「いやでも、サラの仲間だったんだろ? 未練とか……」
「ないわよ! 大体、自分たちでいらないって捨てておきながら、困ったら迎えに来ただなんて言う人に未練なんかあるわけないでしょ!」
ウィルの言うこともわからなくはないけど、あんな奴に未練があるだなんて屈辱以外の何物でもないわよ。
確かに元勇者はそこそこのイケメンで旅先でも多くの女性が寄ってきていたけれど、あたしにとっては鼻水垂らしながら泣きついてきていた子供の印象が抜けない。
成長した姿が見られたならともかく、困ったからってあたしに泣きつきに来る様子は、子供時代そのままで、なんのトキメキも抱かなかったのよね。
「……そうか、それは良かった。サラが元勇者について行ってしまったらと、気が気でなかったんだ」
「……貴重な薬草師だから?」
ずるい聞き方をしてしまった。魔国との戦争が始まってから、薬草師は希少になっていて、どの領でも喉から手が出るほどに欲しい人材となっている。
領主であるウィルからしたら、ようやく辺境に根付いてくれた薬草師を簡単に手放すわけにはいかないだろう。
「ち、違う! ……いや、その側面もないとは言い切れないが、俺がサラと離れたくなかったんだ!」
「あたしと?」
「ああ。……サラ、これは俺の本心だ。元勇者が現れたから、言うわけじゃない。俺はサラの傍にずっと居られたら良いと思っていたんだ」
「それって……」
ウィルの言葉に、あたしの胸はどんどん高まっていく。それって、どういうこと?
あたしが薬草師だから領にずっと居て欲しいってこと? それとも、あたし自身がウィルの傍に居て欲しいってこと?
……でも、そんな言葉は、簡単に口から出てはくれない。
「サラ、俺と結婚してほしい。サラがパトリックを……俺の弟を救ってくれた時から、どんどんサラのことが好きになっていっているんだ」
「……でも、あたしは貴族にはなれないわ」
ウィルの言葉はうれしい。でも、ウィルはあたしとは違って、貴族であり、領主でもある。
結婚という言葉に胸が高鳴る気持ちと、それでもウィルとは立場が違うと警鐘を鳴らす冷静な気持ちが同居する。
貴族の世界なんて、お話の中でしか知らないあたしだけど、それでも簡単な気持ちで飛び込んでいい世界じゃないってことはわかってる。
「そうか、サラが心配しているのは貴族のことか。だったら、安心してほしい。元々この領の領主はパトリックが継ぐものだ。俺が領主になっているのは、パトリックが怪我をしたことが原因だ」
「?」
「片腕を失った人間は領主にはふさわしくない、ましてや死の間際ならなおさらって意見で、俺が領主をやっていたが、そのパトリックはサラが治してくれた。だから、俺が領主を続ける意味はないんだ。だから、サラが望むなら俺はただの騎士に戻る」
「で、でも、それじゃ貴族じゃなくなっちゃうよ?」
貴族のことをろくに知らない、あたしでも知っている。もともとが貴族でも騎士になってしまえば、平民と同じ。
「領主になりたいなんて思ったことは一度もないから、これでいいんだよ。サラだって、俺の言葉使いや態度は領主らしくないって思うだろ?」
ウィルの言葉にうなずいていいものか悩む。確かにウィルの言動は領主らしくない……というか、貴族らしくないとは思っていたけれど、それを素直に指摘していいのかな?
「あたしのせいで貴族を辞めるの?」
「違う。サラの存在はそれだけ、俺の中で貴重だってことだ。地位や名誉を捨ててでも、手に入れる価値がある」
「あたしが薬草師だから?」
「サラがサラだからだ。薬草師であることもサラの一部だから否定はしないが、サラが例え薬草を作ることができなくなっても、一緒に居たいと思っている」
あたしの中にウィルの気持ちを受け入れられるだけの余裕がなくて、何度も薬草師だから? と聞いてしまうけれど、それでもウィルはあたしがあたしだから、好きだと言ってくれている。
それに対して、あたしはどう答えるべき? ……ううん、あたしはどう答えたいんだろう?
「……あたしは」
「うん、サラの素直な気持ちを聞かせて欲しい。サラは俺と一緒に居たい?」
「あたしは……うん、あたしもウィルと一緒に居たい」
初めて、あたしを大事に思ってくれた人。初めて、あたしを気遣ってくれた人。
こんなに一緒にいて、ドキドキするのは後にも先にもウィルだけだって感じている。
「……本当? 本当に本当?」
今度はウィルの方が疑問を重ねてくる番ね。ウィルの問いかけに対して、あたしはコクリと頷く。
すると、喜びの声を上げたウィルは、あたしを抱えてクルクルと回り始める。
こうして、あたしとウィルはお互いの気持ちを通じ合わせて、一緒にいることになった。
勇者パーティーから追放された、あたしだったけれど、今から考えれば、それでよかったのかもしれない。
だって、こんなに素敵なウィルと一緒にいることができることになったのだから。
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