異世界に転生したので錬金術師としてダラダラ過ごします

高坂ナツキ

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003 助けられる

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「納品に来たというのに、なにやら下品な笑い声が聞こえるわね」

 ギルドを訪ねたら、酔っ払いに投げ飛ばされて、さらに水までぶっかけられてしまった。
 酔っ払いに対する怒りや、好みに対する不幸を嘆く間もなく、呆然としていた僕の傍に、いつの間にやらウェーブのかかった金髪が特徴的な女性が立っていた。

「「「ぎゃははは……あ!?」」」

「少し聞こえたけれど、錬金術師をバカにするなんて、ずいぶん思いあがっているみたいね。悪いけれど、今回から納品は断らせてもらうわ」

「ちょっ!? エレオノーラさん、困りますよ!」

 バカ笑いをしていた酔っ払いたちは、女性の言葉を聞くなり気まずそうに黙り込み、カウンターの中にいたはずの男性が外にまで出てきて、女性に抗議を始める。

「だって、そうでしょう? 私と同業の錬金術師をバカにされたのだもの。バカにしている錬金術師の作ったポーションだっていらないってことでしょう?」

「い、いや……それは」

「ねえ、あなた。立てる?」

 酔っ払いやカウンターの男性に対して一歩も引かなかった女性だが、唐突に僕に話しかけてくる。

「あ、はい」

「あなた、錬金術師なんですってね。私もなの。良かったら、ウチのギルドに来ない?」

「けっ! ゴミがゴミを拾ってやがるぜ!」

「ポーション作るしか能がねえ癖によ! 誰が体張って魔獣と戦ってるのか、わかってねえんだよ!」

 女性の唐突なお誘いに戸惑っていると、酔っ払いたちが暴言を吐いてくる。

「ええ、あなたたちの考えはわかったわ。協会の方にも伝えておくから、安心してちょうだい。さ、あなた。立てるのなら、一緒に来てちょうだい。それとも、ココに残る?」

 背中の痛みも軽くなってきたし、ここで酔っ払いたちに更なる暴力を振るわれるのは、流石に勘弁願いたいところ。
 だからというわけでもないが、女性の後をついていくことにした。
 うーん、神様。異世界転生……成功してますか? 僕は今のところ、失敗だと思います。

「まったく、最後までうるさい人たちだったわね」

 ギルドの建物から去る際まで、酔っ払いたちは暴言を吐き続けていたが、女性はそのことを言っているのだろう。

「錬金術師って、そんなに蔑まれる職業なんですか?」

「そんなことないわ! あの人たちがおかしいだけ。錬金術師の作る魔導具やポーションは、どんな身分の人間でもなくてはならないものよ。普通に物事を考えられる人間なら、あんなバカなことは言わないわ」

 女性の言葉に心底ほっとした。これで言い淀むようなら、本当に異世界転生が失敗したと思ってしまうが、そうではなく、たまたま最初に出会った人達の考え方がおかしかったようだ。

「あ、ええと。とりあえず助けていただいて、ありがとうございました」

「いいのよ。同じ錬金術師だし、困っていたら見逃せないわ」

「あの人たちが言うにはダブルマイナー? らしいのですけど」

「ああ、そんなことまで言っていたのね」

「ダブルマイナーってなんなんですか?」

「バカらしい侮蔑用語よ。天職のどちらも、戦闘能力のない天職だった人をそう呼ぶ人がいるの」

 は~、なるほど。前の世界だったら、不良がオタクをバカにするようなものか? あるいは、パリピが陰キャをバカにするというか?

「でも、バカな話でしょ? 世の中の全員が全員、戦闘に向いてるわけがないし、街中で生きるのなら、戦闘向きの天職なんて必要ないもの」

「そうだったんですね」

「ところで、あなたは、どうしてあのギルドにいたわけ? 錬金術師なんでしょう?」

「ええと、じつは田舎から出てきたばかりで、事前に親しい人にギルドへ行けと言われていたので、近場にあった、あそこに」

「ふむふむ、なるほどね~」

 この説明でわかったのか? 正直な話、自分で話していてもうさん臭さが抜群だ。
 とはいえ、神様だの異世界転生だのと話しても信じてもらえるわけもないなぁ。

「その恰好もそうですし、その言い訳。あなた、稀人さまでしょう?」

「……? まれびと?」

「ええと、あなたたちの言葉だと、異世界からやってきた人のこと。この世界では稀人と呼ぶの」

「…………!?」

「ああ、警戒しなくてもいいわよ。稀人さまは、不定期にこの世界を訪れているの。だから、偏見もないわ」

 はっ!? え? 僕以外にも異世界転生者が? ……って、そういえば、神様も他にも転生させてるみたいな話はしてたな。
 まさか、同じ世界に送り込んでいるとは思わなかったけど。

「ええと、他にも僕と同じ境遇の人がいるってことですか?」

「いいえ。稀人さまは同時期に2人以上は現れない。だけどね、この世界は稀人さまたちの尽力で発展してきたの。だから、歓迎するわ」

 あ~、なるほど。確かに露店の商品を見ていても、明らかに前の世界に影響を受けているだろう食べ物があったり、商品があったりしたものだ。

「そんな簡単に信じていいんですか?」

 とはいえ、流石にこの女性は簡単に信じすぎだ。僕が悪人や詐欺師だったら、どうするつもりなのだろう?

「ふふ、伝承にあるのよ。稀人さまは、この世界と隔絶した衣服を着、常識を何も知らない。ここはね、帝都の中でも中心街なの。あなたが本当に田舎から出てきたばかりなら、4kmは離れた門の近くにいないとおかしいのよ」

「…………」

「それにね、どんな田舎からやってきても、冒険者ギルドの看板と錬金術師ギルドの看板を見間違える人はいないわ」

「……なるほど。参りました。稀人というのはわかりませんが、確かに僕はこの世界とは違う世界から、やってきました」

「うん、だから歓迎するわ」
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