異世界に転生したので錬金術師としてダラダラ過ごします

高坂ナツキ

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029 魔導具づくり

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「ようやく錬金術師のレベルが上がったわね」

 朝食の準備をしていると師匠がやってきて、そう告げた。

「本当ですか? 最近はポーションもそこまで作ってないですけど」

「確かにポーションの作成量は減っているけれど、その分スライムボールとかを作っていたでしょう?」

 師匠が言うには天職のレベルを上げるためには、天職で出来ることを続けるしかないらしい。
 出来ることの範囲はレベルによる制限がなく、ずっと鉄鉱石から鉄を作成してもいずれは高レベルになれるらしい。
 とはいえ、上位レベルで出来ることをやっていたほうが経験値の取得は多いらしく、スライムボールやリバーシを作るよりはポーションを作成し続けていたほうがレベルの上昇は早かったらしい。

「師匠、今度は何が出来るようになったんですか?」

「魔導具の重要な部品、魔石の作成よ。今日は、魔石についての講義を行うわ」

 魔石についての講義は面白かった。これまでは魔導具の核となる材料という程度の知識しかなかったが、知るたびに解像度が上がる。
 魔石は基本的に魔獣や魔物といった、前の世界には存在しなかった生き物に存在し、猟師や冒険者、騎士が討伐した際に討伐証明として持ち帰ってくるらしい。

「魔石の種類に関しては、新しく覚えた魔石鑑定で確認できるわ」

 今回のレベルアップで出来るようになったことは、魔石鑑定と魔石組込。
 魔石鑑定は文字通り魔石を鑑定するスキルで、魔石の大きさ・属性などが素材鑑定のように浮かび上がる。
 魔石組込は特定の物質に魔石を組み込むスキルで、魔導具を作成する際には必須のスキルとなっている。

「魔石鑑定」

 極小魔石・火属性、師匠が用意してくれた魔石を鑑定すると、大きさと属性がこのように表示された。

「極小魔石……コンロに使っているのは、これとは違う奴ですよね?」

「ええ、これは外で火をつける着火用の魔導具に使用する魔石よ。コンロ用の奴は中型魔石ね」

 着火用……つまりはライターみたいなものを作る用か。前の世界でも、この世界でもタバコを吸わない僕は知らなかったけれど、もしかしたら喫煙者は着火用の魔導具を常備しているのかもしれない。
 ちなみにコンロは火の魔石がむきだしになっているので、目の前の極小魔石が使われていないというのは一目瞭然だ。

「では、着火用の魔導具を作るのが仕事ですか?」

「あとは風の魔石を使った小型送風機、水の魔石を使った水瓶ね」

「魔導具って生活に染み込んでますよね」

 小型送風機も水瓶も裕福ではない平民が使うもので、市井に下りているとはいえ貴族の師匠が運営するギルドでは、どちらも使っていない。
 室温を調整する空調魔導具、それに蛇口をひねるだけで水が出てくる水栓魔導具が設置されているので、僕は実物を見たことがない。

「ちなみに作り方は、そこに教本があるわ。一応、簡単に説明すると筐体に魔力のあるインクで回路を書きこんで魔石を組み込むだけ。ただ、回路は魔導具ごとに異なる部分があるから、それを理解するのに時間がかかるわ」

 これこそが魔導具を作るのに時間がかかる理由らしい。これまでのように、単純にスキルを発動させれば完成品が出来ていたのとは違い、魔導具は構造を自分で考える必要がある。
 もちろん、世に出ている魔導具は構造が公開されているので、そのまま回路を引くだけで難しくないが、新しい魔導具を作ろうと思えば回路の意味を理解しなければならない。

「ふむ、一応目は通していますが、教本を頼りに試作してみます」

「うん。魔導具づくりはこれまでと違って才能が必要だから、出来なくても問題ないからね」

 師匠の言うように錬金術師は魔導具づくりが壁のようだ。錬金術師協会で働いているような錬金術師は、魔導具が作れないから協会所属になっていると聞いたことがある。
 つまりは、ポーション作成までは錬金術師見習い、誰かの下で働く錬金術師がする仕事で、魔導具を作れるようになって、ようやく一人前になるというわけだ。
 ま、僕は師匠の下から離れるつもりはないけれど、魔導具づくり自体は面白そうなので、レベルが上がる前から勉強は始めていた。

「さて、まずは着火用の魔導具から作ってみるか」

 師匠が僕を残して自分の錬金室に引っ込んだのを確認して、魔導具づくりを開始する。
 着火用の魔導具は、魔導具づくりの中でも初歩の初歩だから、回路は頭に叩き込んであるけれど、それでも教本を片手に慎重に作っていく。
 材料は手で握れる程度の金属の塊、極小の火属性魔石、回路を書くための魔力インク、それにスイッチ用の無属性魔石だ。

 手元に設置した無属性魔石から、火元になる火属性魔石に向けて、発動のための回路や炎の大きさを制御するための回路を引いていく。
 うん、これは大変だ。
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