猫と私と犬の小説家

瀧川るいか

文字の大きさ
上 下
35 / 50

ママと猫と私

しおりを挟む
「え~~~分かった~~~」
「うん!うん!うん!」
「はい~はい~はい~」
「わかた~わかた~」
「じゃあ切るね~」
電話を切りスマホを黙らせた。
「もう!ママはうるさいなぁ~」  
たまに心配して電話をしてくる母親。可愛い私を溺愛している母親。それは当たり前だ。
こんな可愛い娘がいたら溺愛せざるを得ない。
しかし、心配し過ぎなところがたまにうっとおしい。

「ただいま~」
誰もいない部屋、何故か電気が着いてる。
よくよく考えてたら鍵開いてた。
「は?!」
見た事あるような靴が玄関に綺麗に揃っている。
扉の向こうから聞いた事あるような笑い声が聞こえる。
「ママ!何してんの?」
ソファーに横になりメーを抱っこしながらカロリーが高そうなお菓子を食べさせている母親がいた。
「君は少しつり目なんだねぇ~。じゃあ君がメーちゃんね~」
母親に頭をなでなでされて気持ちよさそうなメー。
チャチャはソファーの下でお腹を出して寝ている。
きっと最初にお腹いっぱい食べさられたのだろう。 
「あら~りむちゃ~ん。おかえり~」
「あら~りむちゃ~ん。おかえり~じゃなくて!何でいるの?意味わからないんだけど~」
「会いに来るのに意味なんていらないでしょ~。そうやってなんでも意味とか聞いちゃうのママ嫌いだよ~。りむちゃん可愛いから~変な男と一緒にいないかとかママ心配してたんだよ~」
「さっき電話で話してたじゃん?勝手に家いたの?」
「お家に遊びに来たんだけど、りむちゃんいないから電話したの~そしたら可愛い子達がいたんだけどねぇ。ママには全然心開いてくれないから~コンビニに行ってお菓子買ってきたのね。お菓子プレゼントしてあげたら仲良くなれたの~ママ凄いでしょ~」
「全然凄くないし~カロリーとか決めてるからダメ!甘いのに慣れると健康食とか食べなくなるから食べさせないで!」
「ママの事いじめないの~。りむちゃん小さい時お菓子食べると元気になってたじゃない?」
「人間と猫さんは違うの!」
「はーい」
「今日はなんか用?」
「顔見に来ただけ~。ダメ~?」
「それなら早め言ってよ~」
「なんで~だってママだよ~」
「この子達がビックリするじゃん!」
「うん!最初凄くビックリしてた~おメメまんまるにしてピタって動かないの~。チャチャちゃんは久しぶりだからママの事忘れてたかな~」
「メーは初めて会う人だから怖かったんだよ。チャチャも久しぶり過ぎて忘れたんじゃないかな~」
「でも~今は仲良しになれた~ママ凄いでしょ!」
「はいはい」
「はい!は一回でしょ!」
「はーい」
「伸ばさないの!」
「わかたから~」
「じゃあメーちゃん返すね~」
母親からメーを返して貰い、抱っこしながら母親の隣に座った。
「それでぇ?これからどうするの?」
「ママとお酒呑むの!」
「は?」
「たまにはりむちゃんとお酒呑みながら、ゆっくり過ごしたいじゃん」
「まぁ~いいけど~」
「りむちゃんの好きな日本酒持ってきたし~」
「あーうん。ありがとう」
「じゃあ~準備するね~」
「うん。メー!あっちでチャチャと遊んでなぁ~」
メーはチャチャの元に走っていった。
キャットタワーで仲良く遊び始めた。

「ホントに大きくなってね~。ママ嬉しいわよ~」
「あ~うんうん。そうだね~」
毎回の事ながら私の母親は酔うと同じ話をする。
「ほら~また今度旅行行こ~」
「あ~行きたいね~」
「前は~りむちゃん具合悪くなっちゃってね~ママはホントに心配したんだから~。最近は調子はどう?」
「最近はまぁまぁ~かなぁ」
「そう?なら良いんだけど~」
「ママは最近どんなぁ~」
「元気!元気!」
「だよねぇ~」
「りむちゃ~ん」
そして名前を呼びながら抱きついてくる。
「可愛いねぇ~」
「うん。知ってる知ってる」
「ママの子だからね~」
「うんうん」
そして頭をポンポンと優しく叩いてくる。
「最近は音楽聴いてる?」
「聴いてる聴いてる」
「ママは音楽好きだったからお腹いる時にママの好きな音楽沢山聴いてたもんね~」
「あ~。記憶にないけど~」
「りむちゃんが小さい小さい時、一緒にライブ行ったじゃん!お馬さんに乗って出て来てカッコよかったよね~」
「うん!カッコよかった~アレはね~今でも覚えてる~楽しかったよね~人類で好きなのはあの方だけだなぁ~」
「ママも~未だファンだもん~。また行きたいね~」
「行きたいね~」

二時間後。

「りむちゃ~ん」
「ん~なに~?」
「渡り鳥は迷わないんだよ~」
「また~?」
「渡り鳥は目が見えなくても耳が聞こえなくても帰る場所は分かるんだって~。前テレビで見たの~」
「へぇー。すごいね~。なんで?」
「ね~凄いよね。ママもわからない~。動物の本能とか?運命とか?科学的にも分からないみたいだけど。渡り鳥は迷う事なく自分の行く場所に辿り着けるんだって」
「なにそれ~すごい。なんか聞いた事ある話~」
「きっと、りむちゃんもそうだよ~」
「なんだかよくわからないけど。わかった~」
「色んな事があると思うけど~ママはママだからね~」
「ママはママでしょ~」
「そうそう~ママはママだよ~」
「はいはい~」
「………」
「ママ~」
「………」
母親が寝ている。
いつもの事だ。
突然会いに来て、お酒を飲んで、おしゃべりして寝る。
「あーもう!しょうがないなぁー」
台所でコップを洗いながら考えていた。
「渡り鳥は迷わないかぁ~」
「感覚で自分のいるべき場所が分かるかぁ~」
ふと昔の事を思い出したら涙が溢れてきた。
「運命かぁ?あの子が私のとこに来たのも運命なのかなぁ」
洗い物を終え、母親が寝てるテーブルに行き、お気に入りの可愛いブランケットを肩に掛けた。
「おやすみ~ママ~」
「………」
「いつもありがとうね~」
「りむちゃ~ん~」
「ん?」
「………」
「寝言?」
「………」
「夢でも私を見るなんて、どんだけ好きなんだか」
「………」
「私のママだけあって可愛いもんだ~」
母親が眠っていると隣にチャチャとメーがシッポをピーンと立てて近づいて行った。
「おー!どした?」
寝ている母親の髪の毛をぺろぺろと舐め始めた。
「あらあら~」
そんな姿を見ていたら、気づいたら寝ていた。
そして起きたら母親はいなくなっていた。
テーブルの上に置き手紙があった。
「ふぁ~なぁにこれぇ~」

りむちゃんへ。久しぶりに顔見れてママ嬉しかったよ。相変わらず可愛い可愛いりむちゃんで安心安心。猫ちゃん達もママの事大好きみたいで嬉しい!!もっとりむちゃんといたいけど、ママお仕事あるから帰るね!起きたら世界で一番可愛いりむちゃんの寝顔見れて元気出ました。また遊びにくるね。またね!

手紙を読み終わると、少しウルっときたのはお腹を天井に向けて寝ているチャチャとメーには内緒にしておこうと思った。
「ママ」

「またね」

しおりを挟む

処理中です...