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ゼディー・ルーク攻略戦
しおりを挟む要塞都市ゼディー近郊では、魔王軍が待ち構えていた。
主力部隊は遠距離攻撃で敵の数を減らした後、前線がぶつかり合い、混戦状態になった。
ユキヒラは、敵の指揮官を数名屠った後、要塞の防御結界に侵入して、手はず通り、正門を開いた。
正門の制御室の前にオーガ、室内には魔人が待機していたが、難なく肉片に変え、要塞に突入してきた正規兵と合流するのを待っていた。
主力部隊は、防御結界が解除されるのを確認すると、要塞内部へと突撃を開始した。
ユキヒラは正規兵と合流すると、宮殿に向かった。
すると、突然、極大魔法の前兆が顕現した。
<水底……>
ユキヒラは回避行動をとった。
あたり一面が業火に包まれた。
<月影……不知火……水底>
ユキヒラは、強力な魔力の気配がする方へ飛び込み、長剣を一閃する。
手応えはあった。まず一人。
槍を掲げて飛び込んでくる影をかわす。
<蒼月……刹那>
そして、二人目を撃破する。
その後、敵の後衛を補足し、背後に周り両断する……三人目。
<明鏡止水!!>
最後に、飛びかかってきた剣士を二人まとめて首を落とした。
五人……それ以上は元勇者らしき気配は感じられなかった。
ユキヒラは、再び気配を消し、先を急いだ。
……
ルークへ向かう勇者部隊は相変わらず異様な雰囲気につつまれていた。
勇者ヨシオに対して一方的に暴言を浴びせ続ける勇者トモキ。
クスクスわらうトモキの取り巻き勇者達。
バカにかまっていられないと、ひたすら無視し続けるヨシオ。
うんざりしながら早く静かになって欲しいと傍観する他の勇者達。
幼稚な勇者達と距離を取り、冷酷な眼差しを向ける冒険者達。
聞こえないフリを続けて先頭を進むガラテイン。
その様子を遠くから見ていた正規兵達は訝しげにヒソヒソと何かを話していた。
女勇者ハルカは、帰りたくて仕方がなかった。
もし、ここにユキヒラがいたら、トモキを切り殺してくれるのだろうか? とふと考える。おそらく、ガラテインがそれを回避したいから、勇者と別行動になるように配慮したのだと納得した。圧倒的な死地はルーク攻略組なのに、ダントツに腕の立つユキヒラがいないのは不自然すぎる。もしかしたら、勇者部隊は見放されたのかもしれない。そんな憶測まで頭に浮かぶようになっていた。
……
ユキヒラは玉座の間の伏兵を始末した後、玉座の間が混戦になるのを見計って、突入した。ユキヒラはオーガを数体切り殺し、道を作った後、敵の首領の魔人の首を落とした。
そして戦線から離脱し、ストークス卿のもとへ急いだ。
ユキヒラは、ストークス卿のいる本陣へ通された。
「ユキヒラ殿。何事かね?」
「ゼディー内部の守りが薄すぎる。
敵は主力をルークに移したのかもしれない。
敵の精鋭はいなかった」
「確かに全体的に被害は予想より軽微のようだ……。
とはいえ、要塞都市を完全制圧するまでは主力部隊を動かせない。
要塞内外とも敵が分散していて殲滅には時間がかかりそうだ」
「ルークに増援部隊を送っては、どうだろう?」
「そうだな……せっかく送った精鋭部隊が足止めにすらならないと困る。
追加で、1000の正規兵を送り込もう。
君もいってくれるかね?」
「了解した。
俺はすぐに出立して、先に合流することにする」
「うむ。私は、増援部隊を早急に送り出すよう手配する」
ユキヒラは準備を整えると、馬を疾走させた。
……
要塞都市ルークの近郊には敵兵はいなかった。
冒険者達が結界内部に侵入すると、壁の上の守衛を無力化し、あっけなく正門を突破できた。
精鋭部隊は突入を開始した。
街の中も閑散として、拍子抜けするくらい順調だった。
予定通り、分散して、結界の制御装置がある各主要施設の制圧に向かおうとしたときだった。
勇者ヨシオが突然、落馬したのだ。
皆に緊張が走った。
遠距離攻撃を考慮して、結界を張り周囲の様子を伺った。
すると笑い声が聞こえた。
勇者トモキとその取り巻きだ。
どうやら、トモキがどさくさに紛れて、勇者ヨシオを馬から蹴落したらしい。
流石のガラテインも頭に来て怒鳴りつけようとした。
が、その瞬間、正門が閉じ、正門前の結界が復元した。
そして、街の建物から、たくさんの魔物が姿をあらわし、道を塞いでしまった。
すでに、正門の制御室は魔物に奪還されており、制御室付近は、より強力な魔物に守られていた。それは敵の精鋭部隊だった。
「正門の制御室を制圧しろ!」
ガラテインが叫びながら、敵の精鋭部隊に突撃して行った。
冒険者と正規兵達も続いた。
背後から極大魔法の前兆が顕現する。
勇者達は、とっさに防御結界を展開した。
巨大な爆発が巻き起こる。
逃げ遅れた正規兵達の体が霧散した。
煙が晴れると、元勇者達が10名、姿を現す。
勇者達は、踵を返し、元勇者達に対峙する。
女勇者ハルカは、嫌な予感がしていた。
元勇者が現れたということは、あの馬鹿がまたやらかすからだ。
「……」
ハルカは、やけに静かなトモキを見て絶句した。
苦しそうに青い顔をして口から血を吐いていた。
背後から、心臓にむかって剣で貫かれていたのだ。
剣の持ち主は、ヨシオだった。
元勇者と同じ冷たい笑みを浮かべてトモキの背後に立っていた。
ヨシオは内通者だったのだ。
作戦は筒抜けだったことになる。
ヨシオはトモキから剣を引き抜くと、隣にいた取り巻きの一人の首を切り落とした。
ようやくヨシオの異変に気づいた勇者達は、ヨシオを取り囲むように退いた。
しかし、元勇者の剣士たちも襲い掛かってくる。
勇者アツヤが、トモキの鎧の首根っこを掴んで、後衛に運んだ。
「まだ、息がある。蘇生できるかもしれない」
そう言うと、前衛に復帰していった。
そして、回復役の勇者モリヒロが、トモキに回復魔法をかけようとしたところを、冒険者のショーンに蹴り飛ばされた。
「貴重な魔力の無駄遣いしてんじゃねぇ!
これから消耗線がはじまるんだ。
ヒーラーなら頭使え。
てめーは、みんなの生命預かってんだ。
こいつを回復させてもこの戦場じゃ、クソの役にもたたねぇよ」
「だず……だずげで……」
トモキが助けを求める。
ショーンが冷たい目線をむけて、言葉を返す。
「この死地で、背後の殺気にすら気づけねぇ剣士に用はねえ。
お前なんかに背中を預けられるか。
これ以上足を引っ張るな。
俺が、今、楽にしてやる」
ショーンはそう言うと、トモキの喉元を切り裂いた。
トモキは痙攣を起こしたあと、静かになった。
「いいかガキども、ここは戦場だ。
生き延びたいなら、甘い考えは捨てろ。
誰も助けちゃくれねぇぞ。
みんな自分が生き延びるので精一杯だからな。
勇者気取ってるなら、ちゃんと仕事しろや」
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