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勇者召喚 v2.0
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パンデモニアの連合国は、これまで入手した異世界の情報を元に、質の高い人材を確保するため、〝学校〟という施設の〝教室〟という場所に狙いを定めて、〝教育者〟に統率されている若者の集団を確保する技術を開発した。
周囲からは反対の声も多数あったが、大幅に減ってしまった勇者を補うため、教育を前提とした新たな試みを強行したのだ。
異世界から転移した者は、元の世界に帰還できない。
それは、異世界が次元の低い下位世界だからだ。
ひとたび上位世界に転移して肉体が再構成されると、転移された魂そのものも上位存在として変性してしまうためである。勇者の異能は魂が変性する際にもたさられるギフトなのだ。上位存在は下位世界では規格外なため転移することができないのだ。
いうなれば、勇者召喚という名の〝誘拐〟なのである。
この世界で生きる術をもたない彼らは、現状を受け入れて、戦うことでしか、生計を立てることができなくなるのだ。その事実をオブラートに包みながら、勇者として崇め奉り、その気にさせて使役するのが、連合国のやり方でなのである。
……
女勇者ハルカは、要塞都市ユーフィリアにいた。
集団召喚された新勇者たちの教育係に任命されたのだ。
担当教科は魔術だ。
今は、クラス全員に対して魔法適性の評価を行っているところだ。
教師は、これからの生活に絶望して呆然としていたが、対照的に生徒達は、剣と魔法の世界に勇者として転移したことを都合よく解釈しているようで、大騒ぎしていた。
既に、新勇者達には、教師の言葉は届かない。
この世界の先輩のハルカの言葉の方がよっぽどよく届く。
連合国がイメージしていた教育者とは根本的に異質な存在なのだ。
教師というのは学校という組織の歯車だからだ。
組織の歯車としての権威のみで〝先生〟と呼ばれ、生徒を評価する権限を与えられていたに過ぎないからだ。学校という組織がなくなれば、仮初の師弟の関係など簡単に崩れ落ちてしまうのだ。外れた歯車では何も回せない。
人生相談するなら、この世界に詳しい人の方が、遥かにましな答えをくれるだろう。
ハルカは、魔法適性の結果をみて一喜一憂している若者を見ると、かつての自分を思い出した。
異能なんてない方がいい。
極大魔法なんて使えるようになったら最悪だ。
兵器として扱われるだけなのだ。
異能がなく連合国から見捨てられて、一介の冒険者や街の住民として人生の再スタートを切る方が、この世界では、よほど幸せになれるだろうと考えていた。
前線で魔物と戦うのなんてごめんだ。
ハルカは、心配そうに、新勇者達の様子を眺める。
勇者トモキみたいな奴がいたら困るからだ。
ぱっと見た感じでは、特別おかしな子はいないようなので安心した。
虐められている子もいなさそうだった。
ただ、落ち込んでいる子はそれなりにいた。
誘拐された事実を受け入れられない子達だろう。
ここにはもう、思い描いていた人生はない。
甘やかしてくれる家族もいないのだ。
……
ユキヒラは、セイゲン達と合流し、ゼディーの酒場にいた。
「サイゾウさんとセイゲンさんはともかく、ウズラとイナミは何しに来た?」
ユキヒラがいうと、イナミが返した。
「若さま、それ感じ悪いですぅー。
お側付きを放って勝手に旅に出ちゃう方が、おかしくないですか?」
「『出かけてくる』っていっただろ」
「それ、近所に行くときの挨拶ですよね?
バカなんですか?
私、頭領にめちゃめちゃ叱られたんですよ?
ほんと、バカなんですか?」
「めんどくせー」
「あー、いま、『めんどくせー』って言った!
サイゾウさん、聞きました?
『めんどくせー』ですよ?
ひどくないですか?
あと、ウズラ、なんで若さまの隣に座ってるのよ。
そこ私の席」
ウズラが言葉を返す
「イナミ、うるさい。めんどくせー」
そういうとウズラはユキヒラの腕に手を回して身を寄せた。
……
ユキヒラは、お茶を一口飲んだ後、口を開いた。
「魔界に渡った修羅を狩る。
パンデモニアに流れてきてる可能性が高いらしい」
セイゲンが返す。
「ほぅ、それで?」
「情報を集めてくれ。
修羅が魔人に手ほどきしているって噂もあるほどだ。
そのうち見つかるだろう」
サイゾウが口を開く。
「亜流ですか……禁忌に触れるとは。
本国にはなんと?」
「裏が取れ次第、サイゾウさんから報告してくれ」
「御意」
修羅とはイサナミの道を外れ、ただ強さのみを追求するイサナミ使いの脱落者だ。
イサナミの修練は長く険しい。
それ故に安易に強くなる道に手を染め、心すら病むものがいる、それが修羅なのだ。
特にイサナミの一刃流には修羅が多い。
一刃流の最終奥義、十六夜の先を極めるには、心の紅の刃を研ぎ澄まさねばならない。
その修練が他の2流派よりも厳しいのだ。
それ故に脱落者が多く、イサナミ本国から離れ、他国で修羅の道を歩むものが後を断たないのである。
一刃流を極めた家元には、修羅狩りの使命がある。修羅の心の紅の刃を再生不能な状態にまで折り、砕かねばならないのだ。さらに、修羅の弟子がいた場合は全て狩り取らねばならない。
イサナミは心の修練が中核にある。道を外れ、殺戮に特化した亜流は絶対に認めないのである。
周囲からは反対の声も多数あったが、大幅に減ってしまった勇者を補うため、教育を前提とした新たな試みを強行したのだ。
異世界から転移した者は、元の世界に帰還できない。
それは、異世界が次元の低い下位世界だからだ。
ひとたび上位世界に転移して肉体が再構成されると、転移された魂そのものも上位存在として変性してしまうためである。勇者の異能は魂が変性する際にもたさられるギフトなのだ。上位存在は下位世界では規格外なため転移することができないのだ。
いうなれば、勇者召喚という名の〝誘拐〟なのである。
この世界で生きる術をもたない彼らは、現状を受け入れて、戦うことでしか、生計を立てることができなくなるのだ。その事実をオブラートに包みながら、勇者として崇め奉り、その気にさせて使役するのが、連合国のやり方でなのである。
……
女勇者ハルカは、要塞都市ユーフィリアにいた。
集団召喚された新勇者たちの教育係に任命されたのだ。
担当教科は魔術だ。
今は、クラス全員に対して魔法適性の評価を行っているところだ。
教師は、これからの生活に絶望して呆然としていたが、対照的に生徒達は、剣と魔法の世界に勇者として転移したことを都合よく解釈しているようで、大騒ぎしていた。
既に、新勇者達には、教師の言葉は届かない。
この世界の先輩のハルカの言葉の方がよっぽどよく届く。
連合国がイメージしていた教育者とは根本的に異質な存在なのだ。
教師というのは学校という組織の歯車だからだ。
組織の歯車としての権威のみで〝先生〟と呼ばれ、生徒を評価する権限を与えられていたに過ぎないからだ。学校という組織がなくなれば、仮初の師弟の関係など簡単に崩れ落ちてしまうのだ。外れた歯車では何も回せない。
人生相談するなら、この世界に詳しい人の方が、遥かにましな答えをくれるだろう。
ハルカは、魔法適性の結果をみて一喜一憂している若者を見ると、かつての自分を思い出した。
異能なんてない方がいい。
極大魔法なんて使えるようになったら最悪だ。
兵器として扱われるだけなのだ。
異能がなく連合国から見捨てられて、一介の冒険者や街の住民として人生の再スタートを切る方が、この世界では、よほど幸せになれるだろうと考えていた。
前線で魔物と戦うのなんてごめんだ。
ハルカは、心配そうに、新勇者達の様子を眺める。
勇者トモキみたいな奴がいたら困るからだ。
ぱっと見た感じでは、特別おかしな子はいないようなので安心した。
虐められている子もいなさそうだった。
ただ、落ち込んでいる子はそれなりにいた。
誘拐された事実を受け入れられない子達だろう。
ここにはもう、思い描いていた人生はない。
甘やかしてくれる家族もいないのだ。
……
ユキヒラは、セイゲン達と合流し、ゼディーの酒場にいた。
「サイゾウさんとセイゲンさんはともかく、ウズラとイナミは何しに来た?」
ユキヒラがいうと、イナミが返した。
「若さま、それ感じ悪いですぅー。
お側付きを放って勝手に旅に出ちゃう方が、おかしくないですか?」
「『出かけてくる』っていっただろ」
「それ、近所に行くときの挨拶ですよね?
バカなんですか?
私、頭領にめちゃめちゃ叱られたんですよ?
ほんと、バカなんですか?」
「めんどくせー」
「あー、いま、『めんどくせー』って言った!
サイゾウさん、聞きました?
『めんどくせー』ですよ?
ひどくないですか?
あと、ウズラ、なんで若さまの隣に座ってるのよ。
そこ私の席」
ウズラが言葉を返す
「イナミ、うるさい。めんどくせー」
そういうとウズラはユキヒラの腕に手を回して身を寄せた。
……
ユキヒラは、お茶を一口飲んだ後、口を開いた。
「魔界に渡った修羅を狩る。
パンデモニアに流れてきてる可能性が高いらしい」
セイゲンが返す。
「ほぅ、それで?」
「情報を集めてくれ。
修羅が魔人に手ほどきしているって噂もあるほどだ。
そのうち見つかるだろう」
サイゾウが口を開く。
「亜流ですか……禁忌に触れるとは。
本国にはなんと?」
「裏が取れ次第、サイゾウさんから報告してくれ」
「御意」
修羅とはイサナミの道を外れ、ただ強さのみを追求するイサナミ使いの脱落者だ。
イサナミの修練は長く険しい。
それ故に安易に強くなる道に手を染め、心すら病むものがいる、それが修羅なのだ。
特にイサナミの一刃流には修羅が多い。
一刃流の最終奥義、十六夜の先を極めるには、心の紅の刃を研ぎ澄まさねばならない。
その修練が他の2流派よりも厳しいのだ。
それ故に脱落者が多く、イサナミ本国から離れ、他国で修羅の道を歩むものが後を断たないのである。
一刃流を極めた家元には、修羅狩りの使命がある。修羅の心の紅の刃を再生不能な状態にまで折り、砕かねばならないのだ。さらに、修羅の弟子がいた場合は全て狩り取らねばならない。
イサナミは心の修練が中核にある。道を外れ、殺戮に特化した亜流は絶対に認めないのである。
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