十六夜の先

キクイチ

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亜流

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 パンデモニア大陸の西部にある港町、要塞都市スキュラ。

 かつてのパンデモニア大陸の大国の一つ、シャルルビル公国は、この街の奪還作戦を進行していた。

 戦端が開かれると同時に、公国海軍の勇者部隊による海上からの極大魔法の一斉掃射により、魔王軍の軍艦が次々と轟沈していく。

 その隙に精鋭兵と冒険者による別働隊が、陸路から要塞内部に侵入し、街と港の主要施設の制圧に成功すると、主力部隊が上陸を開始、街と港を制圧した。

 この作戦には、ユキヒラとサイゾウも参加していた。

 二人は主要施設の制圧が終わると、精鋭部隊と共に宮殿へ向かった。

 宮殿は別の部隊が担当していたのだが、二人が到着したときには既に壊滅状態だった。

 この街の首領と近衛兵が異常な強さを誇っていたのだ。
 彼らは、漆黒の鎧とローブを纏い、顔には独特な仮面をつけていた。
 
 サイゾウが言う。
「あれが暗黒騎士です。やつらはイサナミの心得もあります」

 ユキヒラが返す。
「亜流か。それなりの修練は積んでる感じだな」

 そういうと、ユキヒラは気配を消して、暗黒騎士へ突撃した。

不知火しらぬい……>

 3名の近衛兵の胴が両断された。

 と、同時にサイゾウが、2名の近衛兵の首を落とす。

 残りは首領と3名の近衛兵。
 
 彼らはようやく異変に気づき、体制を整える。

 が、既にユキヒラの間合いの中だ。

落葉らくよう……>

 残りの近衛兵が肉片と化した。
  
 ユキヒラは首領に矛先を向ける。

 首領は剣を構える。
 イサナミの一刃ひとは使い特有の構えだ。

 ユキヒラも相手の技量を見定めるように剣を構える。

 一瞬の間。

蒼三日月あおみかづき!!>

 首領は剣もろとも、両断された。


一刃ひとは使いのくせにくれないのカケラもなかったな……」

 ユキヒラがつぶやいた。
 サイゾウが返す。

「所詮は亜流。しかし見覚えのある独特な型でした」

「ニカイドウかイチカワだな」

「魔界に流れたとなると、おそらくニカイドウかと」


……


 連合軍の前線基地、作戦本部。

 戦端が開かれる直前、6名の暗黒騎士が作戦本部に突入してきた。

 その場にいたセイゲン、ウズラ、イナミの3名は、ストークス卿を守りつつ、応戦していた。

 ストークス卿が叫ぶ。
「全軍に通達、魔王軍に突撃!」

 ようやく戦端が開かれた。

 ウズラが言う。
「こいつら水面みなも使いだ。
 イナミとお揃い、よかったね。
 水底みなそこまで使う、浅いけど」

 イナミが返す。
「亜流にしてはやるわね。浅いけど。
 あと、私と一緒にしないでくれる?」

 前線では、両軍による極大魔法の一斉掃射が始まっていた。

 セイゲン達は、暗黒騎士を、作戦本部の外へ誘導する。

 セイゲンが言う。
「俺たちの足止めが狙いか。
 ウズラ!」

 ウズラが返す。
「余裕」 
 ウズラが戦いながら片手でvサインをセイゲンにむけた。

 それから3名は、黙々と暗黒騎士の相手を続けていた。


 その数分後。
 魔王軍の前線には、次々と敵の中隊指揮官と元勇者の首を狩る影があった。

 セイゲンと、イナミだ。

 セイゲンが言う。
「イナミ、敵の本陣は任せた。
 俺はここで狩りを続ける」

 イナミが返す。
「20分でしょ?
 そろそろウズラに加勢した方が良いのでは?」
 
 セイゲンが言う。
「馬鹿、2時間だ。ウズラなら大丈夫だ。
 早く行け」

「……了解」
 イナミは、敵の本陣へ向かった。


 ……


 連合軍前線、後衛部隊。

 元教師・女勇者ノゾミは、呆然として戦場を眺めていた。
 近接戦闘が始まった直後は前線が拮抗していたが、急に味方の前線が進み始めたのだ。

「連合軍て強いのですね」
 ノゾミは、隣にいるハルカに話しかけた。
 
「あー、それ、イサナミの人が加勢したからだよ。
 敵の中隊長と元勇者を倒してくれてるの」

「イサナミですか……。確か遠くにある島国の強国ですよね。
 国内は平和そうで羨ましいなぁ。移住できたりしませんかね?」

「勇者は無理じゃないかな……とくに極大魔法使える子は。
 連合国が手放さないと思うよ」

「ですよね……」


 ……


 ウズラは、セイゲン達と同じ気配のデコイを駆使し、暗黒騎士6名を足止めしていた。

月影つきかげ……漁火いさりび……水嵐すいらん……漁火いさりび……蒼月そうげつ……水底みなそこ……青海波せいがいは……>

 ウズラは月影つきかげ使いだ。
 その変幻自在の戦法は、敵の撹乱かくらんに特化している。

 月影つきかげ流は、難解な流派であり、一刃ひとは流とは違った意味で、習得が困難な流派である。型があるようでなく、ないようである、まさに色即是空・空即是色の世界なのだ。


 小一時間ほど、戦っているとセイゲン達が合流してきた。

 イナミが言う。
「おまたせ!」

 背後から聞こえたイナミの声に、暗黒騎士達は一瞬、驚いたような反応をした。

 と、その隙をつくように、セイゲンが1名の暗黒騎士を肩から切り裂く。
蒼月そうげつ!!>

 さらにできた隙を、ウズラが、一名、仕留める。
不知火しらぬい!>

 イナミも追従する。
水嵐すいらん!>
 残った暗黒騎士達は、水底みなそこで回避を試みるも、イナミの水嵐すいらんの威力が強烈すぎて、凄まじい剣戟が轟き、吹き飛ばされた。

 手負いになった暗黒騎士達は、その場を離脱しようとする。

 イナミが追い討ちをかける。
明鏡止水めいきょうしすい!>
 
 イナミが1名をほふったのものの、残りの3名は離脱に成功して逃げて行った。

「追う?」
 ウズラが言った。

 セイゲンが返す。
「いあ、放っておいていい。
 亜流の裏は取れた。本国に報告だ。
 あれは、ニカイドウの筋だな」

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