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要塞都市カイン
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水面使いの能力は、魔術と同様、天性の資質によるところが大きい。
底を極めた水面使いは、集団戦において、猛威を振るう。
広範囲の水嵐の殲滅力は圧倒的だ。防御を無視し、肉体をミンチに変えてしまうのだ。
カインに到着すると、大勢の暗黒騎士が雪崩れ込んできた。
しかし、水面使いの家元とイナミは、尽く、水嵐で一掃した。彼女達の水嵐は深く、生半可な水底や防御結界では防ぎ切れないのだ。
トシヨシ、ムネミツ、ムネノリ、ムネヨシは、宮廷を目指した。
ユキヒラ、サクヤ、サイゾウ、セイゲン、ウズラは修練場へ向かった。
……
トシヨシ達が宮廷の広間に入ると、そこには、アッパー・オーダーの4人が並んで立っていた。
そして、第4席エニフ卿が矛先をムネヨシに向け、前に進む。
一対一の決闘をするつもりなのだろう。
続くように第3席イザール卿は、ムネノリを、第2席ギルタブ卿はムネミツに矛先を向けた。
残る第1席アンカア卿は、燃え盛る拳をトシヨシに向ける。
トシヨシは剣を抜き、矛先をアンカア卿へ向けた。
……
ユキヒラ達が、修練場に突入すると、複数の暗黒騎士達が突撃してきた。
サクヤ、サイゾウ、セイゲン、ウズラが応戦する。
ユキヒラは、奥へ進み、特別顧問アルファ=ケイニス卿と対峙した。
ユキヒラは言う。
「その気配、魔人じゃないな。イサナミの修羅か。
名前は聞かないぞ。
修羅に名など不要だからな」
「修羅……そういってイサナミは可能性を否定する。
修羅の道の先にこそ新たなイサナミが顕現する、そう思ったことはないのですか?
あなたほどの器が、イサナミの狭い世界に止まるなど、もったいない。
私は多くの道を見出しました。
あなたの死を持って、証明いたしましょう」
「聞き飽きたセリフだよ。
修羅は皆、似たようなセリフばかり言う。
しっかし、醜く歪んだ紅だな。
それで何を切るつもりなんだ?
お前の歪んだ人生を俺が粉々に砕いてやるよ」
二人は剣を抜き、構えた。
……
宮廷では、アンカア卿とトシヨシだけが激しく攻防していた。
ムネミツ達3人は、あっという間に敵の首をはねてしまっていたのだ。
ムネミツが言う。
「さすが第1席。ひとりだけ格が違うな。
イサナミを真似るのではなく、自らの技能として吸収しているのはアンカアだけだ」
ムネヨシが返す。
「くそー、いい紅を持っていやがる。
俺が戦いたかった。トシさんだけずるいな」
トシヨシが、攻める。
<飛燕!>
剣撃にアンカア卿が拳を叩き込む。
両者がぶつかり、凄まじい衝撃波が巻き起こる。
アンカア卿はさらに間合いを詰めて拳を叩き込む。
<不知火>
トシヨシが懐に飛び込み応戦する。
アンカア卿は、退き、地面に拳を叩きつけ、巨大な魔法陣を展開する。
極大魔法の前兆が顕現する。
トシヨシは気にせず飛び込み、斬りかかる。
<蒼三日月!……十六夜の先>
アンカア卿を中心にして大爆発が起こる。
アンカア卿が爆煙から離脱する、片腕を失っていた。
トシヨシはたたみ掛ける。
<不知火>
アンカア卿が残った片腕で弾く。
トシヨシはさらにたたみ掛ける。
<疾風迅雷……十六夜の先>
アンカア卿の腕が切り落とされ、さらに体の半分が消え去った。
トシヨシは剣を鞘に納め、言う。
「いい戦士だった。
体に纏《まと》った、紅には一点の曇りもなかった」
……
要塞都市カイン、修練場。
暗黒騎士は、アルファ=ケイニス卿一人になっていた。
「珍しい、ユキヒラさんが時間をかけて戦ってる……」
サクヤが言った。
サイゾウが返す。
「修羅狩りです。
何度も相手の紅を砕いているのですよ。
敢えて剣を折らずに紅のみを削り取るのです。
サクヤ殿は初めてですか?」
「はい。これが修羅狩りなのですね。
相手は生きた心地がしないでしょうね……」
セイゲンが返す。
「そりゃもう。文字通り、心が折れまくりますからね。
特に、若の修羅狩りは別格ですから。
生きた心地どころか、いっそ殺しれくれた方がいいくらいになりますよ。
俺の時も酷かった」
サクヤが返す。
「……セイゲンさんて、修羅上がりなのですか?」
セイゲンが返す。
「ええ。それで若の影になりました。
まだ、修羅道から帰還できるとこにいたので、運がよかっただけですけど。
あいつは、もう手遅れですが」
ウズラが口を開く。
「ちなみに私も修羅上がり。
一から鍛え直してもらった。
若さま最高。いぇーい」
ウズラはなぜかvサインをする。
サクヤが返す。
「サイゾウさんとイナミさんは……?」
ウズラが返す。
「二人は普通。大丈夫。道は踏み外していない」
ユキヒラがケイニス卿に言う。
「おい、だいぶまともな紅に戻ってきたな。
どうした、何か証明するとかいってたよな?」
ケイニス卿が返す。
「……くぅ、これほどまでとは。
しかし、まだだ。私はまだやれる!」
<宵待月!!>
ケイニス卿が斬りかかる。
ユキヒラが応戦する。
<新月>
ケイニス卿が、吹き飛ばされる。
ユキヒラが言う。
「立ち上がれ、剣をとれ、紅を灯せ!」
「まだだ、まだまだ!」
ケイニス卿が、剣を構える。
<不知火!!>
ケイニス卿が斬りかかる。
ユキヒラが応戦する。
<飛燕>
再び、ケイニス卿が、吹き飛ばされる。
そんなやりとりを何度も繰り返す。
そして、ユキヒラは言う。
「死にたくなったら、十六夜の先を見せてみろ。
楽にしてやる」
「……ふぅ……まいったな。私もここまでですか。
あなたは化物だ。なぜ狭いイサナミの道に止まるのです?
世界は広い、たくさんの英傑がいる。
新たなイサナミを再構築できるとはおもわないのですか?
あなたほどの方が……。
もったいない、もったいなさすぎる!」
「言いたいことはそれだけか?」
ケイニス卿が剣を構える。
<……十六夜の先!!!>
ユキヒラが応戦する。
<刹那……十六夜の先>
ケイニス卿の半身が肉片になる。
ユキヒラが歩み寄って話しかける。
「良い紅、もってるじゃないか。
お前は最期にイサナミに帰還した。
イサナミ使いとして死ねるんだ。
よかったな。
お前の求めるものは全て、イサナミにある。
イサナミは途上にはない。完成されているんだよ。
人としての成長すら網羅しているんだ。
なぜそこから出る必要がある?」
「私は……そうか、これが真の十六夜の先か。
昔の私が求めてやまなかった、底に到達できたのか。
ああ、なんと素晴らしい眺めだろう。
確かにこれなら何も必要はない。
到達しなければわからないと言われた意味が理解できた。
さらに、その先にもはるか広大な世界が広がっていたのか」
「イサナミの本質は、その先にある。
お前がみたのは出発地点だ。
よく頑張ったな」
ケイニス卿は静かに息を引き取った。
サイゾウがケイニス卿のマスクを外す。
そこには、満足そうな顔があった。
サイゾウが言う。
「トシミツです。ニカイドウの分家、ミドウ家の次男ですね。
若、最期の指南、鮮やかでした。
トシミツはイサナミに帰還して死を迎えることができました。
ミドウ家にはその旨、伝えておきます」
「ああ、そうしてくれ」
ユキヒラ達は、修練場を後にした。
底を極めた水面使いは、集団戦において、猛威を振るう。
広範囲の水嵐の殲滅力は圧倒的だ。防御を無視し、肉体をミンチに変えてしまうのだ。
カインに到着すると、大勢の暗黒騎士が雪崩れ込んできた。
しかし、水面使いの家元とイナミは、尽く、水嵐で一掃した。彼女達の水嵐は深く、生半可な水底や防御結界では防ぎ切れないのだ。
トシヨシ、ムネミツ、ムネノリ、ムネヨシは、宮廷を目指した。
ユキヒラ、サクヤ、サイゾウ、セイゲン、ウズラは修練場へ向かった。
……
トシヨシ達が宮廷の広間に入ると、そこには、アッパー・オーダーの4人が並んで立っていた。
そして、第4席エニフ卿が矛先をムネヨシに向け、前に進む。
一対一の決闘をするつもりなのだろう。
続くように第3席イザール卿は、ムネノリを、第2席ギルタブ卿はムネミツに矛先を向けた。
残る第1席アンカア卿は、燃え盛る拳をトシヨシに向ける。
トシヨシは剣を抜き、矛先をアンカア卿へ向けた。
……
ユキヒラ達が、修練場に突入すると、複数の暗黒騎士達が突撃してきた。
サクヤ、サイゾウ、セイゲン、ウズラが応戦する。
ユキヒラは、奥へ進み、特別顧問アルファ=ケイニス卿と対峙した。
ユキヒラは言う。
「その気配、魔人じゃないな。イサナミの修羅か。
名前は聞かないぞ。
修羅に名など不要だからな」
「修羅……そういってイサナミは可能性を否定する。
修羅の道の先にこそ新たなイサナミが顕現する、そう思ったことはないのですか?
あなたほどの器が、イサナミの狭い世界に止まるなど、もったいない。
私は多くの道を見出しました。
あなたの死を持って、証明いたしましょう」
「聞き飽きたセリフだよ。
修羅は皆、似たようなセリフばかり言う。
しっかし、醜く歪んだ紅だな。
それで何を切るつもりなんだ?
お前の歪んだ人生を俺が粉々に砕いてやるよ」
二人は剣を抜き、構えた。
……
宮廷では、アンカア卿とトシヨシだけが激しく攻防していた。
ムネミツ達3人は、あっという間に敵の首をはねてしまっていたのだ。
ムネミツが言う。
「さすが第1席。ひとりだけ格が違うな。
イサナミを真似るのではなく、自らの技能として吸収しているのはアンカアだけだ」
ムネヨシが返す。
「くそー、いい紅を持っていやがる。
俺が戦いたかった。トシさんだけずるいな」
トシヨシが、攻める。
<飛燕!>
剣撃にアンカア卿が拳を叩き込む。
両者がぶつかり、凄まじい衝撃波が巻き起こる。
アンカア卿はさらに間合いを詰めて拳を叩き込む。
<不知火>
トシヨシが懐に飛び込み応戦する。
アンカア卿は、退き、地面に拳を叩きつけ、巨大な魔法陣を展開する。
極大魔法の前兆が顕現する。
トシヨシは気にせず飛び込み、斬りかかる。
<蒼三日月!……十六夜の先>
アンカア卿を中心にして大爆発が起こる。
アンカア卿が爆煙から離脱する、片腕を失っていた。
トシヨシはたたみ掛ける。
<不知火>
アンカア卿が残った片腕で弾く。
トシヨシはさらにたたみ掛ける。
<疾風迅雷……十六夜の先>
アンカア卿の腕が切り落とされ、さらに体の半分が消え去った。
トシヨシは剣を鞘に納め、言う。
「いい戦士だった。
体に纏《まと》った、紅には一点の曇りもなかった」
……
要塞都市カイン、修練場。
暗黒騎士は、アルファ=ケイニス卿一人になっていた。
「珍しい、ユキヒラさんが時間をかけて戦ってる……」
サクヤが言った。
サイゾウが返す。
「修羅狩りです。
何度も相手の紅を砕いているのですよ。
敢えて剣を折らずに紅のみを削り取るのです。
サクヤ殿は初めてですか?」
「はい。これが修羅狩りなのですね。
相手は生きた心地がしないでしょうね……」
セイゲンが返す。
「そりゃもう。文字通り、心が折れまくりますからね。
特に、若の修羅狩りは別格ですから。
生きた心地どころか、いっそ殺しれくれた方がいいくらいになりますよ。
俺の時も酷かった」
サクヤが返す。
「……セイゲンさんて、修羅上がりなのですか?」
セイゲンが返す。
「ええ。それで若の影になりました。
まだ、修羅道から帰還できるとこにいたので、運がよかっただけですけど。
あいつは、もう手遅れですが」
ウズラが口を開く。
「ちなみに私も修羅上がり。
一から鍛え直してもらった。
若さま最高。いぇーい」
ウズラはなぜかvサインをする。
サクヤが返す。
「サイゾウさんとイナミさんは……?」
ウズラが返す。
「二人は普通。大丈夫。道は踏み外していない」
ユキヒラがケイニス卿に言う。
「おい、だいぶまともな紅に戻ってきたな。
どうした、何か証明するとかいってたよな?」
ケイニス卿が返す。
「……くぅ、これほどまでとは。
しかし、まだだ。私はまだやれる!」
<宵待月!!>
ケイニス卿が斬りかかる。
ユキヒラが応戦する。
<新月>
ケイニス卿が、吹き飛ばされる。
ユキヒラが言う。
「立ち上がれ、剣をとれ、紅を灯せ!」
「まだだ、まだまだ!」
ケイニス卿が、剣を構える。
<不知火!!>
ケイニス卿が斬りかかる。
ユキヒラが応戦する。
<飛燕>
再び、ケイニス卿が、吹き飛ばされる。
そんなやりとりを何度も繰り返す。
そして、ユキヒラは言う。
「死にたくなったら、十六夜の先を見せてみろ。
楽にしてやる」
「……ふぅ……まいったな。私もここまでですか。
あなたは化物だ。なぜ狭いイサナミの道に止まるのです?
世界は広い、たくさんの英傑がいる。
新たなイサナミを再構築できるとはおもわないのですか?
あなたほどの方が……。
もったいない、もったいなさすぎる!」
「言いたいことはそれだけか?」
ケイニス卿が剣を構える。
<……十六夜の先!!!>
ユキヒラが応戦する。
<刹那……十六夜の先>
ケイニス卿の半身が肉片になる。
ユキヒラが歩み寄って話しかける。
「良い紅、もってるじゃないか。
お前は最期にイサナミに帰還した。
イサナミ使いとして死ねるんだ。
よかったな。
お前の求めるものは全て、イサナミにある。
イサナミは途上にはない。完成されているんだよ。
人としての成長すら網羅しているんだ。
なぜそこから出る必要がある?」
「私は……そうか、これが真の十六夜の先か。
昔の私が求めてやまなかった、底に到達できたのか。
ああ、なんと素晴らしい眺めだろう。
確かにこれなら何も必要はない。
到達しなければわからないと言われた意味が理解できた。
さらに、その先にもはるか広大な世界が広がっていたのか」
「イサナミの本質は、その先にある。
お前がみたのは出発地点だ。
よく頑張ったな」
ケイニス卿は静かに息を引き取った。
サイゾウがケイニス卿のマスクを外す。
そこには、満足そうな顔があった。
サイゾウが言う。
「トシミツです。ニカイドウの分家、ミドウ家の次男ですね。
若、最期の指南、鮮やかでした。
トシミツはイサナミに帰還して死を迎えることができました。
ミドウ家にはその旨、伝えておきます」
「ああ、そうしてくれ」
ユキヒラ達は、修練場を後にした。
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