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ロンギヌスの牙
深淵の疾駆者
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────フラガ=ラ=ハ(人狼ガルダーガ種、ガルダーガ族、ヨトゥンヘイム筆頭神官)
死者の世界・闇の深淵に続いている唯一の連絡路へ入るには、ニダヴェリールの関所を通過しなければならない。
生命の根源世界が、厳重に隔離されているのと同様、ヘルヘイムは、大地の生命の秩序に関わる要所だからだ。
「ヨトゥンヘイムの神官、フラガ=ラ=ハだ。通行許可を頼む」
「え!? あぁ、またですかい。
えーっと、フラガの旦那の通関記録っと……。
しっかし、ここんところ、よく来られますなぁ……旦那、黄泉にいる方が長いんじゃですかい?
これじゃ、生きてるのか、死んでるのか、分からんですなぁ、はっはっは……。
そうだ、ここじゃ、なんだから、通行証ができるまで、中で一杯ひっかけて行きやせんか?
おいら、前から旦那に外界のこと教えて欲しかったんだよ」
いつものように、手すきの守衛達が集まってきて雑談に加わった。
「すまんが、急用なのだ! 急いでもらえると助かる!」
俺らしくもなく、つい声を荒げてしまっていた。
いつもは守衛たちと軽口を叩き合う間柄であるが、今の俺には余裕がなかった。
「おー怖っ! へいへーい、今作っておりますよー。しばしお待ちを!」
「あら、めずらしい、フラさんがテンパってるー」
「あらほんと、はじめてみた、凛々しい感じでなかなかいいんじゃない?」
「もー、全然、口説きにこないとおもったら、どーゆーことー?」
あろうことか、持ち場についていた守衛まで一斉に集まってきた。
普段、この関所を通る者はほとんどいないこともあり、図らずも馴染みとなってしまった俺が立ち寄るたびに、手すきの守衛が総出で出迎えてくれるのが通例となっていた。
俺としても、彼らを労ってやりたかったのだが、今日ばかりは、気がつくと気が急いてしまうのだ。
だが、今回は、いつもに比べ、酷く手際が悪く、度を超えて絡んできて、放っておくと関所の中に連れ込まれて宴が始まりそうな勢いだった。
そのせいで、すこしばかり苛立って……あぁ、そうか……。
俺は、ようやく気付いた。
そして、俺は、その場で、深呼吸をしながらかるく伸びをして、強張っていた体の緊張を解した。
苛立ちが治まってきたようだ。
「あ、いつもの、フラさんに戻ったぁー」
「やっぱ、こっちのがいいね」
「まったく、これから危険な黄泉路だってのに、そんな様子で飛び込んだら、すぐさま心が闇に飲まれちゃいますぜ、そんなに亡者になりたかったんですかい?」
守衛の役割には、通行人の黄泉路で安全を確保することも含まれていたのだ。
「ありがとう。気を使わせてすまなかったな」
「へい、おまち! 出来立てホヤホヤの通行証ですぜ! 冷めないうちに、グイーッと逝っちまってくださいな!」
「あぁ、逝ってくる!」
俺は、使い古されたいつもの通行証を受け取り、守衛たちの満面の笑みに送り出されながら、漆黒の黄泉路へと足を踏み入れた。
昔に比べると、カインの捜索は、格段に楽になった。
愛娘の住まう死者の世界・闇の深淵の一角に設けた自身の宮殿で、隠居状態にあるからだ。
「2人の娘の父親となって、多少は落ち着いてきた」と考えたいところだが、あの狂人の思考がそこまで単純なはずがない。その本質が虚無であるがゆえに、あらゆる矛盾が、矛盾なく内包されている、傍迷惑な世界龍なのだ。
至高の狂人は、至高の賢者でもありうる、当然、その逆もまた然りだ。
カインは、ああ見えて、高度な技術に精通している。
転移ゲートの開発で行き詰まった際、何度も厄介になった。
だが、何を考えているか掴めない性格のため、なかなか会話が成り立たず、欲しい情報を引き出すのは、かなりの苦行だった。
あの狂人と、まともに意思疎通できる者は、おそらく存在しないだろう。
一瞬、灼熱の根源世界の世界龍ドリアン=ルークを思い浮かべたが、彼は、またちょっと毛色がちがう感じだ。
最大の理解者と呼べるのは、世界龍が抱える事情を最も把握していると思われる、我が主エオリアン=ユーフィリアだろうが、彼女の場合、さまざまな状況証拠をもとにカインの意図を推測しているようなので、必要な情報が揃わない限り、彼の意図を読み解くことは不可能なようだ。
今回の任務は、まさにその状況証拠あつめだった。それも、極めて緊急の。
考えても見ろ、なぜ、隠居先がよりによってヘルヘイムなのか?
なにかを企むには、うってつけの場所じゃないか。
本来であれば、もう一人の愛娘、ロクリアン=ルシーニアのニダヴェリールに、宮殿を設けるべきなのだ。
たしかに、ロクリアン=ルシーニアの性格に問題があることは、俺も認める。
勝気で厳格、横暴でワガママ、細かいことにもうるさく、なぜか、俺とカインに対しては、異常なまでに厳しくあたる小姑のような性格だ。
普通に考えれば、温厚で柔和、寡黙でマイペースなリディアン=ルーテシアを選ぶのは当然だ。
俺自身、もし可能なら、我が主エオリアン=ユーフィリア付きの神官から、乗り換えたいと思うほど魅力的な娘だ。もれなく付いてくる近所のクソジジイさえいなければ、エオリアン=ユーフィリアに直訴していても不思議ではないくらいだ。
しかし、あのクソジジイには、普通や当然という概念は通用しない。
虚無に何を叫んでも無駄なように、カインに居心地という概念などあるはずがない。
いかなる場所にあっても、自身のありたいようにあり、やりたいようにやる、そんな奴だ。
常に何か裏があると疑ってかからなければ、足元をすくわれてしまうだろう。
そして、あのクソジジイは、明らかにそれを楽しんでいるのだ。
奴にとっての俺は、道化のようなものなのだろう。
エオリアン=ユーフィリアが、俺に、頻繁に黄泉渡りをさせているのは、カインの動向を探るためなのだ。
クソジジイめ。
目の前に、ぼんやりと、灯りが見えてきた。
湖の守人達が使う、休憩所だ。
ようやく一休みできる。
宮殿に着く前に、一眠りして気力を回復しておこう。
休憩所に到着し、通行証のインジケーターを確認すると、関所を出てから1週間ほど経過していた。
深度は、1日ほど前に7合目をすぎたといった感じだ。
いつもよりペースが早かった。
今回の任務で、予定を前倒しに進められるのは、ありがたい。
これも、守衛達の気遣いおかげだろう。
月の獣族は、他の人狼種に比べ、気さくで他者を思いやれる者が多い。
一体、彼らは誰の影響で、そうなったのだろうか?
俺には不思議でならない。
彼らの主ロークリアン=ルシーニアは、彼らから見習うべきことが、たくさんあると思う。
ここまでくれば、半日ほどで、カインの宮殿に到達できる。
本当に気を抜けないのは、宮殿についてからだ。
あそこでは何が起こっても不思議ではない。
最高のコンディションで臨まないと、足元をすくわれることになるだろう。
俺は、備え付けのシャワー室で体を清めた後、仮眠室に並べてある、まるで棺桶のような、蓋つきベッドに潜り込み、束の間の休息に浸った。
死者の世界・闇の深淵に続いている唯一の連絡路へ入るには、ニダヴェリールの関所を通過しなければならない。
生命の根源世界が、厳重に隔離されているのと同様、ヘルヘイムは、大地の生命の秩序に関わる要所だからだ。
「ヨトゥンヘイムの神官、フラガ=ラ=ハだ。通行許可を頼む」
「え!? あぁ、またですかい。
えーっと、フラガの旦那の通関記録っと……。
しっかし、ここんところ、よく来られますなぁ……旦那、黄泉にいる方が長いんじゃですかい?
これじゃ、生きてるのか、死んでるのか、分からんですなぁ、はっはっは……。
そうだ、ここじゃ、なんだから、通行証ができるまで、中で一杯ひっかけて行きやせんか?
おいら、前から旦那に外界のこと教えて欲しかったんだよ」
いつものように、手すきの守衛達が集まってきて雑談に加わった。
「すまんが、急用なのだ! 急いでもらえると助かる!」
俺らしくもなく、つい声を荒げてしまっていた。
いつもは守衛たちと軽口を叩き合う間柄であるが、今の俺には余裕がなかった。
「おー怖っ! へいへーい、今作っておりますよー。しばしお待ちを!」
「あら、めずらしい、フラさんがテンパってるー」
「あらほんと、はじめてみた、凛々しい感じでなかなかいいんじゃない?」
「もー、全然、口説きにこないとおもったら、どーゆーことー?」
あろうことか、持ち場についていた守衛まで一斉に集まってきた。
普段、この関所を通る者はほとんどいないこともあり、図らずも馴染みとなってしまった俺が立ち寄るたびに、手すきの守衛が総出で出迎えてくれるのが通例となっていた。
俺としても、彼らを労ってやりたかったのだが、今日ばかりは、気がつくと気が急いてしまうのだ。
だが、今回は、いつもに比べ、酷く手際が悪く、度を超えて絡んできて、放っておくと関所の中に連れ込まれて宴が始まりそうな勢いだった。
そのせいで、すこしばかり苛立って……あぁ、そうか……。
俺は、ようやく気付いた。
そして、俺は、その場で、深呼吸をしながらかるく伸びをして、強張っていた体の緊張を解した。
苛立ちが治まってきたようだ。
「あ、いつもの、フラさんに戻ったぁー」
「やっぱ、こっちのがいいね」
「まったく、これから危険な黄泉路だってのに、そんな様子で飛び込んだら、すぐさま心が闇に飲まれちゃいますぜ、そんなに亡者になりたかったんですかい?」
守衛の役割には、通行人の黄泉路で安全を確保することも含まれていたのだ。
「ありがとう。気を使わせてすまなかったな」
「へい、おまち! 出来立てホヤホヤの通行証ですぜ! 冷めないうちに、グイーッと逝っちまってくださいな!」
「あぁ、逝ってくる!」
俺は、使い古されたいつもの通行証を受け取り、守衛たちの満面の笑みに送り出されながら、漆黒の黄泉路へと足を踏み入れた。
昔に比べると、カインの捜索は、格段に楽になった。
愛娘の住まう死者の世界・闇の深淵の一角に設けた自身の宮殿で、隠居状態にあるからだ。
「2人の娘の父親となって、多少は落ち着いてきた」と考えたいところだが、あの狂人の思考がそこまで単純なはずがない。その本質が虚無であるがゆえに、あらゆる矛盾が、矛盾なく内包されている、傍迷惑な世界龍なのだ。
至高の狂人は、至高の賢者でもありうる、当然、その逆もまた然りだ。
カインは、ああ見えて、高度な技術に精通している。
転移ゲートの開発で行き詰まった際、何度も厄介になった。
だが、何を考えているか掴めない性格のため、なかなか会話が成り立たず、欲しい情報を引き出すのは、かなりの苦行だった。
あの狂人と、まともに意思疎通できる者は、おそらく存在しないだろう。
一瞬、灼熱の根源世界の世界龍ドリアン=ルークを思い浮かべたが、彼は、またちょっと毛色がちがう感じだ。
最大の理解者と呼べるのは、世界龍が抱える事情を最も把握していると思われる、我が主エオリアン=ユーフィリアだろうが、彼女の場合、さまざまな状況証拠をもとにカインの意図を推測しているようなので、必要な情報が揃わない限り、彼の意図を読み解くことは不可能なようだ。
今回の任務は、まさにその状況証拠あつめだった。それも、極めて緊急の。
考えても見ろ、なぜ、隠居先がよりによってヘルヘイムなのか?
なにかを企むには、うってつけの場所じゃないか。
本来であれば、もう一人の愛娘、ロクリアン=ルシーニアのニダヴェリールに、宮殿を設けるべきなのだ。
たしかに、ロクリアン=ルシーニアの性格に問題があることは、俺も認める。
勝気で厳格、横暴でワガママ、細かいことにもうるさく、なぜか、俺とカインに対しては、異常なまでに厳しくあたる小姑のような性格だ。
普通に考えれば、温厚で柔和、寡黙でマイペースなリディアン=ルーテシアを選ぶのは当然だ。
俺自身、もし可能なら、我が主エオリアン=ユーフィリア付きの神官から、乗り換えたいと思うほど魅力的な娘だ。もれなく付いてくる近所のクソジジイさえいなければ、エオリアン=ユーフィリアに直訴していても不思議ではないくらいだ。
しかし、あのクソジジイには、普通や当然という概念は通用しない。
虚無に何を叫んでも無駄なように、カインに居心地という概念などあるはずがない。
いかなる場所にあっても、自身のありたいようにあり、やりたいようにやる、そんな奴だ。
常に何か裏があると疑ってかからなければ、足元をすくわれてしまうだろう。
そして、あのクソジジイは、明らかにそれを楽しんでいるのだ。
奴にとっての俺は、道化のようなものなのだろう。
エオリアン=ユーフィリアが、俺に、頻繁に黄泉渡りをさせているのは、カインの動向を探るためなのだ。
クソジジイめ。
目の前に、ぼんやりと、灯りが見えてきた。
湖の守人達が使う、休憩所だ。
ようやく一休みできる。
宮殿に着く前に、一眠りして気力を回復しておこう。
休憩所に到着し、通行証のインジケーターを確認すると、関所を出てから1週間ほど経過していた。
深度は、1日ほど前に7合目をすぎたといった感じだ。
いつもよりペースが早かった。
今回の任務で、予定を前倒しに進められるのは、ありがたい。
これも、守衛達の気遣いおかげだろう。
月の獣族は、他の人狼種に比べ、気さくで他者を思いやれる者が多い。
一体、彼らは誰の影響で、そうなったのだろうか?
俺には不思議でならない。
彼らの主ロークリアン=ルシーニアは、彼らから見習うべきことが、たくさんあると思う。
ここまでくれば、半日ほどで、カインの宮殿に到達できる。
本当に気を抜けないのは、宮殿についてからだ。
あそこでは何が起こっても不思議ではない。
最高のコンディションで臨まないと、足元をすくわれることになるだろう。
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