ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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混沌の秩序

プロビデンス#6

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────ルナディア(人狼ルガルルーノ種、浄化の湖ウルザブルン守人もりと


 ゴロツキくんたちの頑張りと、港で合流した上級シャーマン達と一緒に念入りに獣車じゅうしゃに張った浄化の結界のおかげで、ここまで、脱落者が出ることもなく、なんとか進めている。
 心配していたヨトゥンヘイムの密航者討伐隊も、ククリさん達がうまく牽制してくれているようだ。
 島の住民にも祓魔法術に長けている方が少なからずおり、皆で協力して、悪霊だらけの道を切り拓いているといった感じだ。

 しかし、思ったより進捗しんちょくかんばしくない。
 悪霊の数が多すぎるのだ。
 日が沈む前にリエルくんたちと合流できないと、多くの脱落者を出してしまうことになるかもしれない。

「ミリアムちゃん、合流ポイントまでどれくらいかかると思う?」

「日没ギリギリってところじゃないかい? ちょっとまずいかもね……」

「だよね……、でも次の休憩ポイントを飛ばすわけには行かないし」
 
「うん、休憩抜いたら、途中で自滅だろうね。ほら、皆んな! 休憩ポイントの目の前だ! もう一踏ん張りだよ!歯ー食いしばりな!」
 
「どうにもならないことに悩んでも仕方ないか。いまはやれるだけのことに集中だね!」

「うん同感。ダーイン達の底力は、伊達じゃないから信じていいよ!」

「うん、ありがと」

「ほら! そこ! 悪霊が獣車じゅうしゃに取り付いてる!
 あーもー、射程外かよ! ダーイン! そっちから狙える?」 

「おう、任せとけ」
 
「ってなに、外してんのさ、道が悪いからって言い訳しないでよね!」

「うっせー、しねーよ! 次は外さねー! ……どうよ?」

「はいはい、お上手だこと。ほら、つぎきてるよ!」

「ったく、キリがねえなっ!」 


 私は指向性のある探索の法術式を前方に展開する。
 少し先に大物が3体いるようだ。

「ミリアムちゃん、大物を処理してくるから、あとお願いね」

「あいよ、まかせときな。気をつけなよ、ルナ姉さん」

「ありがと、いってくる」


 ……


 ようやく、休憩ポイントに到着した。少しだけ、遅れを取り戻せたようだ。
 私は、急いで上級シャーマン達と一緒に、祓魔法術使い達の回復に取り掛かった。島の住民達も自ら率先して彼らの手当てや、食料の配布などに協力してくれている。

「ミリアムちゃん、だいぶ疲れてるね。いろいろ、任せちゃってごめんね」

「こんなの、レイドに比べたら、へっちゃらだよ。レイドのときは休憩なんてとれないからね。それより、ルーノの姉さん達は皆んな、一度も休憩してないけど大丈夫なのかい?」

「うん、上級シャーマンは鍛えられてるから数日くらいなら無休でもだいじょうぶよ」

「そりゃ、すごいね、よっぽど厳しい訓練でもさせられてるのかい?」

「そう言うわけじゃないけど、皆んな転移ゲートがない時代に育った娘達だから、片道1週間以上かかる黄泉渡りに慣れてたっていうのもあるし、今の先生がとても教え方が上手でね、皆んな日々、自分が上達してゆくのが楽しくなっちゃって、気がついたら体力がついてたって感じなのよ」

「そりゃいい先生にめぐまれたんだね。うらやましいよ。アルビーノじゃ考えられないわ」

「だよね……」

「ん? なんか不満でもあるのかい?」

「……そう言うわけじゃないのよ。でも、すごーく、期待されてるんだけど、うまく期待に応えられないというか、綺麗で清潔なイメージがあったから、浄化の湖ウルザブルンのシャーマンをやってきたけど、実は醜いものと向き合わなきゃならないってわかってきて、自分は浄化の湖ウルザブルンのシャーマンには向いていないんじゃないかなーってちょっと思ってたりするのよ」

「ふーん、超天才肌のお嬢様ってイメージだったけど、姉さんにもそれなりに悩みがあるんだねー」

「なにそれ、天才じゃないし、お嬢様とは真逆の生活してるわよ」

「そうかい? 誰が見たって姉さんは、天才だよ。姉さんの浄化の法術初めて見たときは、みんな見惚れてたよ? ほかのルーノの姉さんには悪いけど、ルナ姉さんのは次元が違うもの。それで向いてないとかってのは、あたしらから見たら贅沢すぎだよ。よっぽどすごい法術使いに囲まれて育ったのかい? でなきゃ、普通は、自信過剰になっててもおかしくないくらいだよ。姉さんは、上ばっかり見て育ったのかもね」

「上か……私、三姉妹の真ん中なんだけど、姉は宮廷で世界龍オーヴァーロードの補佐官やってて、妹はルーノ史上でも稀に見る呪詛の大天才。父は、族長やってるし、病気で他界した母だって、姉の前任者だったから、家族でパッとしないの、私だけなのよね……」

「なにその一家。プレッシャー半端なさそうだね」

「……うん、半端ない」

「でも、やっぱり私らから見たら贅沢な悩みだよ。ダーイン見てごらんよ、あいつ、底辺のどん底にあっても悩みなんか一つもないのよ?」

「ああ、金の亡者くんか」

「それそれ! あいつは、その日の酒代稼げればどこだって面白おかしく生きて行けるやつなのさ。いい意味でも、悪い意味でも、軸がブレないんだよね、あいつはさ」

「そーね、ダーインくんてそんな感じよね」

「そのーなんだっけ? 醜いものってのがなんなのかわからないけど、そんなもの浄化したら、綺麗さっぱり消えちゃうんだろ? なら一瞬だけ嫌なもの見るの我慢すればさ、あとは、ほら、この真っ青な空みたいに、綺麗な世界が広がるってのが浄化ってやつなんじゃないの? あたし、バカだからよくわからないけど、姉さんは頭よすぎて考えすぎなんじゃない? そーゆーの、お肌によくないよ。姉さん美人なんだから気をつけなよ」

「……」

「どうしたのさ? ちょ、ちょっと、やめておくれよ、何泣いてんのさ?」

 なぜだかわからないけど、私は、涙が止まらなくなっていた。


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