ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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シャノニアン・エクスプロージョン

ALL iN THE SKY-BLUE AFTERNOON ...

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────アユミ(ヒューマノイド、アストレア近郊改造ヒューマノイド隔離区画、ブリューエル=アウス=レディット)


 男性区画の見学を終えアキラくんと合流し、案内係りの男性が、共同区画の面会場所まで案内してくれた。

 私と同様、異性だらけの女性区画を連れまわされていたのだろう、アキラくんはかなり照れた表情をしていた。私と合流した途端、彼はホッとした表情にかわった。女性区画は戦闘バカには刺激が強すぎたようだ。

 面会場所は、特別展望台の上層部にある談話室だった。個室になっており、周囲を気にせず落ち着いて話せるらしい。

 談話室の前に来て、案内係は扉を開けると、あとはユミカに任せることになっていると言って立ち去っていった。

 この部屋にユミカがいる。

 少し緊張した。

 気がついたらアキラくんの手を握っていた。
 
 深呼吸をして気持ちを整えたあと、彼の手を握ったまま、部屋へと入った。


「ひさしぶり、アユミ、アキラくん。
 かなり変わっちゃったけど、ユミカだよ。
 面会申請もらった時はうれしかった。本当に生きてあえてよかったよ」

 そこにいたのは展望台の最上階で幸せそうに天体観測を行なっていたあのカップルだった。

「呼ばれてないのにお邪魔しちゃってすみません。
 俺はキョウヤです。こちらの世界に転移された際、ユミカと一緒のグループになった妹づれの男子です。今は女性ですけどね……。同級生同士でゆっくりお話をした方がいいといったのですが、俺の話も聞いた方が参考になることもあるかもしれないからとユミカちゃんに言われたので、ついて来ちゃいました。
 お邪魔でしたら、席を外しますので遠慮せずにいってください」
 
「そんなことありません、女性側のお話も聞かせていただけるととても助かります」

 3人だけだと気まずい感じがしたので、キョウヤさんがいてくれると助かるのだ。

「じゃ、立ち話もなんだから座ろっか。そこの席に適当に座っちゃってね。
 とりあえず、お茶を用意しておいたけどリクエストがあったら言ってね?」

 ユミカは、男の子になっても明るく優しい昔のままだった。
 面影も残ってる、身長はアキラくんと同じくらいで、とても頼り甲斐がありそうな、かなりのイケメンだ。アキラくんと今のユミカが初対面だったらどちらか迷うくらいかっよくなってる。
 
「なんか、性別かわっても全然違和感ないのね。昔のユミカのままって感じ。
 いつも身長気にしてたから、背が伸びてよかったね。
 男子でも高い部類にはいるんじゃない?」

「あはは、そう言って貰えるとうれしいよ。
 身長はね、相転移前はかなり心配したけど、想像以上に背が高くてすごく嬉しかった。本当に景色が変わったよ? もうびっくり」

「ほんとにうれしそうね。危険な任務とかさせられなかったの?」

「大丈夫、男性は危険な仕事を振られるって言っても、フォーマルハウトは防御しかないから、古くなった外郭部の部品交換くらいしか危険な仕事ってないんだよ。
 あとは、いろんな出会いに恵まれたおかげで、不安な気持ちもみんなに支えてもらえたのが一番おおきいかな。
 案内係をしていた男性が僕の上司で、案内係をしていた女性はキョウヤの上司なんだけど、とてもいい人たちでね、仕事だけでなくプライベートも含めていつもいろいろな相談相手になってくれるんだ」

「そうだったんだ。すごく感じのいい人だった。私がいた部隊の上官達とは大違い。
 レグルスに行ってからずーっと、戦闘続きで生きるのが必死だったから、アストレアにきて始めて落ち着けた感じ」

「レグルスは過酷だったんだね。他の2名は亡くなったんだって?
 かわいそうに……」

「うん、住民区画にノスフェラトゥが侵入したことがあって、その時にね……」

「そっか……僕らだけこんな楽させてもらっちゃって、ごめんね」

「ユミカが謝ることじゃないよ。運が悪かっただけ。
 でも、ここは本当に住みやすそうだよね」

「うん、住みやすい。しかも日々進化してる。僕が保証する」

「性別変わるのって精神的に大きな負担とかかからなかったの?」

「んー、僕は男子になる立場だからかなり楽だったよ。
 アキラくんの前でいうのもあれだけど、重い生理痛から解放されたのは無上の喜びといっても過言ではなかった。
 それにね、脳や本能は予備の肉体に左右されるから、GID(性同一性障害)みたいに自分の体に違和感を覚えるってことはなかったね。
 予備の肉体生成では、GIDを回避するために性別の特徴が中間よりにならないように調整しているんだってさ。
 元の肉体にもどるとGIDの傾向を持つ人もいるみたいだけど、年に2日の我慢だから、元の肉体の性別をわざわざ変えようとする人はいないって聞いてる」

「女性が女性をやりたい場合は、対応策ってあるの?」

「今のところは難しいみたい。
 でも、シャノン学派の転生技術を応用すれば、遺伝子レベルで性別を変更できるかもっていう話はきいてるよ。
 実際、新種族への転生は、性別を選べるわけだしね」

「じゃぁ、女性として生活したいから男性ヒューマノイドに転生してから相転移して女性になることは将来的に可能になるってこと?」

「どうかな? シャノン学派次第ってところかな?
 シャノン学派はヒューマノイドを高次元生命体にする研究には興味はあるけど、改造することには興味ないみたいだからね。無色のホムンクルススターゲイザーって、興味がない分野には手を出さない種族らしいから難しいだろうね。
 転生技術がアストレアに接収されて、バベッジ学派に提供されれば実現の可能性はあるみたいだけど、無色のホムンクルススターゲイザーにとっては主要技術を取り上げられるのは死ぬのと一緒だって話だから、この先も平行線かも……」

「じゃぁ、ここで生活する場合は性別が変わるって覚悟する以外はないのかな?」

「そうだね。でも、僕が保証するけど、性別変わってもまったく気にならない。
 少なくとも女性から男性体への相転移はデメリットはほどんどない」

「逆はあるの?」

「うん、女性体は、普通の女性よりかなり繊細だから、体調が不安定になりやすいんだって。
 キョウヤちゃんも最初は体調が安定するまでかなり苦労していたよ。
 今はもう安定しているし、そういう体に慣れちゃたみたいだけどね」

「そっかー。キョウヤさん。出産とかできるんでしょ? 生理とか大丈夫なの?」

「……生理はさすがに、慣れないよ。辛い思いしてる。
 俺は平均より生理痛が重い傾向にあるみたいだから余計だね。
 出産の方は、子宮の試験運用期間が終わってないからまだ許可が下りない感じ」

 キョウヤさんは恥ずかしそうに答えた。

「出産? 出産ローテーションって廃止されたんじゃないの?」

「ううん、そうじゃなくて……その……」

 やけに、はずがしがってる。どうしたのかな?

「なに?」

「僕とキョウヤ、婚約してるんだ」

「えええ? 婚約? もう? はやすぎない?」

「うん。出産ローテーション制度があった時期にね。
 ツガイ申請しておかないと、毎回ランダムで相手が決められちゃうんだよ」

 ユミカがフォローする。

「ああ、そういうことね。確かにそれは早めに相手決めないと絶対嫌だわ」

「でしょ? それに、キョウヤちゃん、すごーくかわいいでしょ?
 もうね、最初からこの子を奥さんにするって決めてたんだ」

「あはは、ユミカらしいね。ほんと前向きよね。
 でも、たしかにキョウヤさん可愛いよね。いい奥さんもらったんだね。
 けど、子供は早すぎない?」

「まぁ、そうかも。上司の二人にも言われてる。
 出産ローテーション制度がなくなったから、
 ゆっくりでもいいかもね……」

「ユミカは、自分でこども産みたいとは思わないの?」

「あーそれね。相転移前は1回くらい自分で産みたいって思ってたんだけど。
 今は、女の子はいろいろたいへんだから、1年近くも女の子やるのは、
 僕には無理だって感じるようになっちゃった。
 産むのはキョウヤちゃんに任せることしてる。男子の特権だしね。
 でも、それくらい、自分の感覚に変化が出るね」

「そうなんだ。ユミカみてると性格は昔のままだから、
 本当に性別の感覚が変わるだけなんだね?
 それなら安心して男性になれるかもな」

「うん。僕が保証する。
 むしろ、女子をやめられて嬉しいくらいに感じるときがたまにある」

「まぁ、なんとなくその気持ちはわかるかも」

「でしょ?
 あ、そうだ、これが僕の部屋の通信モニターへの連絡方法。
 そちらの区画ともこの回線使えば通話できるってさ。
 知りたいことあったら、気軽に連絡してね。
 留守の時はメッセージのこしてくれれば、
 都合のいい時間帯にこっちから連絡する。
 もう時間だから、検閲区画まで送るね。
 でも、僕のキョウヤちゃんは、箱入り娘なのでここでお別れです」

「いろいろありがとね、あとで連絡するね。
 話せてうれしかった。とても参考になった」

「こちらこそ、話せてうれしかったよ、絶対に連絡ちょうだいね。
 では、こちらへ」



 私とアキラくんは、検閲区画までユミカに案内してもらい、そこで別れた。

 結局アキラくんは挨拶程度で、ほとんど話をしなかった。

 帰りの移送車両の中でも、何かを考え込んでいるようにずっと黙り込んでいた。

「アキラくん、今夜も展望台行こうよ。きっとユミカたちもいるよ」

「ああ、そうだね。でもあのカップルが、ユミカたちとは思わなかった」

「だよねー。でもあの二人、本当に仲が良さそうだったね」

「うん、上司が心配するのもわかる」

「だよね、ユミカが絶対先走りそうだものね」

「あはは、キョウヤさんも押しに弱そうだしな」

「うん、完全にユミカペース。あれはキョウヤさん大変だわ。
 ユミカに振り回されっぱなしだよきっと」

 久しぶりに、アキラくんと普通の会話ができた気がする。
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