ブルー・クレセンツ・ノート

キクイチ

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イサナミの書

刹那(せつな)#2

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────リエル(人狼ルガルアルビオン・ルーノ種、アストレア宮廷正室、アースバインダー、筆頭秘書官)


 今後の宮廷雑務の処理方法を再検討するため、ティファーニアの執務室に来ていた。

 私は、ククリさんの後押しのおかげで、アストレアがニダヴェリールに送り込んだ公認のスパイのような立ち位置にいるため、外交情勢だけでなく内政問題についても視野が広がってきた。

 最近は、内政についてティフォーニアの相談相手になる機会も増えて来たのがとてもうれしい。


「ティフォーニア、ここの内容はニダヴェリールに任せちゃダメでしょ。ロクシーさんにいろんな情報が筒抜けだよ?」

「これだけで、わかるの?」

「うん。こっちのいくつかの資料と比較してみてよ」

「この資料なに?」

「こっち資料もティフォーニアが雑務がめんどうがってニダヴェリールに丸投げしてる資料だよね?」

「そうだっけ? あー、ルフィリアが仕事が進まないからよこせっていってたやつだ」

「ほら、ルフィリアさんに付け込まれちゃってるでしょ?」

「でも、これ提供しないと、ほんとうに仕事進まないでしょ?」

「だから、アストレアでやるべき仕事は、ここの範囲ってニダヴェリールから指摘されてるの!」

「普通だったら、内情を把握するために知らんぷりしてよろこんで引き受けるよ?」

「ニダヴェリールって良心的よね?」

「でも任せすぎ。いくつかの外交取引で足元すくわれてるでしょ?
 気づいてる?」

「どれ?」

「これと、これと、これ、あとこれも。
 もっといい条件で取引できたよね?」

「あー……」

「しっかりしてよ。向こうだって外交カードがたくさんあるわけじゃないのだから、苦しい中でやりくりしてるの。
 外界にあまえすぎ。だから子供扱いしかされないの」

「リエル、はやくもどってきてよ。ここまで出来れば十分でしょ?」

「これ、氷山の一角だよ? まだ調整しないといけないことたくさんあるからね?」

「えー、そんなにひどかったの?」

「あたりまえでしょ? でなきゃ向こうから心配して言ってこないよ」

「ククリに感謝しなきゃだね。ククリほしいな。なんとかならない?」

「そんなこと言ってる状況? まず目の前の問題を解決しようよ」

「リエル怖いよ。やさしくしてよー」

「エリューデイルたちにバラすよ? この状況」

「……。ごめん、この話を進めちゃいましょう」

「よろしい」


 ……


 ひと段落ついたので、ティフォーニアにお茶を入れてあげた。

「ほんとごめん。私ひどいね。自分でも信じられない。ようやく気づいた」

「私もここまで酷いとは思ってなかったから気付けてよかった」

「ニダヴェリールからみて、うち、弱点だらけ?」

「資源の宝庫って感じでみてるとおもう。
 活かしきれていない人材を引き抜きたくて仕方がない感じかな」

「うち、そんなに人材いたの?」

「……。怒っていい?」

「ごめん。貸し出して返してもらうのじゃだめ?」

「ダメ。いつまでたっても育てる環境が整わないでしょ。
 ククリさんも立場がかなりかわったから、
 もう育成の面倒は見てくれないよ?」

「いまは誰が中心なの?」

「ルルル」

「まー、そうなるか」

「すでにその後任まで準備中。かなりのレベルまで育ってきてる」

「少し前までは、ルーノは人材不足っていわれてたのにね」

「ククリさんがくつがえしちゃったからね。放って置いても育つ環境が整備されちゃってる」

「ニダヴェリールの弱みってどこ?」

「研究開発分野かな。どうにもならないくらい遅れてる。ルフィリアさんとルナディアさんが頭を抱えてる」

「どうして無色のホムンクルススターゲイザーを欲しがらないの?」

「ロクシーさんが、無色のホムンクルススターゲイザーの資質を危険視してるからだよ。生と死の門は、生命の営みの最後の砦だから、迂闊うかつな人材は迎え入れられないっていってた」

「そっか、ニダヴェリールでパンデミックなんて発生したら手がつけられないよね……」

「だから、ククリさんはイサナミやイサナギの研究を急いでる。知的生命体の資質を底上げしたいからね。リシアさんが赤色のホムンルスサキュバリスの研究を最優先してるのもそれが理由でしょ?
 とにかく、今は、ティフォーニアは雑務で忙しすぎなんだと思う。これからは雑務は私にまかせて世界龍オーヴァーロードの仕事に専念できる環境を整備しよ?」

「ありがとー。さすが私のリエル。すごーく期待してるからね。早く帰って来てー」

「もー、いちいち抱きつかないの。お茶がこぼれちゃう」


 ……


 研修期間が終わり、ティフォーニア付きの秘書官として新しい生活が始まった。ほぼ一日中、ティフォーニアのお側付きとして行動をともにし、全ての雑務をこなしている。

 私の補佐をしてもらうため、アストレアのアラクネ種とハーピー種から、2名ずつ秘書官を徴用した。
 
 最初は、多忙を極めたが、ユキリンの指導で後任者の育成には慣れていたため、半月ほどで、ティフォーニアの補佐業務に集中できるようになった。

 ニダヴェリールの負担も大幅に低減したようで、ロクシーさんから礼を言われた。ティフォーニアの負担も激減し、忙殺されずに業務に集中できるようになったようだ。


「リエルがいつも一緒で、うれしくて仕方ないわ」

「私も嬉しいけど、仕事だよ。忘れないでね」

「最近気になってる問題はある?」
 
「たくさんあるから、重要度で分類して、端末に送るね」

「うん」

「ニダヴェリールから出向してる上級シャーマンが今月いっぱいで引き上げることになってる。でも、後任の指導者たちはいかにも量産型ってかんじで、ニダヴェリールほどの優秀さがないから、しばらくはいいけど、今後が不安かな。
 アストレアのアースバインダーたちにもっと積極的に関わってもらった方がいいかもしれないね。忙しいなら、忙しい理由を洗い出して、副官をつけて負荷を減らすとかしたほうがよいかも。
 アースバインダーたちは縄張り意識が強いから、そこを上手く利用すればもっと効率的になるとおもうよ。いくつか草案を考えて見たから、検討してみて」

「うん」

「あとは、ヴェルキエーレの立場もそろそろ考慮してあげて方がいいね。このままだと、みんな息が詰まっちゃう感じ。そんな雰囲気が漂い始めてるよ」

「うん」

「それから、アルデバドスを増やすために特区を整備した方がいいと思う。しばらくブリュンヒルデの手駒が減るけど、アルデバドスが絶滅するよりマシでしょ?
 エリューデイルの子孫も増やして、ティターノの血統を残す準備もすすめたほうがいいね」

「うん」

「うんうんて、ちゃんと聞いてる?」

「あたりまえでしょ! 今まで気づかなかったけど、私は、こういう人を待ち望んでいたのね。かなり感動してる」

「ようやく時間を作ってあげられるようになったのだから、本来の仕事に集中してね」

「そうね。はやく子作りしないとね」

「そっち?」

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